第8話:天才高校生は公爵家に招かれるようです
ケンタとリディアは魔の大森林を抜けて、エアフルトに着いてすぐ、リディアと別れた。
大森林から町に着くまでのケンタとリディアの会話はご想像にお任せする。
門を通るときリディアと一緒に並んで入ったので顔パスだった。
兵士と目が合うや否や小声で
「何があったんだ?」
と聞かれたので、
「護衛です。」
と言っておいた。多分大丈夫だろう。
そんなことがあったがケンタは今日の目的のクエストであるホーンラビットの討伐の報告をするべく、冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドの扉を開けるといつもと違う受付嬢がいた。青色の艶々した髪に負けない程の美しい肌を持った美人で青色のおっとりした目をこちらに向けて会釈してきた。そしてケンタは受付に向かいギルドカードを提出。その後、討伐依頼の報告をし、ホーンラビットの討伐証明部位であるツノを渡したあと、話を切り出した。
「実は、ホーンラビットを狩ったあとオークを12体討伐したんだが、それは別でお金はもらえるのか?」
「え、ええっ?オークを討伐した?嘘ですよね?ギルドカードを見たところEランクですよ?Cランクのオークを倒せる訳がありませんよ。」
「いや、本当に倒したぞ。」
「証明できますか?」
「どうやって倒したことを証明すればいいんだ?」
「そうですね。ギルドの裏の解体場で見せていただきたいのですが、オークは持って帰ってきてないんですね。」
受付嬢はそういいガックリ肩を下ろす。
「いや、魔法で収納してるから今すぐにでも取り出すことができるんだが?」
「ええっ、ケンタさん、収納魔法を使えるんですか?」
「ああ、使える。」
「え、でも収納魔法ってオーク12体も入らない気がするんですが…」
「いや、俺は無限に収納できるから問題ない。」
「無限に収納?そんなのこの国の初代国王様しか使えなかった伝説級の魔法ですよ!?」
そういって、受付嬢は驚愕する。
「ま、そんなことで解体場に案内してもらえるとありがたいんだが…」
「え、ええ、わかりました。今日はもう驚き疲れてしまいました。」
そういって案内してもらうが足元がおぼつかないのかふらふら歩いているのをケンタは見逃さなかった。すぐに受付嬢の横に寄り添って腰に手を回し倒れないように支えた。
それを見ていた冒険者たちはといえば、殺気を飛ばしてくるものがいたり、それとは変わって、ヒューヒューと口笛を吹いて、みないそぶりをしているものもいた。
そんなことはつゆしらずケンタは話しかける。
「大丈夫か。俺のせいでこんなことになってしまったのならすまない。」
そういいつつ受付嬢の顔を見ると、リンゴのように顔を紅くしていた。
ケンタはそんな受付嬢を見て熱でもあるのかと思い聞いてみるが、熱はないと言う。
何という鈍感な男なのだろうか?
ケンタはそんな受付嬢の気持ちはつゆ知らず
解体場に向かうのであった。
もう一度言う。
何という鈍感な男なのだろうか?
そうして受付嬢に案内された解体場はかなりの広さだった。ここならオーク12体は余裕で出せるだろう。そんなことを考えていると、解体場の奥から1人の男性がやってきた。
筋骨隆々で力強いイメージを持たせる、そんな人だった。
「よう、何を持ってきたんだ?」
「オークを12体持ってきた。」
「本当か?ジーナ。12体もどこにあるんだ?」
「ええ、無限に収納できる収納魔法を使えるみたいで、そこに収納しているらしいです。」
受付嬢はジーナというらしい。
「ほ、ほんとうか。伝説の魔法を使えるような奴には見えんが…まあいい。ならそうだな、ここに出してくれ。」
そう言われてケンタは示されたところにオーク12体を出した。
「本当にさっきのは聞き間違いではなかったんですね。伝説の魔法をこんなにもあっさりと…底が見えないです。」
「あ、ああ、素晴らしいな。本当にこの言葉一言に尽きるな。」
そんな会話が続いていたが、ケンタは話を切り出す。
「これで俺はオークを倒したと証明できるか?」
「ええ、こんな魔法を使った人がオークを仕留めれないという方がおかしいですよ。疑ってしまい申し訳ありませんでした。」
ジーナはそういい、深々と礼をする。
「わかってもらえたのなら、構わない。このオークはどうするんだ?」
「ああ、このオークは解体して食材にするつもりだ。オークの肉は最高だからな!」
「なら、解体の費用とかはかかるのか?」
「いや、オークが12体も入ってきたんだ。解体費用はなしでいいぜ。な、ジーナ。」
「ええ、それで構いません。」
「わかった。討伐報酬はあるのか?」
「ええ、ありますよ。受付に戻ってからになりますがそれでもよろしいでしょうか?」
「ああ、わかった。なら戻ろう。」
そんなことで、解体場の男性と別れ、受付に戻ってきた。
「ではまずホーンラビットの討伐報酬ですが金貨3枚と銀貨5枚になります。そしてオークの討伐報酬ですが、大金貨1枚と金貨2枚になり、合計で大金貨1枚、金貨5枚、銀貨5枚となります。」
「わかった。ありがとう。」
そういって、お金を受け取り、冒険者ギルドを後にした。
後日ケンタは知らないが受付嬢の間ではケンタの話で持ちきりだった。なんでも登録初日でEランクになったり、急に名前を聞いたり、時には優しく接したりと、性格がいまいちわからないのがあえて話に花を咲かせるのにちょうどいいらしい。
冒険者ギルドを出たケンタは、この町に来たときにもらったオークの串焼きの店に行こうとして南の門に向かった。例の店主にお金を返すためだ。
広場にくるとそこは昨日来たばかりなのにどこか懐かしい雰囲気を醸し出していた。
しばらくキョロキョロしていると店主がいた。店主の店に向かう。
「いらっしゃい。お、昨日のやつじゃないか!ここに来たということは金稼げたんだな?」
「ああ、あんたのおかげで倒れずクエストを成功させることができたよ。感謝する。」
「なんだよ~、かたくるしいなー、はいはい、でオークの串焼き買ってくれるんだよな?」
「もちろんだ。」
「一本銅貨一枚だ。」
そう言われてケンタは銀貨を一枚出す。
「オークの串焼き1本買う。お釣りはいらない。昨日のお礼だ。」
「そうか!ありがとよ、毎度あり!」
そうして渡された後食べたオークの串焼きは
やはり病みつきになる味だった。
その後ケンタはまだ昼だから何かしようと思ったが宿へ戻った。
宿の前には高級そうな装飾が施された馬車が止まっていて、そこからリディアが降りてきてくるや否やケンタに近づいてきて
「ケンタさん!助けていただきありがとうございました。」
「ああ、何回もお礼を聞いたから大丈夫だよ。でもリディアはなんでここにいるんだ?」
「ええ、ケンタさんと別れたあと家に戻って、ことの顛末をお父様に報告したんです。そしたらお父様が屋敷に連れてきなさいと言われ今ここにいるのです。」
「ああ、そんなことか。予定はないから大丈夫だ。でもなんでここが俺の宿だと分かったんだ?」
そう言われてリディアは声のトーンを一段階下げて、
「知りたいですか?」
と言ってきた。
ナニソレコワイ。絶対聞いちゃダメなやつだ。
そう思いケンタはいった。
「あ、いや、大丈夫だ。」
するとリディアは元の声に戻り、
「そうですか。安心しました。それでは馬車に乗ってもらっても宜しいですか?」
そう言われ、ケンタは馬車に乗り込む。
馬車の中は対面する形で椅子があるのだが、リディアはケンタの横に座りたがった。
もうお分かりですね?皆さん。
そうして、御者により馬車が走り出し、しばらくすると、お屋敷に着いた。
馬車を先に降りて、リディアに手を差し伸べて下ろす。
森崎家は上流階級であり、当然男子であるケンタは、他の上流階級の女性をリードしなければならないので、一連の教育は施されていた。
するとそれを見ていた女性が
「キャー、リディアちゃん、もうそんな関係まで行ったの?ねーねー教えてよー!」
「お、お母様!?そ、そんなことないです!
で、でもゆくゆくはそういう関係になったらいいかなって…」
最後の方はケンタには聞こえなかったが、とても顔を紅くしているが嬉しそうにも見える。
そんな表情を見たリディアのお母さんは
「ふふっ、可愛らしいことね。それはさておき、失礼いたしました。エアフルト公爵の第1夫人であるサーシャ・フォン・エアフルトです。リディアの母でございます。ケンタさんのことはリディアからたっぷりと聞いております。その節は本当にありがとうございました。」
「冒険者のケンタです。困っている人がいれば助けるのが普通です。そんな大袈裟なことではありません。」
「いえいえ、本当に感謝しているのよ?
さて話はここまでにして、屋敷の中に入りましょう、旦那が中で今か今かと待っておりますわ。」
そう言ってサーシャはケンタとリディアを連れて屋敷の中に入って行った。
____________________
励みになりますので『レビュー』、『フォロー』、『ハート』、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます