第2章 第1話

俺が降り立ったこの日本という国で、もう一度いま流行の顔と体型に整える。


ファッションも髪型も、そのまま写し取ればそれでいい。


人物設定も考えた。


大富豪の息子というのが、ウケがいいらしい。


ではその方向で。


黒塗りの高級車で、涼介の通う高校の正門に乗り付ける。


俺は今日からこの学校に転校生として侵入する。


もちろん、奴と同じクラスだ。


車から降りたとたんに、登校途中の人間どもの注目を、一身に集めた。


当たり前だ。


ざわざわと俺を見てささやき、噂をするその雑音が心地いい。


「やあ、涼介、おはよう。キミの登校してくるのを、待っていたよ」


周囲には、すっかり黒山の人集りができている。


俺がその状況で、一番に話しかけてやるのは、涼介、お前だ。


「職員室まで案内してくれるか。幼なじみの、仲じゃないか」


現れた涼介は、思いっきり嫌そうな目で上から俺を見下ろす。


周囲の観衆がざわついた。


「いつから幼なじみになったんだ。俺の中では昨日突然押しかけてきた、頭のおかしな奴ってだけだけど」


涼介の持つオーラが、普通の人間とは少し違うような気がするのは、その威圧的な態度と体格のせいか? 


腕組みをして、思いっきり見下ろす涼介に、俺は負けじと言い返す。


「いいから、職員室まで案内してくれ。それくらいは出来るだろう」


目が合ったので、にこっと微笑んでみせたら、その笑顔に周囲を取り囲む女どもから悲鳴があがった。


その様子に、涼介は驚いたような、呆れたような顔をして、頭を横に振る。


「にんにくチューブで追い出されたくせに」


「転校生なんだ。案内しろよ」


仕方なく歩き出した涼介の後ろを、ついて歩く。


その俺の後ろに、野次馬どもの行列が出来る。


俺は涼介の横にならんだ。


この俺さまの隣で並んで歩けるだけでも、光栄と思え。


「名前すら知らないのに、なにが幼なじみだ」


「鷲頭獅子丸(しゅとうししまる)っていうんだ。それくらいは、覚えておけ」

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