第296話 怪しい噂

「ところで侯爵、最近商館へは行かれておりますかな?」

「あーロニーさん、全く商館には顔出してないよー」

商館、忘れてたな・・・・

「実は商館で妙な噂が流れておりましてな・・・・」

「おいロニーなんだよ噂って!」

「陛下、実は侯爵がここ最近、シラカワ領内に流入した若い娘に手を出しまくっているという噂なのですが。」

「おいおいシラカワ!見境なしか?」

「ちょっとロニーさんなんですかその噂!はっきり言って妻を相手にするので手一杯で他の女に手を出す余裕全くないですよ?もう毎日妻相手に干からびそうなんですから!」

「それはわかっているのですが・・・・どうやら被害を訴える若い女性が後を絶たないとか。」

・・・・なんじゃそりゃ?

「ジスラン君、何か聞いてる?」


「いえ侯爵、特にそう言った噂も聞いてませんし、被害にあったという女性の噂すら聞いてませんね。少なくともシラカワ領に流入した女性で、そのような被害にあったというのは聞いてません。」

「やはりそうですか。しかも加害者は侯爵、という事ですし、そんな見境なく襲わなくても逆に向こうから色んな意味で襲ってきそうですしな!私も変だとは思っていたのですよ?」


「そうなんだよ!たまに工房に行くとめっちゃ色気振りまく女性が多くて困るんだよ?しかもあからさまに抱いてほしい、子供が欲しいって言いよる女性も続出していてね。だからわざわざ襲うとか無理!」

「おいロニー、商館で出てる噂なんだな?」

「正確には商館に出入りしている商人たちからです。私のように大きな店を構えている商会はむしろ、シラカワ商会にもっと出店してもらって、大きな商店同士がさらに大きな集まりを形成し、大規模な売り場を作りたいと考えているほどですし、シラカワ商会はかなり好印象なのですよ。しかも侯爵は魔術の才能があり、あわよくば我が娘を!と思っているほどなのですから、それがどこのとも知れぬ娘を侯爵自ら襲うとか考えにくく、なぜこのような噂が出ているのか分からないのですよ。」

「おい、話が長い!もっと簡単に言え!」

「つまり、大きな商会からは噂は出ておらず、店を構えていない商人や旅商人からの情報なのですよ。」

「それはつまりどういう事だ?」

「そう言った商人の中に、何やらよからぬ動きがあるという事ですよ。」

まじか・・・・何で変な邪魔をするかなあ?

「えーロニーさん?怪しいのは商人なのであって、襲われたと言い張る娘じゃないと?」

「そうですな、侯爵、少なくとも私どもは襲われたと言っている娘に会った事もありませんし、そう言った娘が周りにいると言ってる娘も、聞いた事が無いのですよ。」

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