いつか、あなたと。

夏戸ユキ

第1話・真知子・気付き。

 こんな私はいつかバチが当たるかもしれない。


 彼は仕事で、私も諸事情があって。

話し合いの場を設けただけだ。

夫の親族の知人から紹介された。それだけだ。


 一番好きになってはいけない人に決まっている。


でも、間違いなく。私はこの人に恋していた。泣きたいくらいに。


引き合わせる運命があるなら。


それに、乗っかるように。滑り込むように、惹かれていった。


もし、彼が手を差し出されたら。わたしは、間違いなく受け止めてしまう。


だから。


さようなら、と彼が見送ってくれて、すこし私が前に進んで。ドラマのワンシーンのように、彼と私の距離に踏み切りがあって。

電車が横断しなければ。何気ない顔で背中を向ける事なんてできなかった。


さようなら。


二度と、わたしはこの人に会えないだろう。


なぜなら、わたしはこの人を好きになってしまったから。

その事を彼に悟られて、困らせたくないから。

わたしの事を好きになってもらいたくなかった。


 何度か、わたしは、彼を思い出すだろう。


 そして、こんな気持ちになるのだろう。


 でも、私は前を向く。私には愛する夫がいるからだ。実際愛していなくても、私の指には、夫の指がつながっているのだ。

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