ステージ#7:指輪の競演 (The Hoard of the Rings.)
#7:バックステージ(開始前)
「了解しました。アーティー・ナイトは第7ステージに移ります。次のステージはヴァケイションです」
いつものとおり、ターゲットのヒントを言うのかと思っていたら、意外な単語が飛び出してきた。ヴァケイションだと?
「何のことだ?」
「6ステージ以上経過して、規定の成績を上げている場合は、1週間の
1週間の
「年代と季節も教えてくれ。まさか、いつもと同じく、自分で調べないと日付も判らないなんて言うんじゃないだろうな」
「プエルト・リコは2047年1月、エジプトは2023年12月、オーストラリアは2002年2月です」
どうしてどれも冬なんだよ。プエルト・リコはフロリダより南で、年中同じような気候のはずだから何月でも同じとして、エジプトはヨーロッパ人の避寒地らしいから、1月でもそれほど寒くないか。オーストラリアは……おっと、南半球だから、2月は夏だ。しかし、それ以上のことがさっぱり判らない。もっとビッティーに訊けばいいのか?
「それぞれ、どこの都市に行くことになるんだ?」
「プエルト・リコはサン・フアン、エジプトはカイロ、オーストラリアはポート・ダグラスです。それぞれ、拠点都市のみでなく、周辺のいくつかの都市に移動可能です」
「ポート・ダグラスは聞いたことがない。どこにあるんだ?」
「東海岸北部、クイーンズランド州です。ケアンズから約70キロメートル北寄りです」
ケアンズの位置すらもよく判らないが、だいたいの感じはつかめた。あの蟹のような形をした大陸の、右肩の辺りだろう。しかし、なぜキロメートルで説明するんだ。俺が合衆国民だって知ってるはずなのに。
「気候は? 日中の最高気温と最低気温はどれくらいだ? 華氏で!」
「サン・フアンは86度と76度、カイロは68度と50度、ポート・ダグラスは86度と74度です」
「ビッティー、そうやって情報を小出しにするのは、何か理由があるのか?」
「特にありません。ご質問があれば何でもお答えします」
「旅行代理店みたいに、訊かれれば1時間でも答え続けるってのかい」
「お望みであれば」
いつもは時間制限があるのに、
「一番静かなのはどこだ? 観光客が少ないという点でだが」
「ポート・ダグラスです」
「じゃあ、そこにしよう」
こういうことで迷うのは、はっきり言って時間の無駄だからな。まあ、今の俺には時間なんてどうでもいいのだが。それに、オーストラリアなら英語が通じるから楽だろう。エジプトやプエルト・リコでも英語を話せる奴はそれなりにいるだろうが、話せない奴が相手だと、またあの同時通訳が頭の中に響いてうっとうしい。
「ところで、君も一緒に行くのか?」
「
「それはないぜ、ビッティー。俺はこの世界で、君の声を聞くことだけを楽しみにしてるのに」
「申し訳ありませんが、ルールですので」
「じゃあ、俺が
「いいえ、メインテナンスに入ります」
メインテナンス……やっぱりビッティーは人工知能か何かなんだな。
「君が他の男に浮気をしないのが判って安心した。入念に
「ありがとうございます」
「メインテナンスが終わったら機能が追加されたりする? 例えば、アヴァター機能が常設になるとか」
「それは判りません。もし何か機能が追加されていた場合はお知らせします」
「そうしてくれ」
「ポート・ダグラスについて、他にご質問はありますでしょうか?」
「ないよ。これ以上は現地に行って訊けばいいさ。君だって早くメインテナンスに入りたいだろう?」
「そのようなことはありません」
「じゃあ、俺とこうして話をしている方が楽しい?」
「そのようなことはありません」
そうはっきり言われるとショックだな。
「じゃあ、そろそろ
「了解しました。
「ステージを開始します。
「1週間後に、また君の声を聞かせてくれよ、ビッティー!」
とにかく休暇だ。バイ・ウィークだぜ!
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