#10:Fourth Quarter-2065年11月15日(日)

「レイブンズ、キッカーのティンバー・レイクが47ヤードのFGフィールドゴールを決めて3点追加、27対20と7点差に広げました。第4クォーター、残りは1分1秒です。ジャガーズに攻撃時間が残りました」

「はい、その前のレイブンズの攻撃で、タイムアウトを3つとも使ってしまって、残りはないですけれども、同点の可能性は残りましたね。レイブンズは4点差を7点差にしましたが、元々FGフィールドゴール1本では追いつけない点差だったんですね。しかし、4点差ではTDタッチダウンを取られたらそれだけで逆転ですから、TDタッチダウンとその後のキックで同点という点差にしたのは大きいと思います」

「レイブンズのキックオフで試合再開です。ジャガーズのリターナーにはエースWRワイドレシーバーのドーキンズが入っています。少しでも戻したいということでしょうか」

「レイブンズはタッチバックにはしないと思いますね。エンドゾーンぎりぎりの、リターンせざるを得ないところにボールを落として、4秒でも5秒もリターンで時間を使わせると思います」

「さあ、キックオフ。ご指摘のとおり1ヤード付近に落として、ここからドーキンズが返していく」

「ブロックできてますよ。いいリターンになりそう」

「タックルを一人、二人かわして、30ヤード、35ヤード、40ヤード! 40ヤードを超えたところでサイドラインを割りました。42ヤードか3ヤード付近でしょうか。さあ、ここからジャガーズの攻撃オフェンスです。残り時間は55秒」

「ジャガーズはいいフィールドポジションを得ましたね。今日のリターンの中で、一番いいポジションじゃないでしょうか」

「さあ、QBクォーターバックアーティー・ナイト、どのような攻撃オフェンスを展開するか。サイドラインの映像は攻撃オフェンスコーディネーターのジョー・ブルックス」

「このフィールドポジションで残り55秒あれば、1回か2回はランを入れることができると思うんですよ。レイブンズ守備ディフェンスはとにかくTDタッチダウンを取られないように深めに守りますから、スクリメージライン付近ですれ違いが起これば、10ヤードから20ヤードのロングゲインが見込めます。あるいはレシーバーを手前の浅いゾーンに走り込ませて、フィールドを斜めに走らせるのもいいと思いますね」

「さあ、自陣43ヤードから1stファースト10テン、ショットガン隊形です。RBランニングバックモンゴメリーを横に置いて、レシーバーは左右に二人ずつ。スナップから、モンゴメリーに渡して、中央を突く! いや、これは止まりました。止めたのはLBラインバッカーピットマン」

「ランパスオプションでしたが、ピットマンはよく見て、素早く上がってきてホールを塞ぎましたね。ピンポイントの鋭いタックルでした」

「ゲインは1ヤードでした。2ndセカンドナイン。時計が動いています。早く始めます。ノーハドル攻撃オフェンス。ショットガン隊形から、短いパス。通った、キース・ジャクソン! サイドラインに出て、8ヤードほどゲインしました。1stファーストダウンはぎりぎり獲れていないでしょうか」

「時計を止めるプレーでしたね。レイブンズ守備ディフェンスはこれくらいの距離は捨てないとしょうがないですから、進まれるのは仕方ないです。エンドゾーンさえ守ればいいので」

「残り時間は29秒です。敵陣に入りました。3rdサードワン。エンドゾーンまで48ヤード。FGフィールドゴールでは追い付きません。またショットガン隊形。マット・ナイキストがインモーション。スナップからさらに2歩下がって、奥を見ているか。ターゲットを探している。投げた。長いパスだ! ダレイマス! あっと、届かない! 転んだ。しかしこれはパスインターフェアか?」

「イエローフラッグ出てますね。最後、コーナーバックがダレイマスのジャージを掴んだように見えました。しかし今、すごい遠くからフラッグが飛んできましたね」

CBコーナーバックのホールズはアンキャッチャブルだとアピールしているようです」

「いや、しかしVTRを見ると、これはインターフェアを取られても仕方ないですね。ジャージが伸びると、取られますよ」

「インターフェアです。反則地点からジャガーズの攻撃。エンドゾーンまで24ヤードです。残り時間は22秒」

「これはかなりTDタッチダウンの可能性が高くなってきましたよ。パスならあと4プレーは確実にできると思います。ただ、これ以上エンドゾーンに近付くと、エリアが狭くなってパスを決めにくくなりますし、時間もなくなるので、プレー選択が難しいですね」

1stファースト10テンの攻撃。ショットガン隊形で、ノーバックです。左の広いサイドにレシーバーを4人固めています」

「レイブンズはブリッツを入れてくる可能性がありますね」

「さあ、6人のブリッツだ! 捕まるか!? かわして、前へ出た! 走るか!? いや、投げた! 中央だ! ドーキンズ、獲った! しかしエンドゾーンには届かない。あと4ヤード! LBラインバッカーのミルズがなんとか止めました!」

「スパイクをして時計を止めないと」

「ナイトがスパイクのジェスチャーをしています。急がなければいけません。10秒を切った。あと8秒、7秒」

「スパイクするふりをして、エンドゾーンのコーナーへパスっていうのもありますね。QBクォーターバックとレシーバーと二人だけで合図して、あ、いや、スパイクしましたか」

「時計が止まりました。残り4秒です。これでは1プレーしかできないでしょうか」

「2プレーは難しいそうですね。セットバックからスナップを受けてすぐに、エンドゾーンの中へ、低いところへ投げる。それなら失敗しても1秒残る可能性はあります。いや、待ってください。メンバーを大きく入れ替えてきましたよ。ジャンボ・パッケージですね。ランで押し込むんでしょうか」

DLディフェンスラインのシャッカーフォードとトンプソンが入ってきました」

LBラインバッカーのドニー・アンバーザトもいますね。ディフェンスもランストップでラインの選手を入れてくるんじゃないですか」

「さあ、アイフォーメーションのパワープレーになりました。いや、ここでレイブンズがタイムアウト。最後のタイムアウトを使いました」

「やはりラインの選手を入れてくるんでしょうね。あるいは何か特別なプレーをしてくると読んだんでしょうか」

「パワープレーでないとしたら、どんなことが考えられますか?」

「例えば、中央を突くと見せかけて、ハンドオフフェイクからQBクォーターバックがブートレッグで走って、外へ行ったレシーバーにパスですね。あるいはQBクォーターバックがそのまま走り込むのも考えられます」

「ナイトはここまでランはほとんど記録がありません。ヤーデージはマイナスですから、これは全てサックということになるでしょうか」

「そうですね。あくまでもポケットの中に残って、パスターゲットを探すタイプですから。ただ、走ると怪我が怖いですよね。ジャガーズはこれまで5人のQBクォーターバックが怪我をしてますので、QBクォーターバックの決め打ちのランを入れるのは避けるんじゃないでしょうか」

「さあ、レディーフォープレーのホイッスル。ジャガーズのフォーメーションは先ほどと同じ。FBフルバックDLディフェンスラインのシャッカーフォード。SBスロットバックに同じくDLディフェンスラインのトンプソン。TBテールバックはエースRBランニングバックのリッキー・モス。TEタイトエンドは二人付けていますが、そのうち左サイドはLBラインバッカーのアンバーザトです。ダレイマスがインモーション。さあ、タッチダウンを取れるかジャガーズ。ハンドオフして、モスに持たせて突っ込む! あっと!?」

「あ、パスだ!」

「モスがジャンプ! ふわりとボールを浮かせて、どうか!? 捕った、タッチダウン! アンバーザトだ! トリックプレーが成功! ジャガーズ、1点差に迫りました!」

「アンバーザトは左のTEタイトエンドの位置に入っていて、外側から入ってきたディフェンダーをブロックし損なったのた見えたんですが、それがフェイクでしたか。すごいトリックプレーですね、これは」

「ランで押し込むと見せての、フェイクパスでした。モスのダイブフェイクもすごかった。ぴたっと止まって真上にジャンプしてましたね」

「横じゃなくて、縦のカットバックみたいでしたね。バスケットボールのジャンプシュートのようでした。VTRで見ると、ラインは完全にランプレーのブロックの動きで、右のオフガードをこじ開けようとしてますね。開いたところへレイブンズのLBラインバッカーミルズが入ってきて、止められるかに見えたんですけど、そこへ行かずにパスでした」

「しかも捕ったのがLBラインバッカーのアンバーザト。大きな身体でクイックネスが素晴らしい選手ですが、キャッチもうまかったですね」

「彼はグッドハンドの持ち主ですよね。レギュラーシーズンでもパスの時に手を出してボールを弾いて、それを自分で捕ってインターセプトというのが何度かあったと思います」

「さあ、PATポイントアフタータッチダウン、キックが決まりました。残り時間ゼロで27対27と、ジャガーズが同点に追い付きました。この後は、延長戦オーバータイムです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る