孤児院
「どうしたんだい?」
僕が聞くと、男の子は転倒して膝を擦りむいてしまったので泣いちゃったみたい。
僕は井戸水を汲みなおし、膝に水をかけて洗ってあげて、清潔な布を持ってきて膝を拭き、もう1枚を膝に巻いてあげた。
放っておくと大変な事になるからね。
こんな孤児院じゃあ回復魔術を使える人なんている訳がないし、それこそ教会へ行けば回復魔術を使える人はいるけれど、相応なお金がかかるって聞いた事がある。
なのでここで出来るのは怪我をした個所を綺麗にしてあげて、布で巻いてあげる事ぐらい。
「リューク兄ちゃんありがとう!」
そう言って食堂へ駆けて行った。あ、こけなければいいんだけど。
「今日は6人が出発する日です。皆さんお別れの挨拶をしましょう!」
全員が食堂に入ったのを確認した孤児院の先生がそう言い、僕達を紹介してくれた。
これが皆で食べる最後の食事。
そしてこの日はいつもより少し食事の内容が良いんだよね。
いつもは固い黒パンをスープに浸して食べるんだけど、今日はスープに僅かだけれど肉が入ってる。
食事が終わり、出発の準備を・・・・と言ってもそんなに大した荷物がある訳ではなく、皆袋ひとつに着替えと数日分の食料、馬車代と道中の宿泊代と水入れに入れた水。
後は小さなナイフ。
まあ孤児だし仕方ないよね、荷物が少ないのは。
お金は・・・12歳ぐらいになると皆働きに出る。
体が大きい子だと10歳ぐらいから。
子供の稼ぎはたかが知れているけれど、孤児院で暮らしていれば否が応でも稼がないと。
女の子の場合は・・・・一部は違うみたい。
たまに裕福な身なりの人が来て、見た目が良い女の子が連れられて行く。
貴族のメイドになったりするらしい。
そして残った女の子は・・・・冒険者になるか、夜の慰み者になるか・・・・慰み者?何かよく分からないけれど、あまりいい事ではないみたい。
男の子の場合、運がよければ何処か職人さんの弟子になったりして孤児院から出て行ける。
そして何処も行く当てがない子供は結局15歳になると、冒険者として活動を開始する事が多い。
この間に色々勉強したり、人とのかかわりをもてば何処かに勤める事もあるらしいと言っていたっけ。
最近は戦争が無いからあまりないけれど、兵士という選択肢があるみたい。
まあ僕は冒険者になるしか道がないのだけれど。
そして、せめてもの応援という訳じゃあないけれど、孤児院を出て冒険者になる場合、最初からパーティーを組めるように、6人1組で冒険者登録をできるようにしてくれているみたい。
どうしても冒険者というのは死ぬ確率が高いので、せめてお互いよくわかってる人同士でパーティーを組み生存率を上げられるようにと、孤児院からの配慮みたい。
あと、孤児院の中に1人読み書きができる人がいて、希望者には教えてくれた。
何かの役に立てば、と思い僕は一生懸命勉強をし、何とか読み書きができる。
今回出発する6人の中で、字を書ける人は僕しかいない。
女の子は3人共読む事はできるらしいけれど、男の子はもっぱら剣術を学んだみたいで多分読み書きできないんだ。
僕も少しは剣を扱えるけれど、実際に魔物と遭遇したらかなり怪しい。
そうこうしているうちに乗合馬車が来たので、出発する事に。
2頭の馬が曳く馬車で、15人程乗れる大きな馬車。
聞いた話だとキャラバンという種類みたいで、馬もすごく大きく力が強そう。
こうして僕達6人はずっと過ごした孤児院を去る事になった。
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