第16話 トンネル




 つるはしを振り下ろすと軽い手応えだけで土が丸く抉られる。

 クラフトスキルで土や岩などを削ると3センチから1メートルくらいまでの任意の大きさで削ることができる。

 その形も球体やキューブ型なども自由にできる。削られたものはその場に細かくなって落ち、収納した場合はある程度まとまった大きさのブロックとなる。

 相変わらず便利である。



 アイテムストレージには土や石などが放り込まれていき、あっという間に満タンになる。

 とりあえず土は必要がないのでチェストボックスをクラフトし、石と分けて収納していく。



 ルッカはゴギョウの少し後ろからランタンを掲げ照らしてくれている。 

 既に一時間ほど掘り進めているため辺りは暗く見通しも効かない。しかしこんなところで松明でも焚こうものなら煙でまともに息ができなくなりそうだ。遥か遠くに入り口の明かりが見えるが、夜になれば見えなくなってしまうだろう。



 とりあえずかなりの量の石材が集まったので一度村へ戻る。ランタンの明かりを頼りに来た道を戻るが外の明かりは遥か先だ。



「ゴギョウ殿のその、くらふとすきる?というのは相変わらず気持ち悪いですね」


 ランタンを背にのせたルッカがひどいことを言ってくる。


「きっと他の転移者も同じようなことできると思うよ」


「いえいえ、ゴギョウ殿はなんというか、魂が抜けたような顔で…ですがなんとなく笑っているような、そんな顔なのです!」


「えぇ、なにそれ、怖い…」


 



 ようやく入り口まで戻り、そこにチェストボックスをいくつか作って並べる。土や石をそれぞれに収納していく。

 アイテムストレージは少しの食料、水ブロック、石のつるはしとシャベル、ランタン、予備のチェストボックスなと最低限にする。ショートソードやバックラーなどもとりあえずアイテムストレージに収納した。



 ランタンを持ったルッカと共に再び彫った横穴へ入っていく。横穴は割と大きめに掘っている。形は五角形幅は5メートル、天井の一番高いところは4メートルはある。天井を丸くすればトンネルのようになるが、とりあえずは貫通を目指して掘り進めることにする。

  

 突き当たりまで着くと再び掘り進める。無言である。

 掘りながら(もう少し広い方がいいかな)(やっぱり明かりが欲しいな)など、あれこれ考えながら進んでいく。

 CAWOでは輝石という、暗闇でぼんやりと光る石材があったがこの世界にもあるのだろうか。

 村に戻った時にでも、誰かに聞いてみることにする。やはりあかりは欲しい。

 ランタンがなく、今がやるならばおそらくここは真っ暗闇になるだろう。



「よし、石材もかなり集まったしそろそろ戻るか」


「そうですね!かなり進みましたもんね!」


 ルッカの言う通り入り口はかなり小さな点になっており、戻るだけでもかなり時間がかかりそうだった。

 必要のない土は途中で横穴を掘って、中継地点のようにした場所にチェストボックスを設置し、その中に放り込んでおいた。

 

 ここは沼地と違い、とても歩きやすいのであまり疲れると言うこともなく進むことができる。

 疲れにくいのはレベルが高いおかげだろうか。元々ブラック居酒屋で働いていた時もほとんど毎日12〜16時間は働いていたし、病気もした記憶がなく体力には自信があった。

 しかしさすがに、これだけ掘り続けたので疲労は感じる。


 たっぷり時間をかけトンネルから出る。中に人や動物など入らないよう、念のため土を使って厚めに塞いでおいた。

 明かりが取れる手段があるなら扉を付けたいところだ。


 時間は元の世界でいうと16時くらいだろうか。

 ゴギョウはルッカだけ宿に戻ってもらって、そのまま壁の補修へ向かう。日が暮れる前に少しでも終わらせておこう。



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