第25話 復讐編 『セイラと顔合わせ』
僕たちの前に現れた警察官を名乗る女性二人の警察電子証の情報が、脳に直接インプットされる。
これは確定で本物だ。
偽物では、この認証ができないようロックが掛かる。それは超A・I.のセキュリティによるものだからだ。
背の高い・・・180近くあるな、クールな表情の髪の色が金髪の、目の色が緑がかった女性のほうの人が、ケイト・ミール・イグアナフ。
階級は、捜査官か。うーん、何か格闘技やってそう・・・強そうだな。
で、もうひとりの女性が身長は170前後、柔らかい表情で何か温かみのある笑顔で答えてくれている。名前は、シンディ・アラビアータ。
階級は・・・おっと、捜査監視官か。こちらの女性の方が上司なのか。髪の色は黒、髪型はちょっとボサボサ感のある感じで、瞳は黒・・・あまり強そうには見えないが、一瞬だけ、目が赤く光った気がしたが・・・。
気のせいか・・・。ニコニコしてるな。
「えっと、はい、僕がイズウミですが、何か御用ですか?」
「えっと、私がアカリン・サンですけど。」
「あー、私は邪魔なのら?」
と、サーシャが言う。
「あ、いえ、ご友人もご一緒で構いません。」
「じゃ、中でお話しますか? レスラー道場『獅子の穴』へようこそ。お入りください。」
「ではお言葉に甘えます。」
そして、二人を接客室に案内して、僕はお茶を出す準備と、一応、ナオト兄さんに知らせようと、近くの門下生の人に確認したが、ナオト兄さんは今、でかけているそうだ。
じゃ、仕方ないから、僕は全員分のお茶を用意して、接客室に戻った。
二人の警察官は、まだ立ったままで、僕を待っていたようだ。
サーシャは気にせず、ちゃかり座っていたけど。アカリンもまだ立って待っていたようだ。
「ごめん、ごめん、座って待ってくれててよかったのに・・・。」
「いえ、構いません。」
「では、どうぞ、おかけください。」
サーシャの隣にアカリンが腰をかけ、その隣に僕が座った。
その正面に、二人のシンディ捜査監視官が座り、その背後にケイト捜査官が立ったまま姿勢をビシッとしている。
ま、いいか、二人が同時に座るのはまあ、ないんだろうな。
「単刀直入に申し上げます。あの捕まったサワ・チョマレヨという女ですが、十魔剣という犯罪組織の一員でした。」
「あ、それ、あの人が自分で言ってましたね。」
「そうですね。それは本人はそれはもう、自慢気に吐いてくれましたが、犯行動機、組織のメンバーなどすべて黙秘しています。」
「そうなんですね・・・。」
ちょっと、空気が一瞬、止まったような感じがした・・・。
「で、どうやってあの、サワを捕らえることができたんですか?」
にこやかな笑顔で、シンディ捜査監察官が聞いてきた。
「あ・・・いや、お話いた通り、なんか急にあの人が倒れたんですよ・・・。」
「はい、それは聞きましたが、ヤツが気になることを言ってるんですよ。
・・・私をよく倒せたもんだな、やつらめ・・・、とね。」
「へえ・・・それって、誰か周りに居たってことでしょうか?僕とアカリンは、ただ見てただけでしたから・・・。」
「なるほど・・・。たしかに、その可能性はありますね。サワは誰かを狙っていた様子でしたからね。」
「まあ、あのサワの狙いがひょっとしたら、あなた方であった可能性も捨てきれませんので、どうか身の回りにお気をつけください。」
「わかりました、ご忠告ありがとうございます。」
「では、我々はこれで。」
そう言って、シンディ捜査監察官が立ち上がり、ケイト捜査官が、礼をし、ドアから出て行った。
出口から、二人が去っていくのを見送りながら、彼らが僕たちの言ったことをそのまま信じているとは思えなかった気がしていた。
「さ、とりあえず、セイラのところに案内するよ。ふたりとも。」
通りを二人の警察官が歩いている。
「どう見ました?ケイト。」
「ふむ、何か隠してはいそうだったな。だが、あいつらの心理を見たが、潜在的に犯罪者ではないな。」
「そうだね。だけど、どうやら、狙われているのはあの子たち・・・で間違いなさそうではあったよ。」
「だな。おそらく以前の孤児院焼失事件と関連があるようだな。」
「そうだね~。十魔剣の他のやつらが動くことはおそらく間違いなさそうだ。」
「あいつらに監視の目をつけるか?」
「うん、そっちは東宮さんの班に任せますか。」
「了解だ。私達は、十魔剣の線を追おう。」
「だね。ま、ちょっと、あのヒョウリって子は可愛かったから、私が直接、監視対象にしたい気もするけどね・・・ふふ。」
「はぁ。。。また、シンディは顔のいいヤツに弱いんだから・・・もぉ。」
「だってぇ・・・。」
ところかわって、レスラー道場『獅子の穴』の応接室で僕たちは話をしていた。
「でも、さっきの警察官の人たち・・・あれ、絶対、ビヨンド能力者だね・・・。」
「え!?アカリン、やっぱ、そう思う?」
「そうなのらねー、特にあのニコニコ笑顔のほう・・・あれはヤバそうなのねー。」
「そう・・・だね。眼が一瞬、鋭くなったよ・・・。あれ、何か能力使ってたね。」
「たしかに・・・悪寒を感じたよ、あの瞬間。」
そう・・・だと僕も確かに感じた。だけど、何か、悪意は感じなかったな。
「私の能力、『蒼く眠る水の星』で、ちょっと情報を読んでみようとしたんだけど・・・
妨害されたのらねー。おそらく、後ろに立っていたクール美女さんのほうの能力だと思うのら。」
「へぇ、サーシャの能力名、『蒼く眠る水の星』って言うんだ?何か情報を読み取ることができるんだね!?すごいね・・・。」
「やだなー。ヒョ・・・ミギ・・・いや、ヒョウリ、君の能力、アカリンから聞いてるよ。それ、すごい潜在能力、秘めてると思うのねん。私よりもすごいよー。」
とか言いながら、サーシャが照れてる感じ・・・。褒められたから嬉しいんだろうなぁ・・・。
そう言いながら、僕はヒョウリの姿のまま、二人を『獅子の穴』の秘密の特訓場へ続く長い廊下へ向かった。
そして、その手前で、ナオト兄さんに成り切ってみせた。
一瞬、サーシャとアカリンの二人は驚きの表情を浮かべたが、僕の能力はもう説明していたので、改めて再確認したといった様子だった。
「これは、本当に見分けがつかないな。本人と変わりがない・・・。」
「そうなのら、かっこいいレスラーそのものらね。」
「まあ、この先のセキュリティ・ドアの鍵が、ナオト兄さん自身が鍵になってるんだ。だからね。」
「そうなんだね。セキュリティ万全だな。管理している超A・I.は『シルフ系』かな?」
「へぇ、よくわかったね、アカリン。」
「ああ、ウンディーネ系、サラマンダー系、ノーム系はその派閥じゃないと情報流出があるからな。エーテル系はその点はないが、信者でないと使えないからな。」
「なるほどね。」
シルフは僕を本人認証のため、そのDNA・指紋・声紋・脳波・虹彩などすべてスキャンし、その音声でこうアナウンスした。
「ナオト・デイト本人認証OK。キー確認。」
「人間ヒューマノイド・女性・名前 『アカリン・サン』 独身・職業・ジャーナリスト。特に異常なし。安全と判断いたしました。」
「人間ヒューマノイド・女性・名前 『サーシャ・チャ・五條』 独身・職業・女優。特に異常なし。安全と判断いたしました。」
そう音声ガイドされた後、その重い扉がゴゴゴゴゴゴゴゴっと音を立て、開いた。
僕と二人が入ると、また扉は閉ざされた。
「えっと、僕はちょっとこのままの姿で行くね・・・。なので、二人はセイラと話ししてみてくれ。」
「わかったよ。」
「なのら!」
億の居住スペースに向かうと、セイラが飛び出てきた。
「ナオト兄さん!あれ?そちらのお二方は?」
「うむ、セイラに紹介しておきたくてな。二人はセイラの味方になってくれる。」
「そうなのね。じゃ、私は、セイラ・マーズと言います。ナオト兄さんと同じ孤児院出身です。よろしくおねがいします。」
「私は、アカリン・サン。ヒョウリ君やミギト君とも友達だよ。アカリンって呼んでね。」
「私はサーシャ、サーシャ・チャ・五條なのら。私はヒョウリと同じ劇団仲間だよ。ミギトとももちろん友達だよ。サーシャって呼んでいいのら。」
「そうなんだ!ふたりともヒョウリ兄ちゃん、ミギト兄ちゃんと友達なんだね。じゃ、私ともお友達になってくれますか?」
「もちろんなのら!」 「もちろんよ!」
アカリンとサーシャの声がかぶった。
「ありがとうございます!私もセイラって呼んでください。」
「セイラちゃんって礼儀正しい子なのら。すごくかわいいのら。」
「ほんとに。セイラちゃん、賢いね。やばいわ。家に連れて帰りたいくらいかわいい!」
「や、やめてくださいよ。は、恥ずかしいです・・・。」
アカリンとサーシャがセイラを抱きしめ合い、頬ずり頬ずりしまくるから、セイラが照れてしまった。
ま、たしかに、セイラは可愛い女の子で、賢いし、魅力値はとんでもないけどな。こうやって隠れ住んでるから、あれなんだが、もし、芸能界とか注目されたら、
あっという間にスターになっちゃうくらいの可愛さだとは思う。これは、同じ孤児院だから贔屓目に見ているってわけじゃないよ・・・。
そこから、しばらく、二人はセイラと語らったり、ゲームしたり、思い思いに遊んだようだ。
僕も一緒に遊びたかったけど、今はナオト兄さんになりきっているため、訓練スペースで、ひたすら特訓を繰り返していた。
いや、ナオト兄さんの特訓、山の中で散々やったけど・・・、やはり、鬼だわ。これ。地獄でもまだ生ぬるいんじゃないか・・・。
こうして日も暮れ、夜も遅くなったので、セイラに別れを告げ、二人を伴い、セキュリティルームを後にした。
廊下の手前、セキュリティの一瞬の死角のところで、僕はミギトの姿に戻った。シルフ系にもこの早変わりでの謎はわからないはず。ここから先、表のセキュリティはウンディーネ系も兼ねているからな。
このジャパンエリアでじゃ、こういったシステムの隙間というものがどうしても存在してしまうらしい、それは、5大超A・I.達が一枚岩でなく覇権争いをしているところから来る。
その点をついて僕は変身するタイミングを見計らうテクニックをナオト兄さんから教えてもらった。
ナオト兄さんって本当すごい。
「ふたりとも、夜遅くなっちゃったから、送っていくよ。」
「ま、途中までね。」
「なんなら、ミギト、私の家に泊まりに来てもいいのらよ。」
「いやいや、サーシャ。それはいいよ。」
サーシャって本当よくわからないよな。
「へぇ・・・」
アカリンがなんだか意味深な表情を浮かべる。
「どうしたの?」
「んーん。なんでもないよ。」
そう言ってまた僕の方をとびきりの笑顔で微笑むアカリンの表情に、ドキッとさせられる僕だった。
その夜は、月明かりがきれいな夜だった・・・。
~続く~
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