第337話 夜叉の国での出産

夜叉の国って・・・・

そう言えば、廃墟?とか村とか、見慣れない感じだった・・・・

服とかも、違うな。

昔の日本みたいな?

まあ時代劇のイメージだけど。

もしくは戦国時代を舞台にした大河ドラマに出てくる農民と、その生活の場とか。

尤も本物は見てないから、なんとなく、というレベル。

それよりも月女だよ。

お腹が・・・・はちきれんばかりのまさしく妊婦さん。

まあ自分の子供なんだけどさ。

そう思ってたらいきなり月女がおっさんに謝りだしてきた。


「旦那さま・・・・旦那さまの奥様とお子様が、こちらの世界に来られていたとジスラン殿より連絡を頂いたのですが、館に向かうことができず申し訳ございません。」


・・・・いや、だって妊婦さんだし?

「何を言ってるんだ、月女のおなかには新たな命がいるんだ。その体で無理をして、月女とおなかの赤ちゃんに何かあったらどうするんだ。それにゲートを妊婦が使用したらどうなるか分からないし、だからと言って誰かに実験してもらう訳にはいかないし。兎に角気にしなくていいんだよ。」


「そう言って頂けると気が楽になります。ありがとうございます・・・・・所で、こちらに来ると連絡が無かったようですが、どうされたのでしょうか?それにこの・・・・化け物の事もありますし。」


「ああ、ミロスラーフの事はわかるよな。あいつがまた罠を仕掛けてね。それがこの道の突き当りの廃墟?遺跡?に出るゲートを仕込んでくれてね。そこにこの化け物がわんさかいたって事さ。」


「わんさかって・・・・あの化け物はあまりの強さ、数に誰も手出しができずにいたのでございますよ。それを討伐されるとか・・・・流石は旦那さまでございます。あ、こんな所で立ち話もなんでしょうし、一度わたくしの住まいと定めております場所へ、移動をされませんか?」


そう言ってくれたので、喜んで移動する事にしたよ。あ、この化け物は結局引き取りたいとの事だったからその場に置いてきちゃったよ。


・・・・

・・・

・・



月女の住まい


うーん、周りの建物よりは立派だけど、月女らしいというか、権力者が住むような感じの建物じゃないというか。

月女に言わせれば、必要な大きさの建物であれば、無駄な装飾はいらない、実用的であればいい、との事でね。

月女の意見というか、おそらく夜叉の国・・・少なくともこの街全体に言える事なんだろうけど、ごてごてした家が、店がないんだよね。

質素というか。

まあそれが良いんだけどね、素朴な感じがして。


そして二人きっりになった途端月女が抱きついてきたよ。


「旦那さま・・・・月女は嬉しゅうございます・・・・ここに来られた理由は兎も角、こうして再び旦那さまとお会いできるという素晴らしさ、もういてもたってもおれません。」

おっさんも思わず、勿論優しく、お腹に障りがないようにだけど、月女を優しく抱きしめたよ。

そうして暫くすると、月女がおっさんと離れて

「もうすぐ紅渚が参ります。少し会ってやってくださいまし。その後は・・・・十六夜姉さまに会っていただきたいのです。」

「おおそうだよ、紅渚は兎も角、十六夜はどうしてるんだ?」

「十六夜姉さまは只今臨月、しかも陣痛が始まって出産の準備に入っております。」

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