第27話:天才高校生はトルプスの森にて出会うようです

王都を出て、東に向かい歩いていると前方に森が見えた。森の切れ目が見えないことから、かなり大きな森なのだろう。


 ドラゴンの偵察任務を受注した時に受付嬢はトルプスの森の深部にいると言っていた。この大きな森の深部となると、相当奥の方まで入らないといけないようだ。


 俺は『身体能力強化魔法』を自分に使い、一気に森の中に入っていった。


 木々が風のように後ろに去っていく。そんな速さで俺は走っている。


 しばらくすると、大きな広場があった。そこだけは木が生えておらず、少し不思議な空間であった。

 スピードを落としてゆっくり歩いていると、何か柔らかいものを踏んだ気がした。もう一度踏んでみるとやはり少し弾性がある。ゴムのようだ。


「何だこれ?」


 俺は思わず口に出してしまった。


 目を足元に向けてみると、鱗のようなものがあり、地面に続いていた。


 ま、まさか。ドラゴンじゃないよね? うんドラゴンじゃない。帰ろう。


 そう決心した瞬間、地面が膨れ上がった。


 ズゴゴゴゴゴゴッッッ!!!


しばらく呆然と見ていると舞い上がった土煙が徐々に落ちてきて全貌が見えた。


 ドラゴンですね。受付嬢に聞いていた特徴通りだ。


「あのー、ドラゴンさん。尻尾を踏んでしまった事は謝ります。ですから見逃してはくれないでしょうか?」


 伝わるはずもない言葉をドラゴンにかけるほど、珍しく俺は頭が回っていなかった。


「どうすればいいんだ?」


 色々と考えていると


『お前が異界から来た者か?』


 急に頭の中に声が出て響いてきて俺は少し驚いている。恐らく念話というやつだろう。前のドラゴンが話かけているに違いない。総司が異世界に行ったら試してみたいランキング1位だったやつだ。


 ていうか異界から来たものかって急に聞かれてもどうやって答えればいいんだ?


 まあ、このドラゴンは俺に言ってきている以上、俺の秘密を何らかの方法で知っているに違いない。ここは嘘をつかず言うしかないな。


「ああ、そうだ」


 その答えを待っていたと思わんばかりに返答が早かった。


『やはりか。我は主人である始祖龍様が言われた通りだ。確認してこいと言われ、強大な魔力を持つものを探していたのだ。まさかお前から来るとは思わなかったがな』


 尻尾の事は全然気にしてないらしい。


「ああ。ギルドの依頼でドラゴンの偵察任務を任されていたんだ」


『そうであったか。人族に迷惑なら申し訳なかった。手出しはせんから大丈夫だと伝えてくれ。我は理性ある者だからな』


「本人からそう言ってもらえるとこっちも助かるよ。それで探していたって言ってたけど俺をどうするの?」


『何もせんよ。お前が悪い者だったら我は全力で相手していただろう。だがお前と話しているとなんだか楽しい』


「楽しいならよかった。なら俺とお前はこれから友達だな」


 一度は言ってみたかったこのセリフをいえて俺は嬉しい。


『友達か。いいだろう。これからは友達として仲良くしていこう。と言ってもすぐにここを去るのだが……』


「ならまた会いに来いよ。いつでも歓迎するよ」


 なんかいい奴っぽいし別にいいだろう。


『そうさせてもらおう。近いうちにまた会おう。我が友よ』


 そう言って天高く舞い上がり一瞬にして消えた。


 こうして俺はドラゴン偵察任務を無事終えたのだった。




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暗躍貴族~帝国の暗部には触れない方がいいらしい~


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