第27話 「あいくる椎名は俺が守る」の主語は、俺がであってあいくる椎名はではない、ハズ!
あいくる椎名は心配そうにして俺に身を寄せてきた。それでも俺は、俺の手でQRコードを読み取る機械、ピッと君2.1のピッとやるところに、チケットを近付けた。
「勇者くん……。」
「大丈夫! 俺が絶対に護るから!」
「それはそうだけど。大丈夫かしら、あのQRコード……。」
「えっ……。」
俺は思い出した。あいくる椎名の落書きのことを。そして、落書きがバレたら、俺はここを追い出されてしまう。そして、永遠に外の空間を彷徨わなくてはならない。そんなの、いやだよ! 俺は目を閉じて、あいくる椎名の右手を左手でギュッと握った。あいくる椎名が肩を寄せてきた。緊張するーっ!
ピッという音のあとに、落書きがバレなければ、テレビの画面みたいなものに文字が並ぶ。画面は、手続きカウンターのあちら側に向けられている。カホウはいつの間にかあちら側にいた。画面を食い入るように見るカホウとルチア。俺は、祈るしかなかった。ほどなく、ピッという音がした。一瞬、ほっとしたよ。でもまだだ。エラーが表示されたらおしまいだ。最初に言葉を発したのは、ルチアだった。
「名前と年齢、出ます。真坂野勇者、17歳」
「勇者って、名前だったの……。」
カホウは、おこだった。顔が怖い。騙した覚えはないのに……。そのあとも、次々と俺の能力があからさまになっていった。なんだか恥ずかしい。けど、これって大ニュースじゃん。落書きがバレなかった証拠。ルチアはしばらくの間、画面に表示された俺の能力を読み上げてくれた。
「愛称、まさかの。職業……万能型勇者!」
「なんだ! ちゃんと勇者様なんじゃないの! 良かったわーっ!」
カホウは俺の職業が勇者って出たんで、喜んでくれた。俺も嬉しい。結果的に、ATMへの誤入力が俺にヘンテコな愛称と最高の職業を提供してくれた。
「適性も出ます! ぜっ、全属性に高い適性の表示です!」
「凄ーい!」
カホウの喜びようったらないよ。これは、俺の能力なのに。適性というのは魔法の適性のことで、全部で17種類あるらしい。
「彼女いない歴、17年!」
「イコール年齢ってわけね!」
赤裸々だっ!
「ユニークスキル、あります。『名前の最後に者を添加できる』……。」
「なっ、なんの役に立つのかしら……。」
もう充分、役に立ったんだと思う。
「成長タイプ、ZZZ!」
「何かしら? Zだから持続型だろうけど……。」
そんなことまで分かるんだ。単純に凄い!
「能力値、出ます。先ずは潜在能力です。あはっ!」
「なっ……。」
えっ、何? ルチアもカホウも息を飲んだ。ああいうリアクションって、すごく良いかすごく悪いかのどちらかだろう。どっちなんだろう?
「次は顕在能力です。おやおやーっ……。」
「……。」
むっ、無言って何だよ! 怖いなぁ。俺は事実が知りたい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます