冥火のランプ

鍋島小骨

再会

 小さな花束を手にして郊外の自宅に帰った。

 夜の曇り空は寒く暗いが、手にした花のひよこのような黄色は朗らかだ。今日は待ちに待った日。

 家に入り着替えると、花を硝子がらすの花瓶に生けて屋根裏部屋に持っていく。

 よろいのおりた窓にカーテンを掛け、階段室の明かりも消して部屋のドアを締め切る。明かりは三本の蝋燭ろうそくだけ。柔らかに揺れる影の中、鍵の掛かった戸棚を開け、丁寧に取り出したものを天井のかぎから静かに吊るす。

 時間が来る。

 きっと来る。

 薄暗がり、秒針の音、風の音。

 私が過ごした、この四年間という時間。

 吊るしたランプの中で一度二度、火花が弾けた。それから煙のようにゆるやかに、銀のほのおがゆらりと立ち上がる。

 それを合図に、私は蝋燭の火を吹き消した。

 両目を閉じる。

 暗闇。風の音。

 等間隔に刻んでいた秒針の音がにぶにじんで遠くなっていく。

 そうして。


 足音が聞こえる。

 登って来る。

 待ち切れないかのように軽い小走りで。

 大丈夫、ここには日の光も月の光もない。君をくものは、何も。

 閉じたこの小さな部屋の中、待ちわびた君の気配が私の前にやって来る。

 私は祈りながら口を開く。


 ああどうか、今回もうまく行くように。



「イリヤ」


 私が呼ぶ。


「バーデル」


 私が呼ばれる。



 だ。私は両目を開き、目の前のイリヤを抱き締める。

 待ち焦がれた恋人を。




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