第14話 復讐編 『二重生活の始まり』
あれから、2ヶ月・・・。
正義のプロレスラー・ライオンマスクの『悪人全員ぶっ飛ばす!真の正義は砕けない!』の全国興行が行われていた。
半年にも渡る超ロング興行で、北はホッカイドウ・エリアから、南はオキナワ・エリアまで全ジャパンエリア・47興行の長い興行。
そこに僕、伊豆海未擬斗(ミギト)も興行に同行していた。
僕はライオンマスクの全国興行に同行していたが、実はけっこう頻繁に、ネオトウキョウエリアに戻っている。
僕は、僕のビヨンド能力『トビウオニギタイ』を使って、幼馴染であったヒョウリに成り切って、俳優として主演をしていたからだ。
こちらは1年にも長きにわたる演劇公演で、『ライオン王子、ライオン王に俺はなる!』公演の主役に大抜擢され、そこから人気が出て、当初2ヶ月公演から長期公演になったんだ。
僕はヒョウリに成り切って、俳優王(俳優ランキングナンバー1)を目指している。
で、今、僕=ヒョウリの俳優ランキングは、283位になっている。
これは若手としては異例の上昇で、雑誌やテレビの取材も頻繁にくるほどになっていた。
まあ、ヒョウリがイケメンだってことも、もちろんあるけどね。
ミギトとしての僕としては少し複雑な気持ちだけどねw
さて、そんな中、僕は和流石建設の動向を調べていた。ヤツラは絶対に許せない・・・が、
ここであいつらを殺して僕が犯罪者になってしまったら、ヒョウリとの約束を果たせなくなる、それにキャサリン先生もシスターテレサも孤児院のみんなもそれは望まないだろう。
まぁ、それはナオト兄さんに言われたからなんだけどね。
僕としては、すぐにでもヤツラをギッタギタのメッタメタにしてやりたかったけど・・・。
本当に・・・。孤児院のみんなのことを考えると、今でも、ヤツラに対して殺意が芽生えて来てしまう・・・。
このどす黒い陰鬱な気持ちを晴らしてくれる存在が、ナオト兄さんと唯一生き残ったセイラの存在だった。
それがなければ、自分自身を地獄の業火に晒すことも厭わず、復讐に走ってしまっていたのに違いなかった。
セイラはナオト兄さんのところで一緒に暮らしている。
僕が訪ねていくと、ちょっとうれしそうな顔をして、すぐに口を尖らせて、決まってこう言う。
「もお!ミギト兄ちゃんはホントに私が見てないところで、ホント何やってるのかわかんないんだから・・・会いに来るの少なくない?」
なんだかんだ僕のことを心配してるのだろうけど・・・なぜか上から目線なんだよなぁ。
僕は決まってこう返す。
「いや、セイラは僕よりヒョウリに来てほしいんじゃない? ま、僕もできるだけ顔見せるけどね。」
「もお!そんなことないんだからね!知らない!私の気も知らないで!」
と、セイラはいつも怒ったフリをする・・・。
僕は素直に謝っておく。
「ごめん、ごめん。」
さてこの2ヶ月、僕はヒョウリに成り切って、ミギトの僕とヒョウリの僕で二重生活を続けていくたんだけど、そんな中、
着実に、ヒョウリの名声が上がっていった――。
理由としては、僕がビヨンド能力で、オリジナルそのものになりきることができるからであり、
僕=ヒョウリの演技が、まさに本物にしか見えないくらいのものだから、世間にその演技力を認められたからだった。
だが、順風満帆というわけではなかった・・・。
ヒョウリ・・・ま、僕なんだけど――はちょくちょく狙われたからだ。
例えば、ファンからの贈り物の中に毒入りのお菓子が含まれていたり、、、
舞台稽古からの帰り道に、通り魔に襲われそうになったり、、、
ま、人気が出てきたため、『チョーサ劇団』のエルヴィス団長が、ガードマンを要請し、ヒョウリの送り迎えはガードされていたため、
通り魔はすぐに取り押さえられ、警察に突き出されて、事なき得ていた。
これらの出来事について、僕は何らかの背後の悪意のようなものを感じてしまっていた。
なんとなく、そう感じていただけだったが、それは僕のチャクラ感知能力によって、ほぼほぼ確信に近かった。
そう・・・、ヒョウリは暗殺されかかっているのだ。おそらくは、ヤツラ、和流石建設の差し金に違いなかった。
やはり、あの孤児院襲撃がヤツラの仕業であることに間違いないと、僕は強く確信していた。
そう、僕は確信していたが、あのとき襲撃してきた悪魔『赤い貴公子ベリアル』が、和流石建設とつながりがあるという確たる証拠はなかったのだ。
ヤツ、ベリアルもそういった発言はしていなかった。
だが、あの日、和流石建設の和流石八千王が自ら訪れたこと、その直後の襲撃だったこと、そして、その後、孤児院のあった土地がヤツラの手に渡ったこと。
これらを総合して考えると、裏にヤツラがいることは間違いないと僕は強く思っていた。
そして、ミギトとしての僕は、演劇から身を引いた。ホントは役者を続けたかったが、もしかして、ヒョウリと共演・・・なんてことがあると困ってしまうからだ。
だって、僕たちは二人で一人なんだからな。
僕はナオト兄さんのレスラー道場『獅子の穴』で、世話係として働かせてもらっていた。
もちろん、修行もさせてもらいながら、レスラーたちの食事や、体調管理、興行のスケジュール等々、けっこうこき使われていた・・・。
ナオト兄さんには、感謝と尊敬の気持ちで一杯ではあったんだけど、ちょっと人使いが悪いよなぁ・・・。
まぁ、二重生活し、さらに忙しく働くことで悲しみから目をそむけることもできていたのも事実であったので、ナオト兄さんもそこを察して忙しくしくれていたのだと・・・思いたいw
それに、セイラも僕が近くにいることで、安心できるみたいだった。
まぁ、セイラはナオト兄さんとナオト兄さんの住む超豪華マンションに住んでいたので、僕が訪ねていかない限り、会うことはなかったのだけどね。
~続く~
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