第26話:グランザリウスのあれこれ
結局、残った5ポイントは次の機会に取っておくことにした。
重力制御や空間収納など、スキルポイントが高いスキルほど便利だということがわかったからだ。
ただし、しばらくはレベルアップの期待はできないとリリアーナに言われてしまったので、使う機会がいつになることやら。
森を出てからの三日間、俺はとても楽しくゼルジュラーダまで向かうことができた。
道中では本来の大きさである兎や豚も見つけたのだが、日本で見たことのある標準的な大きさだったので、やはりエルフの森が特別だったのだと改めて理解する。
そして、重力制御スキルがとても便利だと実感することもできた。
「その効果、私には効かないのかしら!」
リリアーナがそう口にするくらいだ。
しかし、重力制御スキルは俺にしか作用しないらしい。
スキルレベルが上がれば分からないが、今は関係のない話である。
それにしても、上級冒険者であるリリアーナは身体能力が高く、俺の何倍もの力と速さを兼ね備えていた。
ステータスを見せてもらったが、レベルも桁違いに高い。
……あと、チラリと見えた年齢は口にしない方がいいだろう。さすがはエルフと言ったところで、長命なのは本当のようだ。
グランザリウスについても教えてもらった。
俺はこの世界のことをグランザリウスと言うのかと思っていたのだが、どうやら国の名前がグランザリウスというらしい。
そして、グランザリウスを治めているのがヴィルシュタット17世という王様なんだとか。
「王様が暮らす王都、ヴィルシュタインはここからずーっと北に行った先にあるから、私も行ったことがないのよね」
「そんなに遠いのか?」
「まず確実に歩いては行けないわね。馬で何十日も掛けて行くところよ」
そんなところにまで足を運ぶ必要はないだろう。
いや、もしグランザリウスを救うとなればいつかは行く機会もあるだろうか。
……まあ、今は気にする必要はないか。まずは今日を生きるべし!
「そして、これがお金よ」
「俺の世界ではお金のことを円って読んでたんだけど、こっちでは何て言うんだ?」
「ポルとリラよ」
グランザリウスでは硬貨が1ポルから10ポル、100ポル、500ポル、1000ポルと高くなり、それ以上となるとポルからリラに変わる。
1リラが10000ポルと同等となり、硬貨は1リラ、10リラ、100リラ、500リラ、1000リラとなる。
冒険者の実入りは依頼によっても変わるのでなんとも言えないようだが、平均的な月の収入は20リラから30リラらしい。
1ポルを1円で計算すると、20リラだと20万円ということになる。
「うーん、可もなく不可もなく」
「どういうこと?」
「いや、こっちの話だ。ちなみに、リリアーナはどれくらい稼いでいるんだ?」
「ふっふーん! 上級冒険者ともなれば、その二倍も三倍も稼げちゃうんだからね!」
「マジかよ。それって、100リラくらい稼いでるってことか?」
「ご想像にお任せしまーす」
冒険者、夢がある職業だなぁ。
「でも、危険と隣り合わせの職業でもあるのよ? 今回みたいに魔族と戦うことも多いし、在中してる都市に危険が迫れば駆り出されるんだからね」
「拒否はできないの?」
「できないわ。もし召集を断れば、ギルドからそれなりのペナルティが課せられるのよ」
そのペナルティだが、ランクが下がってしまったり、ギルドカードを没収されて一定期間の活動休止、最悪の場合は資格剥奪なんてこともあるというから驚きだ。
「命を懸けるんだから、少しくらいは融通してくれてもいいのにな」
「冒険者は都市から都市へ移動するのがほとんどだもの。その全てを融通するなんてできないし、そもそもしない。融通するなら、都市に根差している住民が優先されるべきだもの」
優先されるべき、とリリアーナは言い切った。
ということは、グランザリウスでの冒険者は今の立場を受け入れているということだろう。
ならば転生者である俺があれこれ言う必要もなく、そういうものなのだと理解することにした。
「それと、冒険者になるならその仕組みも教えておくわね」
新人は当然ながら下級冒険者、ではなく新人冒険者として始まる。
そして、昇級に値する活躍をした時にギルドが査定を行い、認められたものがようやく下級冒険者となる。
「新人から下級には比較的楽に上がれるから安心しなさい。それに、アマカワは私とパーティを組むんだから、さらに楽勝よ!」
「だといいんだけどな。下級から昇級するのも似たようなものなのか?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるかな。そこは冒険者ギルドでちゃんとした説明を受けた方がいいかな」
ふむ、どうやら複雑らしい。
とりあえず、今必要な知識は得られた。
あとはゼルジュラーダの冒険者ギルドで登録をするだけだ。
魔法は使えないけど、なんとかなるだろう!
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