#8:Half Time-2065年11月8日(日)

「前半が終了して、チーフスが20対3とジャガーズをリードしています。保志さん、前半の戦い、いかがでしたか」

「点差は開いてますけど、戦前の予想とはだいぶ様子が違ってますね。まず、チーフスは点は取れてるんですけど、今一つリズムが良くない感じがします。最初の攻撃こそ、3プレーであっという間にタッチダウンでしたけど、その後はランもそれほど出ない、パスもレシーバーがよく落とす。1stファーストダウンを取るのにも苦労しているという印象でした。点が入ったのは主にジャガーズのミスからですよね。第1クォーター、第2Qにそれぞれインターセプトが1回ずつで、それをチーフスが得点に結びつけた。逆に、ジャガーズの方が攻撃がつながっているような気がしました。パス攻撃は、予定どおりと言っては変ですけど、改善されてましたよね」

「では前半のハイライトです。先制したのはチーフス。最初のドライブを得点に結びつけました。開始から3プレー目、QBクォーターバッククックからのパスをエースWRワイドレシーバーのヒルがキャッチ、そのままエンドゾーンまで走りきってTDタッチダウン。記録上は60ヤードのTDパスということになります」

「このときに、ジャガーズのディフェンスはどうしちゃったんだろう、というようなことを申し上げたんですが、その後はすぐに改善しました。最初のこのプレーは、言ってみれば“出会い頭“みたいなものだったと、いうことになるでしょうか」

「7点を追うジャガーズは第1Q終了間際、敵陣30ヤード付近まで進んで、FGフィールドゴールが狙えそうな位置でしたが、3rdサードシックスからQBリーフがTEタイトエンドブライアン・ローンへ投げたバスを取りきれず、弾いてしまい、これをチーフスのLBラインバッカージェフ・シャーマンがインターセプト。55ヤードリターンして、敵陣深いところからの攻撃権を得ました」

「パスの狙いはよかったんですよ。1stダウンの少し手前に投げて、ラン・アフター・キャッチで2ヤードくらい進んで、1stダウンが取れればOK、取れなくてもFGを狙うのには十分な位置ですから」

「逆にチーフスはこのチャンスからFGで3点を追加しました。これで10対0」

「3点でも取れそうなところを取れなかったのはジャガーズにとって痛いですけど、あの位置からチーフスに7点を許さなかった、3点で抑えたというのは、まだ傷は浅かったと思います」

「第2Qに入って、ジャガーズの攻撃が進み始めていたんですが、敵陣45ヤード、1st&10からリーフがWRビック・ジョーダンへ投げた長いパスを、今度はセイフティーのホイットルがインターセプト。これも大きく陣地を戻します」

「リーフはSの動きが全く見えてなかったですよね。その時に解説しましたけど、リーフはホイットルが、外側のレシーバーにつられて、付いていくと思ったんでしょう。でも、ホイットルはよく見て、付いていかずに残っていたので、インターセプトできました。リーフにしてみれば、全くの死角からホイットルが出てきたように見えたんじゃないでしょうか」

「チーフスはこのターンオーヴァーから得た攻撃を、最後はクックからTEトロイ・ウィルコックスへのTDパスで締めくくりました。これで17対0になりました」

「二人に囲まれてる、狭いところによく通しました。ジャガーズのディフェンスはクックによくプレッシャーをかけてたんですけど、ぎりぎりかいくぐられましたね」

「ジャガーズは次の攻撃、リーフからWRドーキンズへのロングパスなどもあって、ようやくFGを1本返しました。3対17」

「この攻撃は非常にリズムがよかったです。リッキー・モスのランもよく出てましたし、リーフにプレッシャーがかからないように早いタイミングで投げたパスもよく決まりました。時間もよく使いました。ただ、できればTDを取りきって欲しかったですね。時間を1分ちょっと残してしまったのはよくなかったです」

「その残り時間1分10秒、自陣25ヤードからチーフス、タイムアウトをうまく使いながら進んで、最後は57ヤードのFGで締めくくりました。これでちょうど時間が0。20対3で前半終了となりました」

「時間を残してしまうとこういうことがあるわけです」

「両チームのスタッツをご覧いただきます。トータル獲得ヤードでは、両チームさほど変わらないですよね」

「1stダウンの数もほとんど同じ。違うのはターンオーバーの数と、攻撃時間ですね。ターンオーバーはジャガーズが2に対してチーフスは0。攻撃時間はジャガーズの方が4分以上多いです。要するに、チーフスはターンオーバーでいいポジションから攻撃が回ってくるんで、短い距離、短い時間で得点ができたと。ジャガーズの攻撃はそれほど悪くない。1stダウンも取れてるし、進んでるんですけれども、点が取りきれない。このスタッツに現れてない、ターンオーバーからのリターンの距離が、両チームの点差になっていると。逆に言うと、ジャガーズはインターセプトに気を付ければ、まだまだ追い付くチャンスはあると思います。ディフェンスはチーフスの攻撃を止めてますからね」


「後半はチーフスのキック、ジャガーズのリターンから始まります。チースのキッカーラッセル・ゴルストンのキック、おっと、サイドラインの外へ直接出ましたか。これは珍しいミス」

「キックオフのアウト・オブ・バウンズはよくルールが変わるんですけど、今は三つ選択肢があって、5ヤード下がって蹴り直しか、アウト・オブ・バウンズに出た地点から攻撃開始か、自陣35ヤードからの攻撃開始かを選ぶことができます」

「ジャガーズは自陣35ヤードからの攻撃を選んだようです。QBリーフの成績、今日は前半でパス17回中10回成功、129ヤード。インターセプトが二つ」

「インターセプトは余計ですけど、一つ目はレシーバーのキャッチミスですから、リーフのせいではないです。二つ目は敵陣に入ってからの長いパスをインターセプトされたんで、言ってみればパントと同じようなものですから、ビッグリターンをされたにしろ、悔やむほどのことではないと思います。リーフはベテランですから、そこは解ってるでしょう」

「後半最初の攻撃、ワンセットバックから、ドロー。中央へRBフレッチャーを走らせました。2ヤードほどゲイン」

「前半からよく使ってるプレーですね。ジャガーズのラインは押せてますから、これは後半も有効だと思います」

「止めたのはLBシャーマン。今日インターセプトが一つあります」

「あれもいい反応でした」

2ndセカンドエイト。またワンセットバックからです。TEローンがインモーション。ドロップバックして、エンドアラウンドで回ってきたダレイマスへハンドオフか。いや、そのフェイクをして、長いパス! TEローンへのパスでしたが、これは通りません」

「今、リーフのすぐ後ろまでディフェンス来てましたね。ハンドオフしたらダレイマスはすぐ捕まってたでしょうから、パスの判断は正解でした。でも、タイミングでは決まってるはずですから、ローンもきっちり捕らないといけません」

「振り向いた直後にボールが来てますが、これは落球ドロップですか」

「NFLのレベルではドロップですね。もちろん、リーフはシーズン途中から入りましたので、タイミングの問題はあるでしょうけれども、ダレイマスは捕るべきです」

「3rd&8になりました。3rdダウンコンバージョンは前半6回中3回成功。50%」

「これも悪くないですよね。ただ、5ヤード以上のロング・シチュエーションはたぶん一度も取れてなくて、うち1回は例のインターセプトですね」

「ショットガンの隊形、レシーバーは左右二人ずつ。リーフがオーディブルで少し位置を変えました」

「相手のキックオフのミスでいい位置から攻撃権をもらったんで、スリー&アウトは避けたいですね」

「スナップが出て、どこへ投げるか。フェイクを入れて、いや、投げられませんか」

「レシーバーが空いてないみたいですね」

「左からプレッシャーが来た! リーフは右へ流れて、まだ投げられない。あっと、捕まった! リーフが捕まりました。捕まえたのはDEディフェンスエンドスティーリー。今シーズンこれで六つ目のサック」

「逃げながらですけど、ブラインドサイドから強烈なタックルを受けましたね」

「おっと、リーフは立てないか? ここでホイッスル。インジャリータイムアウトです」

「フラッグも出てますね。何でしょうか」

「反則が発生しています。オフェンスのホールディングでしょうか」

「いや、二つ出てます。スクリメージラインの手前と、奥ですね。手前のはおそらくオフェンスですけど、奥のはディフェンスじゃないでしょうか」

「レフェリーのコールは……オフェンスのホールディングと、ディフェンスにもホールディングがあったようです」

「オフェンスの方はQBが捕まりそうなので、守ろうとしてOLオフェンスラインが相手を掴んでしまったんですね。ディフェンスはレシーバーがフリーになろうとするのを邪魔して、思わず掴んでしまった。オフセッティングです」

「攻守両方に反則がありましたので、相殺して3rdダウンのやり直しということになります。しかしリーフの方ですが、立てるでしょうか?」

「今は反則とインジャリーの両方で時計が止まってますね」

「リプレイです。スナップが出て、レシーバーを見て、プレッシャーが来たので右に逃れようとしましたが、スティーリーに捕まって倒されました。横から倒れてますが、これは右肩から落ちたでしょうか?」

「そのようですね、リーフはようやく起き上がりましたが、またフィールドに座り込んでいます」

「右肩を押さえて、コーチと何か話しているようですが。首を振っていますか。ジャガーズ、またQBが故障ということになると、だいぶ苦しくなりますが」

「13番がサイドラインでスローイングを始めてます」

「13番、ゲーム前にご紹介しましたアーティー・ナイトです」

「マイアミ大時代の成績が画面に表示されました。用意がいいですね。もちろん、彼がジャガーズに入った時点で用意してたんでしょうけれども」

「13試合に出場、うち先発は3回。2勝1敗。通算パス獲得2023ヤード、25TD、11INTインターセプト。2勝のうち1勝はオレンジボウルですね」

「当時はジョルジオ・トレッタっていうエースQBがいて、彼はその控えだったんですけれども、トレッタが最終戦で怪我をしたので、代役としてオレンジボウルに先発した。それで勝ったんですよね。大逆転でした」

「ネブラスカ大とのゲーム、第4Qに18点差をひっくり返しました。それがいわゆる“マジカル・カムバック”」

「VTRまで出てきました。本当に用意がいいですね」

「さあ、インジャリー・タイムアウトが解けて、ゲーム再開です。自陣37ヤードから、3rd&8。ショットガンの隊形。WRマット・ナイキストがインモーション」

「チーフスはFSフリーセイフティーがブリッツのモーションを入れてます」

「スナップが出て、あっと、ディフェンスの出足が速い!」

「ブリッツは入れませんでしたが、すごいプレッシャーがかかってます!」

「サックされるか? いや、避けた! パンプフェイクを一つ入れてから、右に長いパスを投げた!」

「あ、空いてる!」

「通るか!? あーっと、インターセプト! CBコーナーバックローレンス、今シーズン四つ目!」

「ダレイマスは奥へ行ってしまいましたけど、ナイトは止まると思ったんですね。コミュニケーションミスでしょうか」

「リプレイで確認しましょう。ダレイマスはコーナールートでサイドライン際を上がっていきましたが、ペースを変えて、ディフェンスを振り切ったんですね」

「ペースを緩めて、わざと追い越させて。そうすると相手の足が止まるんで、そこで抜き返したんですが。ナイトは少し手前に投げてしまいました。しかし、これこそパントと同じって考えないといけませんね。今度はリターンされなかったんだから」

「ターンオーヴァーでチーフスの攻撃、自陣17ヤードからとなります」

「お客さんがまた帰り始めましたね。前半終了時点でだいぶ減っていましたが、もう半分もいないようです」

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