#16:第2日 (9) ビーチ・レーシング
「グアーウ! 素敵な水着ね!」
スサナがカリナの水着を褒める。グリーンがベースだが、ストリングがイエローだったり、一部青が混じっていたりするので、ブラジル国旗をイメージしているのだろう。
それより素敵なのはプロポーションだよ。このカーヴはまさにデンジャラス。マルーシャと1インチも違わない大きさの胸なんて、初めて見た。いや、マルーシャの胸の正確な大きさは知らないんだけれども、いい勝負なのは確実。そして尻の丸いこと。
しかしそんなところばかり見てはいけなくて、準備運動を終え、まずはボールを持って、投げずにフォームの確認。スサナが興味深そうに見つめる。
「シャツを脱いでくれると、筋肉の動きが見やすいんだけど」
言うと思った。「私もシャツを脱ぐから、あなたも脱いで」。いや、君が脱ぐ必要ないし。それにそのシャツの下は、水着なのか? ああ、例のスポーツ・ブラか。
とりあえずシャツを脱ぐ。スサナも脱ぐ。脱いだ後で、ブラの位置を微調整。大きく見えるようにしてるんだろうが、さすがにカリナには勝てないなあ。いや、そんな勝ち負けはどうでもいい。
フォームの確認をしていると、スサナが腕や肩や背中をベタベタと触ってくる。アドヴァイスするのは、コントロールがおかしいときだけでいいんだが。
「筋肉のバランスを見てるのよ。そろそろ投げてもらえる?」
指示されなくても投げるつもりだったよ。ポケットから25セント
カリナが喜んで、拍手しながら跳びはねる。胸が揺れる! ものすごい揺れ方。落ち着いた感じの美人なのに、あんな大袈裟に喜ぶとは、ひょっとしてプロポーションを誇示したいのだろうか。
横でスサナが満足げに頷き、コメントする。
「綺麗な動きだわ。特に、下半身が安定しているのがいいわね。今日見てきた野球チームでは、ピッチャーが腕の動きばかりアドヴァイスを求めるから、下半身のことを納得させるのに苦労したわ。あなたの投げるところ、ヴィデオで撮ってもいいかしら?」
「それは下半身を?」
「全身を。ああ、上半身と下半身も撮るわよ。前後左右から撮りたいから、合計12回投げてもらえるかしら」
それっぽっちでいいのか。まあ、ここではボールを捕りに行く手間があるから、1時間でどれくらい投げられるか判らないけど。
あれ、カリナがボールを持ってきた。
「ありがとう。次は俺が取りに行くから」
「お互い歩いてくることにすれば、時間が短縮できますわ。では、先ほどの場所まで戻ります」
カリナが振り返って歩いていく。おお、後ろはやっぱりストリング! 尻がほとんど全部見えている。水着として意味があるんだろうか?
「彼女も何かスポーツをしてるのかしら。ヒップの形がとてもいいわ」
「後で訊いてみてくれ」
ボールを取りに行く。胸を揺らしながらカリナがボールを持ってきて、尻を揺らしながら帰っていく。互いに元の場所に戻り、またボールを投げる。それを繰り返す。
スサナが俺の目の前で
何度も投げているうちに、周りにギャラリーが集まってきた。しかし見ているのは俺ではない。主にカリナ。特に、彼女が喜んで胸を揺らしているところ。次がスサナ。撮りながら、ときどき俺に注文を付けてきて、そのときの笑顔がいいのだろう。俺を見ている奴は、たぶんいないと思う。ボールの行く先は見ているかもしれないという程度。
12回投げるごとに距離を伸ばしたりして、40本ほど投げたら6時になった。ギャラリーは最終的に30人ほどになった。ただ、珍しいことをやっているなという感じで傍観しているだけで、ボールが
「いいものが撮れたわ。明日はこれを活用させてもらうから」
「大変結構なものを見せていただきましたわ。明日は会社で皆に話して、アメリカン・フットボールのことを知ってもらうようにします」
二人に感謝してもらったが、ステージのシナリオの回収になってるんだろうか。よく判らない。それにスサナがキー・パーソンか
「この後はどうなさいますか?」
カリナが訊いてくる。それをちょうど考えてるところなんだけどね。カリナはボールを胸に抱きしめている。ボールが羨ましい。
「ついでに夕方のランニングをしようかな」
「あら、それなら私も付き合うわ」
うん、スサナはそう言うと思った。二人きりで少し話をして、見極めないといけないこともあるので、それとなく誘ったつもり。
あれ、でもスサナは走っている間は話ができないんだったか。俺が速く走らなければいいだけのことかも。
「またあなたのスピードに付いて行くのは大変だから、少し落としてくれないかしら」
都合よくも彼女の方から提案してきた。
「走る距離による。どこまでにしようか」
「ビーチの端まででいいんじゃない?」
スサナが西を指差す。弓なりの浜の向こう、砦のある岬が見えている。あの手前までなら、2マイルあるかというくらい。そこからマリオットの前まで戻っても、俺としては少し足りないくらいの距離だが、スサナにはどうかな。
「じゃあ、まずそこまで行こう。その後のことは、着いてから考える。カリナ、君は車であそこまで迎えに来てくれる?」
「かしこまりました」
すっかり俺の秘書のように扱っているが、彼女はこの後8時まで俺の秘書も同然だし、彼女自身そのつもりだろう。走るのでシャツを着たが、スサナは逆にパンツまで脱いでしまった。着ている方が、汗を吸収してくれるんだけどなあ。
準備運動は終わっているので、すぐに走り出す。ビーチではなく、その横の歩道。スサナのために、少しだけ手加減する。彼女がどれくらいの速さで走れるのか見極めて、それを後の話の中で活かそうと思う。
「走る以外にも、下半身のトレイニングをしてるんでしょう? それを後で教えてくれるかしら」
スサナが話しかけてくる。まだ息が上がらないうちに、ということかな。でも、そういう余計なことをしない方がいいんだけど。
「ドリルがある。ただし、下半身だけを意識したものじゃない。知ってるのを全部教えるから、君が適当に選り分けてくれ」
「ありがとう! そうするわ」
「ところでそれを教えたら、君は他にどんなアドヴァイスをくれるんだ?」
「今日の夕食でどうかしら?」
アドヴァイスじゃないだろ。まあ夕食の時にいろいろ訊けばいいか。しかし彼女と行くとなると、カリナを連れて行ったものかどうか。
「お薦めの店でもあるのかね」
「あなたがどんなものを食べたいかにもよるわ」
「走り終わるまでに考えておこう」
「そうして」
その後、スサナはしゃべらなくなった。今の速さでは、やはり余裕がないらしい。せいぜい、ビーチの海水浴客から「オーラ!」と声をかけられて、挨拶を返すくらい。それにしても、俺には全然声がかからないのな。
弓なりの浜というのは走り甲斐があっていい。景色に明確な変化がある。曲がっている部分が、だんだんと短くなってくるのが判るから。それにここには、岬と砦という判りやすい目標もある。
マリオットの前辺りで、ちょうど半分。太陽が真西から照りつけるようになったら、あと4分の1。スサナがだいぶ苦しそう。そんなに無理する必要ないのに。
「スロー・ダウン?」
声をかけてやったが、首を横に振る。この頑張りは何なのか。しかし、ほんの僅かスピードを落としてやる。おそらく彼女は気付かない。
「残り400メートル!」
端まで440ヤードと思われる地点で、声をかける。初日に歩いたので、だいたいの距離感は掴めている。スサナの表情に、生気が戻った。しかし汗がすごい。こういうときは走り終えたらすぐに水分を補給しなきゃならないんだが、大丈夫かな。ドリンクのスタンドはそこら中にあるけど、ジュースでは濃すぎる。ゲータレイドがなければ、ミネラル・ウォーターの方がいいくらいで。
「ボーラ、ドトール! スサナ!」
ありゃ、ビーチの端までまだ200ヤードもあるのに、カリナが。拍手をしてくれているが、それだけであんなに胸が揺れるんだ。というか、水着から服へ着替えずに、車を運転してきたのかよ!
歩道の端は小さな広場になっていて、スロー・ダウンしながらそこへゴール・イン。スサナは座り込んだりせず、前屈みになって両手を膝に付き、荒い息を何とか抑えようとしている。多少スピードを落としたものの、今朝の倍くらいの距離を、正直、よく付いてきたと思うよ。
「ドトール!」
声で振り返ると、カリナが小走りでやってくるのが見えた。小走りで、あんなに胸が揺れるんだ。手に何を持っているんだろう、タオルか? そんなものどこから。ああ、ビーチへ持っていったのが、車に入れてあったのか。俺はいらないから、スサナの汗を拭いてやってよ。
「水を買ってきましたが、お飲みになります?」
カリナが笑顔でミネラル・ウォーターのボトルを差し出す。そんなものいつの間に。君、気が利くなあ。やっぱりアイリスと代わって欲しいくらいだ。俺が一口飲んでいる間に、カリナはスサナにタオルを掛けてやったり、ボトルを開けて水を勧めたり。
「ボーラって何だい」
カリナの後ろから話しかける。それにしても、すごい尻の露出。俺だけでなく、道行く人がみんなカリナの尻を見ている。ビーチにも同じような水着の女がいっぱいいるのに、なぜ彼女だけこんなに視線を集めるんだ。
「
慈愛の笑みを浮かべながらカリナが言う。同時通訳機能のおかげで、
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