第124話 ええ娘さんやなあ

この女性、年齢は25歳ほどなのかな?ちょっと大人な感じでね、背が高くなければ好感が持てるような感じでね、しかも声が美しい!よく通る声で、聞いてて気持ちがよくなるんだよね。


おっさん思わずその女性の目を真っすぐに見返してしまったよ・・・・


その女性もおっさんをずっと見ててね、なんてきれいな瞳なんだろうとか思っちゃったわけだよ、これが。で、おっさんは


「こればかりは仕方ないよね。おっさん、背が低いのは自覚してるし、貴女の身長もおっさんより背が高いからと言って卑下する事はないよ。」


「ありがとうございます、辺境伯様。」


「シラカワでよいよ?あ、君、名前は?」


あ、そう言えば本当は全員踊る時に〇▼家の誰々って言ってくれてるんだけどね、おっさん全部忘れちゃってたよ。ごめんね、みんな。


だからね、この女性、気になったから思わず聞いてしまったよ。


「ロートレック公爵家の長女、リュシエンヌ・ペトロニーユ・ジュリエンヌ・ロートレックでございますわ、シラカワさま。」


げ、公爵家の人間か。公爵ってこの国ではどんな位置付けなんだ?


やっぱり皇族?


「ロートレック公爵って・・・と言うかおっさん公爵ってどんなのかよく知らないんだよ、簡単に教えてよ、リュシエンヌでいいのかな?」


「はい、シラカワさま、時間がないので恐らく知りたいと思われる事を簡潔に言いますね。私の父と皇帝陛下は祖父が同じでございます。皇位は随分下ではありますけれど。公爵とは、皇帝陛下の一族に連なるものが通常与えられるものでございます。」




この女性、頭もよさそうだな。あ、そろそろ時間だな。ちょっと聞いてみようか?


「リュシエンヌ、ありがとう。大体わかったよ。もう時間がないからズバッと聞くけど、君はただ単におっさんと踊るのがマナーと思って踊ってるの?それともおっさんと親しくなりたいからかい?君の事は正直他の先ほど踊った女性の誰より印象に残ったし、好感を持ってる。これおっさんの正直な気持ち。他の女性にはこんな会話は一切なかった。君はどうなんだ?父親に言われて仕方なく?それとも気に入った?」


流石に少し考えているな。公爵の娘なんだから、おっさんより立場は上。おそらく父親に探って来い、まあ、一度踊るのはマナーだから疑われないだろうとかの思惑もあるんだろうけど。


実際この女性、すこぶる感じがいい。かなり機知に富んでるんだろうし、本当に賢そう。あと、ちょっと意地悪したくなっちゃったんだよね。そうしたら、リュシエンヌはこう切り返してきたよ。


「正直に申しますと、父から探ってくるよう命じられてシラカワさまに接触いたしました。わたくしの直感を申せば、シラカワさまとなら添い遂げたい、ですわ。きっとこの方なら私の背の高さを気にしないで接し下さるだろう、と。それと、ロートレック家にとって、シラカワさまと誼を結ぶのはよい事だろうとわたくしは判断いたしますわ。」


「・・・・おっさんの所に来ると、エルヴィーラとかいるけど大丈夫?」


「何も問題ございませんわ。皇女さまとは個人的に親しくさせてもらっておりますので。」




・・・よい娘さんやなあ。こんな娘さんが結婚できないのは、身長のせいか?


「もう時間だね。また会いたい。後日会ってくれるかい?」


「まあ嬉しいですわ!シラカワさまの本心でございましたら、また近いうちに会う事になるでしょう。わたくし、もっとシラカワさまとお話ししたいですわ。」




軽くハグして別れたよ。


いやーええ娘さんやったなあ・・・・あ、最後ハグした時、”近いうちにシラカワ領へお伺いいたしますわ”


と耳元で言ってくれたよ。あ、いい女の匂いやったなあ。




あ、いかん、もう妻候補いらんとか言っときながら、自ら妻探しと受け止められそうな事しちゃったよ。

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