第221話 放物線を描き、飛んでいくクィンシー

クィンシーが珍しく来ていてね。おっさんが声をかけようと思ったら、ウェンディが勢いよくクィンシーに突っ込んでいってね、

「けだものは出てけー!」

っていきなり叫んでクィンシーをふっとばしちゃったよ。

不意打ちだったのか、もろに食らってね。

「ぶぼべらげ」

とか言いながら見事な放物線を描いて・・・・で、カトリーンが受け止めてたよ。何せ、そのまま飛んでいくと建物に被害が出そうだったからね。


「おいおい、いきなりご挨拶だなあ?誰かと思ったらウェンディかよ。」

「何であんたがここにいるわけ?消えなさいよ、けだもの!」

「なあシラカワ、何でここにあばずれがいるんだよ?」

「色々あってさ・・・・クィンシー、あんたウェンディに何かしたのかよ?」

「ちょっとスキンシップをな。お尻をなでなで。」

「死ね!」

おお!見事なモミジマークだ。

「今後ウェンディに触っちゃあ駄目だからな。もうおっさんの物だから。」

「誰があんたの物になったのよ!」

「ウェンディがおっさんの妻にね。」

「なってないでしょ!」

「だって、賭けでそう決まったでしょ!」

「うぐっ!言い返せない・・・・」

「おいおい、シラカワ、こんなあばずれと乳繰り合うのかよ!」

「そこ!下品な言い方止めてくれない!」

「おお怖い!って何賭けたんだよ、賭けって何だよ?」

「あ、それは・・・・・むぐぐ」


「言わなくていいの、わかった?」

うんうんとうなずいておこう。美人を怒らせたら怖いからな。

しかし、からかいがいのある娘さんだ事。

「クィンシー、からかうのはそのあたりでよしてくれ。今はウェンディはね、シラカワ商会で働いてるんだよ。今日からここで暮らすんだけどさ。」

「おおウェンディよかったな!お前美人だけど性格が駄目駄目だから、貰い手現れないかと思ってたのに、何とシラカワが貰ってくれるとか!相変わらずもの好きだなあ。」


「なんでここで暮らさなくっちゃいけないのよ!っていうか何よ人の性格悪く言っちゃって。男なんて死んじゃえばいいのよ!特にお前!今すぐ死ね!」ゲシゲシ

「いてええ・・脛けるな、地味に痛いんだよ。」

「ふん!」

「なあ、漫才はそこまでにしてくれよ。お前が来るって珍しいな。何かあったのか?」

「おう、ウェンディがいるのはむしろ好都合か?お前にも関係しそうだから聞いとけ!インダルチャンス王国の最近の不安定さは聞いてるよな?」

「ああ、ここにも職を探しに国を脱出した人が何人か来てるしな。」

「ある程度状況は把握してるんだな。それでな、親父から急いでシラカワに連絡してくれって頼まれてな、ついにシュラハト連邦がインダルチャンス王国に宣戦布告、あっという間に王都が陥落してしまったよ。」

「げ!戦争か・・・・じゃあ、これからどんどんこっちに人が流れて来るな・・・・」

「話はそこで終わらない。このままいけばこっちの国境付近まであっという間だ。今親父は対策会議を行ってる。」

「ちょっと何でそこまでの事態になってるの?私がセアリアス帝国へ来るときはそんな気配はなかったわよ!それに・・・・メーネアさまの弟はどうなったのよ?」

「分からん・・・・逃げ延びたとも討たれたとも聞いてないからな。」

「ちょっと何とかしなさいよ!」

「そう言ってもな・・・相手は兵士だろう?まあ先ずは情報収集だな。」


何だかまた厄介ごとに巻き込まれそうだよ。

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