第68話 時の牢獄(3)
背の低い石塀で囲まれた安全地帯。その塀の内側に等間隔でシャギアから手に入れた苗木を植えていく。
数日でそれなりの高さの常緑樹に育つはずである。それまでの間、歩道や水路を整え、建物も完全させていく。
久しぶりに無心でクラフトをしているような気がする。
シャギアに最初頼まれた塔の扉も、ゴギョウ持ち出しの金属まで使い立派な扉に仕立てた。
さらに、オットたちのいた湖のまでの道もさらに整え、そちら側も安全地帯にしてしまった。
途中、石材などが足りなくなってしまったので、ゴギョウは黒霊のうろつく村跡に繰り出し、そこで資材を調達した。
黒霊の相手も慣れたもので、今では少しくらい囲まれても簡単に倒せるようになった。
魔法を使ってくる黒霊は数が少ない上、倒してから復活する場所も決まっているようで、それさえわかっていれば問題はなかった。
すっかり見晴らしが良くなり、塔の安全地帯の周囲はすっかり開けてしまった。
さらにシャギアから交換してもらった「草の根っこ」を植えてみたところ、少し背の高い芝生のような植物が伸びた。程よくふかふかで、歩きやすい。
沼地の拠点にも植えられないか、いくつかストックをしのばせることにした。
遮蔽物のなくなった、霧に濡れる草原をうろつく黒霊が丸見えである。離れた場所から完全に見えているはずなのだが、一定の距離まで近づかないと襲ってくることはない。
まるで行動範囲を設定されたロボットのようだ。
ものは試し、と何体かを倒し、再び出現しそうな場所を背の高い石壁で囲ってみた。
覗き窓をつけて、中の様子をうかがうと壁の中をウロウロと歩き回り、首を傾げるなどの動きをみせる。
自我があるのかないのかいまいちわからないが、とりあえずしばらくこのまま放って置いてみよう。
集落もほとんど新しく作り直され、近くをうろつく黒霊の対処もできた。
シャギアから最初に言われた、塔に扉も設置されている。
とりあえず依頼はこれで完了ではなかろうか。
そう考えて一晩ゆっくりと休み、翌朝ゴギョウはシャギア伝えるべく仮拠点としている小屋から出る。
よく晴れた早朝、青い石の範囲内の霧は随分と晴れたが、その他外側はまだ濃いめの霧に包まれている。
これ以上安全地帯を広げるのもキリがないので、考えても仕方がないのだが。
ぼうっと、霧の奥を眺めているとうっすらと黒霊の影が見える。
(こんな近くまで…?)
確か、安全地帯付近はほぼ全てを石壁で閉じ込めた筈なのだが、一瞬見えた影に不安を感じる。
ゴギョウは装備を手早く整え、ショートソードを抜き身に影の見えた先へとそれを調べに行く。
影のように見える黒霊の動きはやはりおかしく、ゴギョウを誘うように先へ、先へとに進んでいく。
いつもと違う様子に、緊張をしながらゴギョウはそれを追いかけるのだった。
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