第61話 スキル
「皆様、エルヴィーラと申します。足手まといにならないよう精いっぱい頑張りますので、どうぞ願いいたします。」
「・・・・なあ、皇帝陛下さんよお?誰だよこの人?」
「テダスケシテクレルヒトダヨ?」
どうしてこうなった。
今日出発という時、出発前に皇帝の前に集まる事に。
そうしたら1人見知らぬ女性が。
「紹介しよう、エルヴィーラだ。お前らに同行してもらう事になった。」
・・・・聞いてないよ?つーかこれ、皇帝の娘だろ、絶対。
しかし・・・身のこなしに全くスキがないな、あの女。如何にも自然って感じだけど。
おい、こっち見てニコって微笑んだよ、この人。
あかん、絶対妻が増えるパターンや。
「だが断る!」
「何でだよ!いいじゃねーか今更嫁が1人ぐらい増えても!」
「そういう問題じゃない!皇帝さんよ、あんたおっさんの事知ってるんだろう?色々と?なのになんで自分の娘押し付けるんだよ?おかしいだろ!」
「仕方ねーだろ!異世界人だろうが何だろうが、こいつがお前の事気に入ってしまったんだから!」
「は?会った事も無いよね?何で気に入っちゃったりしてるの?」
「申し訳ございません。実は侍女に扮して身の回りのお世話をさせていただいておりました。」
・・・・全く気が付かなかった。
「こいつはな、変装スキルもちなんだよ。よくあるじゃねーか、姫が変装して城下町をこっそり行くって。あれだよあれ。」
「いやいや、全く気が付かなかったよ。つーか姿だけじゃなく気配も変えてるでしょ、絶対。」
「流石はしらかわ様。お察しの通りでございます。是非とも私もしらかわ様の妻の一員にお加えくださいまし。」
「ねえ、こんなおっさんの何処が気に入ったの?」
「私は行き遅れでございます。そんな行き遅れを娶ってくださる方がいると聞いて、いてもたってもいられなくなり、こうして侍女に扮してしらかわ様を知る事となり、私、その、ほ、惚れてしまいました。」
「何で惚れるんだよ?」
「人を好きになるのに理由はいりません。きっとこの方となら素晴らしいお子を授かる事ができると本能が直感で感じたのです。」
「本能とかストレートに子作りの事言ってんじゃねーよ。」
「しらかわ様、私では駄目でしょうか?重い女にならないよう努力いたしますので、どうぞ妻の端くれにお置きください。」
「とりあえず保留。」
「ありがとうございます、しらかわさま。急な事ですので申し訳ありませんでした。できれば早めにお情けをいただきたいです。」
めっちゃストレートや。この女。オブラートに言ってるけど、実際は早くエッチしたいって事だろ?
ちなみにこの女、王族なだけあって気品あふれるいい女って感じだな。年齢はやっぱり30前か?怖いからステータスは見ないでおこう。
「なあ、エルヴィーラさんとやら。」
「はい、しらかわさま、何でございましょう?」
「あんたの事は信用していいんだな?」
「お疑いでしたら、しらかわさまの奴隷になってみせます。」
「いや、いいんだけどさ、ぶっちゃけ本音は?つーか本音と言うかそれ、普段からそのしゃべり方?」
ちょっと違和感あるんだよな。完璧丁寧なしゃべり方だけど。
「よろしいのですか?わたくしの本音、聞けば後悔いたしますが?」
「・・・・」
知らないほうが良いってことはあるんだろう。きっとこの瞬間とか。
「もう話はいいか?シラカワ、お前のスキルをどうのこうのはしないが、《スキル》1人ではでは抱えられないぐらい持ってるだろ?帰ったらそのあたりの相談をしたい。」
「やっと本音が出たな、皇帝さんよ。」
「おっと誤解があるようだから言っとくが、俺やこの国はお前の味方だ。ただ、このままだとシラカワ、お前はスキルにおぼれる。溺れなくてもその所為で色々と厄介ごとに巻き込まれる。それに個人で使えるスキルの数は限りがあるんでな。そのあたりを考えて、使わないスキルは売るなり何なりしてはどうかと思ってな。」
「それ本音?」
「嘘は言わない。それにシラカワ、スキルの本質は理解しているか?」
「本質?」
「ああ、ただ持ってれば便利な、今まで関わっていなくてもスキルを所持するだけで、熟練の職人になれたり、一流の武術の達人になれたり。スキルってのはすごい。だが、一度スキルなしで暮らしてみればわかる。スキルってのは何か。知ってるか知らないかわからないが、スキルは使用したり制限をかけたりできるから一度常時発動しているスキルを使用停止してみるといい。」
あの皇帝がえらい語るな。
「アドバイス受けとくよ。この討伐?から帰ったら試してみるよ、色々と。」
「ああ、お前のためにもそうしたほうが良い。もう一度、改めて言うが、俺やこの国はお前の味方だ。勿論、お前が俺に敵対したら敵に回るが。こっちから敵対する事はないとこの場で宣言しておこう。」
おっさん、何に巻き込まれてるんだ?
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