エルフの村 寄附金で財政再建

横浜あおば

エルフの村 『ふるさと納税』で税収増 思わぬ経済効果も

 数年前までは財政破綻寸前だった王国北部にあるエルフの村が、異世界のある制度を導入し見事に復活した。それは日本という国の『ふるさと納税制度』だ。その制度とは一体何なのか。


 エルフの村は近年、社会保障費の増加に悩まされていた。異世界からの技術移転により、元々長寿であったエルフの平均寿命がさらに延びたことが大きな理由だ。しかし、目立った産業も無く低所得者の多いこの村でこれ以上の税負担を強いることは不可能だった。そこで村長であるニクロゲルビン氏が目をつけたのが異世界にある日本という国の制度、『ふるさと納税』だった。

 この制度は国民一人ひとりが好きな自治体(領地に相当するもの)に寄附することが出来るというもので、その額に応じて税の控除が受けられる。さらに、自治体によっては肉や米といったお礼の品があり現地での人気は高い。

 エルフの村はこの制度に倣って、村の特産物をお礼の品として寄附を募った。するとそれは瞬く間に王国全土で噂となり、一ヶ月で寄附金総額は村の年間税収を超えた。これによりエルフの村の財政状況は急速に回復、見事に財政再建に成功した。


 だが、エルフの村版『ふるさと納税』がもたらした効果はそれだけではなかった。お礼の品の特産物を求め、多くの観光客が村に訪れるようになったのだ。今までエルフの村を訪れる観光客は年間数百人程度だった。それが『ふるさと納税』開始後は二千人に迫る勢いになっている。特産物の売り上げも毎年伸びていて、村人の所得水準も大きく上昇した。これにより医療費補助や保育無償化といった行政サービスの拡充が行われ、村は今までにないほど賑わいをみせている。


 今ではすっかり観光地となったエルフの村。村長のニクロゲルビン氏に話を伺うと、「多くの人は遊びに来る場所というイメージを持っていると思うが、この村の良さは住んでこそ分かる。次は移住者の増加に取り組みたい」と野心的な笑みを浮かべた。次はどんな奇策を打ち出してくるのか。エルフの村の快進撃はまだまだ続きそうだ。

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