#12 トクヨさんの過去。後編

2024年11月23日公開↓

 雷に打たれた徳世姫は不思議な

周りが殺風景な空間に身をやつしていた。

「ここは…、何処だい?」

「お目覚めになりましたか?徳世姫。」

 すると目の前には徳世姫の時代では

見かけない南蛮人が着るような服を着た

青年が彼女の前に立っていた。

「ここは我々、時空管理局が管轄する

検索ルームです。」

「時空管理局?検索ルーム?

何の話だい、ここは江戸じゃ…」

「あなたが生きていた時代から

1000年以上経っている、あなた方の言葉で言えば

先の世と言えばよろしいでしょうか?」

 それを聞くと急に冷静になった徳世姫は

その男に聞いた。

「あたしは雷に打たれて死んだんじゃ…」

「いえ、そうなる寸前に私たち時空管理局が

あなたを眠らせてここへ連れてきたのです。」

「…どうしてあたしがココへ?」

「あなたにこの部屋の【頭脳】になって

いただきたい。」

 男は徳世姫にスマートフォン略してスマホを

手渡した。

「これに私がなれと?」

「流石は江戸の才女、ご理解が早い。」

 徳世姫は少し思案し言った。

「分かった、あたしはなるよ、ここの頭脳に。」

「ではそのスマホをあちらの装置に置き、

その隣の台へ横に寝てください。」

 言われたとおりにスマホを装置に置き

徳世姫はその隣で横になった。

「数分後にはあなたはこちらになってます。

覚悟は出来てますね。」

「出来てるよ、さっ、さっさとやりな。」

「はい、申し遅れましたが私は

時空管理局局長代理の佐川と言います。」

 そういいながら佐川は装置のレバーを引いた。

そして数分後、スマホの隣で横になっていた

徳世姫の体はいつの間にか消えていた。

 こうして徳世姫は人間の体からスマホという

電子生命体【トクヨ】となったのだった。--

2024年11月24日公開↓

 トクヨは自身のこれまでの出生を俊輔に話した。

 少しばかり驚いた様子だがすぐに俊輔は受け入れた。

 やはりこの男は変わってると思った、勿論いい意味で。

「驚きですね、そんな直ぐに人じゃない別の存在に

なろうなんて思えるのは。」

「『アタシとしては自業自得と捉えているよ。

父上が必死になってアタシを呼び止めたってのに

聞こうともしなかったんだからさ。』」

 トクヨも少しは寂しい声色になっていたが

俊輔はフォローをすかさず入れた。

「誰だって反抗期はありますよ。僕も若気の至りで

そんなことは一つも二つもありましたし。」

「『俊輔が反抗期?全然想像出来ないね。』」

「そうですか?僕にだって親に反抗したくなった

時はありますよ、まぁ、1時間で辞めましたけど。」

「『ハハハ、やっぱりだね。』」

 明朗快活な笑い声をトクヨは俊輔の家でした。ーー

2024年11月30日公開↓

 宇垣陽子は恋をした。相手は部下、それも年下の

オタク気質な男子の工藤俊輔刑事だった。--

 実家に帰ったある日のことだった、母から宇垣に

お見合いの、縁談の相手の男性の写真を見せられた。

「何?」

「何?じゃないわよ、あなたもういくつ?」

「来年で25歳。」

「じゃあ結婚適齢期よね?」

「そうだけど…」

 宇垣は言えなかった、自分には好きな人がいるというのを。

しかもそれが自分の職場の部下だというのを。

「一人でもいいから見ておきなさい。」

 母にそう言われた宇垣は渋々写真の中からランダムで

選んでそれを見ずに母に見せた。

「この人とか…」

「えっ、あなたちゃんと選んだのって

すごくいい人選んだじゃない、あなた。」

「はっ?」

 ちゃんとお見合い相手の顔を見るとそれは自分の部下の…

「小野寺…君?あっ、ちょっと母さん。」

 母を止めようとしたが時すでに遅しだった。

「はいはいそういう事なので娘とご子息のお見合いを

開きたいと思うのでよろしくお願いします。はい、

では失礼します。」

 宇垣は最悪の選択をしてしまったのだった。--

2024年12月5日公開↓

 県警に出勤後、宇垣は小野寺のデスクを

凝視していた。その様子を見ていた俊輔に

トクヨは小声で話しかけてきた。

「『あれは小野寺の事が気になって

しょうがない目をしてるね。』」

 そう言われると俊輔も同じく小声で聞き返した。

「どうして分かったんですか?」

「『サーモグラフィーって知らないかい?』」

「人の体温を測るシステムですよね」

「『そう、あの女の体温、高熱が出る一歩手前の

体温がしてる。』」

 トクヨの口調はどこか楽しげだった。

「なんでそんな楽しそうなんですか?」

「『えっ、いい気味じゃないかい?

アタシの俊輔に手を出そうとしたんだから…ククク。』」

 すると宇垣は俊輔の存在に気付き声を掛けた。

「ちょっと、工藤君。誰と話してるの?」

「あっ、すいません。単なる独り言です。」

「…そう、分かった。」

 俊輔にしてみれば彼女、宇垣は

自分を異性として見てるわけがないと

内心そう思っていた。ーー

2024年12月15日公開↓

 小野寺は父親の小野寺太蔵(たいぞう)から

お見合い写真を渡された。

「何ですか?お父さん。」

「お見合いだ。私の財閥を継がない代わりに

見合いは受けると警察官になる前に言ったよな。」

 確かに言ったと思い出した小野寺は

お見合いをする相手の写真を見た、何とそれは…

自分の捜査一課での上司である宇垣陽子だった。

「お父さん、この人…」

「あぁ、公務員として役所に勤務している女性だそうだ。

とても綺麗でいい人そうじゃないか。

この際、お前もその人と身を固めたらどうだ。」

 小野寺は言えなかった、その女性が自分の

警察官としての上司だという事を。ーー



 

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サーチワン・アプリ〜刑事の相棒はスマホの通話アプリ。 林崎知久 @commy

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