第11話:採掘開始
岩場の前に到着してから初めて気づいたのだが、この岩場には鉱石があると何となく確信を得ている俺がいる。
これも採掘スキルの効果なのだろうか。
「さて! ……どうやって採掘しようかな」
岩場を見つけることに頭がいっぱいで、どうやって掘り起こすかを考えていなかった。
現時点でできる方法としてはナイフでガシガシと岩を削ることしかできない。
それだとどれだけ時間が掛かるんだって話だよな。その間に襲われる可能性だってあるわけだし。
せめてちょっとでも鉱石が採れれば、木材加工でピック以外の部分を作り、ピックは金属加工で作れればつるはしの完成である。
つるはしさえ作ってしまえば、次からは多少なり楽に採掘が可能になるはずだ。
「地面には……そうだよね、転がってないか」
まあ、そう都合よく落ちているわけもない。
可能性は低いものの、ここまで来たら少しくらいは岩を削ってみようかな。
「採れなかったら、途中で動物でも狩ってから帰るかな」
今すぐに採れなくても岩場の場所さえ覚えておけば次の機会だってあるのだ。
いったんは太陽がてっぺんに昇るまでをタイムリミットにして、俺は採掘を開始した。
……。
…………。
………………。
「……はぁ。やっぱり、そう簡単には出てこないよなぁ」
硬い岩を削り続けてどれくらい経っただろうか。
全身から汗が溢れ、びしょ濡れになった衣服が体に張り付いて動きにくい。
目には汗が入って痛いし、何度拭っても流れてくるものだから途中からは拭うことも忘れて必死で岩を削り取っていく。
太陽は刻一刻とてっぺんに近づいており、そろそろタイムリミットに近づこうというところで──
──キンッ!
岩を削る音とは明らかに違う甲高い音が俺の耳に響いてきて、腕にも痺れを伴う衝撃が走った。
「……マジで? マジか!」
そこからは無我夢中で岩を削っていく。
丁寧に、それでも素早く掘り進めていき、視界の中に光沢を伴う茶色の鉱石が見えた時には感動もひとしおだった。
さらに掘り進めていき、太陽はすでにてっぺんを越えようとしているが気にしない。
今日の俺は、この鉱石を絶対に持って帰るんだ!
「……まだか? まだなのか?」
すぐに掘り起こせると思っていた鉱石だが、俺の予想を超えて大きいようだ。
鉱石の表面も結構な面積で見えてきており、それだけでも俺の顔を同じくらいの大きさになっている。
「……これ、掘り起こしたとしても、持って帰れるのか?」
絶対に重いよな、だって鉱石なんだもの。
鞄に入れても……ていうか、入るかな、これ。
そんな不安を抱えながらさらに掘り進めること一時間程──ついにその時がやって来た!
──ゴロンッ! ドスンッ!
……よ、ようやく採れた! そして、ものすごい音がしたんだけど! ちょっと地面がへこんでるしね!
最終的な大きさは、俺の顔よりも少し大きいくらいのようだ。
茶色い鉱石ということだけど、これは銅なのかな?
鑑定スキルで見てみるか……ふむふむ……銅ではなさそうだ。
「アースレイロッグ? 聞いたことのない鉱石だな」
この世界特有の素材ということだろう。
使い道はつるはしのピックとしても問題ない硬さのようなので、苦労した甲斐があったというものだ。
……よし、持ち上げてみるか。
「い、いくぞ──ふんっ!」
ぐぬっ! ぐぬぬっ! ぐぬぬぬぬ~~っ!
「…………うん、無理だね、これは!」
レベルが上がっているとはいえ、力16では持ち上がらないようだ。
いったいどれだけの数値があれば持てるのか気になるところだが、それよりもどうやって湖のところまで持っていくかを考えなければならない。
正直な話、これだけの大きさはいらないんだよな。ピックとして使うだけだし、もっと小さくても全くもって問題はないのだ。
「……これ、もしかして」
ちょっと思いついたことがある。
しかし、これをすると大きな鉱石がもったいないことになるのだが……いや、背に腹は代えられないよな。
「よし、いくぞ!」
お願い、切れてくれ!
──キンッ!
……おぉ……おぉっ! 切れた、切れちゃったよ、このナイフ! 鉱石を切るとか、どれだけすごい逸品なんだよ!
俺の目の前には中心から真っ二つになったアースレイロッグが転がっている。
これならどうだろうか……ぐぬぬっ、重いけど、持てないことは、ないぞ!
何とか一つの塊を鞄に入れて、その場に尻もちをつく。
「はぁ……はぁ……はぁぁぁぁ……よし、帰るか」
もう半分は置いて行く。持てないのだから仕方がない。
まさか無くなるなんてことはないと思うので、次の機会にでも取りに来たらいいのだ、うん。
「……太陽、めっちゃ傾いてるし」
これ、昼ご飯じゃなくて三時のおやつになるんじゃないか?
いや、湖に到着する頃には三時すらも過ぎてしまう気がする。
「ぐ、ぐぬぬっ、やっぱり、重いなぁ」
左肩が取れるんじゃないかと不安を抱えながら、俺はゆっくりとした足取りで、それも気配察知をして遠回りしながら、採掘中よりも大量の汗を溢れさせながら湖まで戻ったのだった。
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