吸血鬼さんは日常を生きたい。

水定ゆう

第1話 吸血鬼と魔法少女

1ー1 出会い

 その日私は魔法少女に出会った。


 四月九日。

 まだ入学式が終わって間もなく、学校や通学路には満開の桜が咲き誇る、そんな季節。

 私は引っ越してきたばかりのそんな街中を歩いていた。

 何故かって?決まっている。スーパーに寄って、今日の夕飯の材料を確保してきたからだ。私は一人暮らしだ。もう長い間一人で生活をし、そして今現在この町『神奈市』にある祖母の遺産である洋館に住んでいる。

 そんな私は今や高校生としてこの町に溶け込み、そして普通で平凡な日常を送れると思っていた。


 「うーん。タイムセールで角切りの牛肉が安く手に入ったな。よし、今夜はカレーにでもしようか」


 と、呑気に口に出して歩いていた。

 私の住んでいる家は住宅地から少しだけ離れたところにある。

 近くには鬱蒼うっそうとした森があり、夜になるときみが悪いという事であまり人が立ち入らない。そんな場所だからか、広い土地なのに税金があまりかからない。何か不思議なパワーでも働いているかのようだ。


 そんな事を考えていた。

 そして商店街を抜けて、私は住宅街に入る。と、その瞬間身体をつんざくような不気味な気配を感じた……気がした。

 そんな不気味な気配は瞬く間に立ち去り、消えてしまう。それが私には痛感出来た。そして少し気になっていたが、私は気のせいだと流して家に帰ることにした。

 その時だった。


 「う、うー」


 何処からか、途絶えそうなか細い声が聞こえてきた。

 これは幻聴でない、肉声だ。と、気づいた時には私はその方向に身体を向け、四月にしては異様に暗い世界を私は滲んだようなを瞬かせた。

 その肉眼は暗闇の中を捉え、そして見つけた。と、言うか思ったよりも近かった。


 (電柱にもたれかかるように立っている?酔っ払い……いや、あの制服はうちと同じじゃないのか?)


 驚きを見せつつも、非常に冷静だったのは怪しい人ではなかったからだ。と、言っても話したこともない同じ学校の生徒だ。結局は他人だ。

 黒ではなく、若干藍色がかったその制服は間違いなく私も通う『神奈市立桜陽高校』な物だろう。しかもまだ真新しい事を考え、私と同じで今年入学した一年生だ。



 「しかし、また何でこんなところに……しっかりしろー」

 「う、うー」


 声をかけてみるが、それしか返ってこない。

 「如何しようか?誰かに、いや病院に運ぶか?」と悩んでいると、その少女は一言。


 「お腹……」

 「お腹?」

 

 私は唐突なその言葉を聞いて、頭にはてなマークを浮かべた。

 そしてその少女の放った一言はこうだ。


 「お腹、空いた」


 とても呆れてしまった。

 これが私、ルーナ・アレキサンドライトと彼女、魔法少女大和蒼やまとあおとの出会いであった。


 

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