第25話:森の外の世界
――おぉ……おおぉ……おおぉっ!
「凄い、これが――異世界!」
森を向けた先で俺が見たのは、どこまでも続く大草原! そして、遠くの方に見えるは外壁が囲む大きな都市だ!
「あそこに見えるのがゼルジュラーダよ」
「おぉっ! あれがゼルジュラーダか!」
グランザリウスに来て初めての人が暮らす都市だ。
この世界の都市がどのような場所なのか、どういう文明が育っているのか、そして俺の生活拠点になる得るのか……とても、本当にとっても楽しみだ!
「ゼルジュラーダまでは徒歩だと三日といったところだが、大丈夫そうか?」
「三日!? ……まあ、そっか。魔法でひとっ飛びとかは無理だよな」
「そんな魔法がアマカワのいた世界ではあったのか!」
「いや、ないない。ゲームとかそういう世界の話だ」
そうなると俺の体力が持つかどうか。ステータスは魅力が無駄に高くて、他は低いからなぁ。
「そういえば、スキルポイントが5だけ残っていたっけ」
「なんだ、便利なスキルでもあるのか?」
「それを今から探そうと思いまして」
5ポイントで習得できるスキルとなれば重力制御や空間収納と比べて便利なものは少ないだろうが、それでも長距離を移動するのに役立つスキルがあれば……スキルが……って、重力制御スキル?
「……あれ、もしかして、これで移動できるんじゃないか?」
俺は確かめるためにも重力制御スキルについて改めて確認する。
物体の重力を調整することができ、重くすることや軽くすることができる。
「物体の対象に、俺を指定することができれば……お、これはいけたかな?」
「いったい何をしているんだ?」
「ちょっと俺の体重を軽くしてみたんだ」
「体重を軽く? ……あぁ、重力制御スキルか?」
「そうそう。俺って無駄に魅力の数値が高くて、他は低すぎるんだよね。だから、少しでも楽に移動できればと思ったんだけど……ちょっと走ってみてもいいかな」
「み、魅力って……」
「あの、リリアーナ? 走ってみてもいいかな?」
「……あ、あぁ、ごめんね、構わないわよ」
さて、リリアーナのあの反応にも慣れてきたところで、ちょっと試してみますか。
俺の体重はおそらく三分の二にまで落ちている。これで走れば体力の温存につながるはずだ。
「それじゃあ、ちょっといってみますか!」
――ドゴンッ!
「ア、アマカワ!?」
……し、視界いっぱいに、地面が。
「……いってええええっ! は、鼻が、鼻がああああっ!」
「お前、一歩目から躓くとかあり得ないだろう!」
「ぐぬぬ、俺、躓いてたのか?」
「盛大に躓いていたわよ!」
うーん、いきなり体重を軽くしたから、体の使い方が変わっちゃったってことかな。大人になって全力疾走しようとしたら躓くみたいな、そんな感じになったのだろう。
「あ、安心しなさいよ。別に走って三日ってわけじゃないから、体重を軽くして普通のペースで歩けばいいんだから」
「……そっか、そうだよな。ごめん、ちょっと異世界にテンションが高くなってたみたい」
日本では絶対にお目に掛れない大草原に興奮してたみたいだ。
そうだよな、体重が軽くなるだけでも負担は軽くなるんだから、あとはリリアーナのペースに合わせて歩けば問題はないんだ。
「まあ、アマカワくらいの力があれば魔族に対する心配は少ないのかもしれないけど、外には危険がたくさんあるんだから気をつけてね」
「いや、俺に力は全くない。だから、危険が迫ってたら絶対に教えてね」
「一人で魔族を倒しておいて、よく言うわね。でも、もちろんよ。パーティメンバーを危険に晒すわけないじゃないのよ」
「あー、そうだよな、すまん」
「その代わり、私のことも助けてよね」
「も、もちろんだ! 俺にできることがあれば何でも言ってくれ!」
俺がリリアーナの助けになれる機会なんてすぐには訪れないと思うけど、その時には全力で助けようと心に決めた。
「……あぁ、しかし改めて見ても、本当に凄いなぁ。エルフの森って高台にあったんだな」
「そうね。ここは少し特殊な地形でね、元々は平面だったんだけど一〇〇〇年以上前の地殻変動でここだけせり上がっちゃったのよ」
「そ、そんな昔に……でも、森がせり上がる地殻変動ってヤバいな。影響はここだけだったのか?」
「いいえ、ここだけじゃなくて世界中で地殻変動は起きていたわ。その時に目覚めたのが――魔王だって話よ」
魔王と聞いた俺は、駄女神との会話の内容を思い出していた。
『——グランザリウスを魔族の脅威から救ってほしいのです』
駄女神は確かにそう言っていた。
魔族の脅威……それは、魔王を倒せということだろうか。
「魔王って今もいるのか?」
「いるともいないとも言えるわね」
「どういうことだ?」
俺が首を傾げていると、リリアーナがさも当然という風に教えてくれた。
「魔王は地殻変動があった年の戦争で、勇者が封印したと言われているわ。だから生きているとは言われているけど、もう見たことのある人はほとんどいないと思うわ」
いや、ほとんどいないって、一〇〇〇年も経ってたら誰もいないでしょうよ。
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