第8話:主夫は知った、これは外堀を埋めれた者の気持ちだと

母さんは2年ぶりでまだ完全に動ける訳では無いが、歩いている姿を見て僕は嬉しさと安心した事で涙を流した。

僕はリオニーさんへ感謝の気持ちを伝えた。


「リオニーさん、ありがとうございます、何年掛けてもお金は絶対に払います」


リオニーさんはふっと口角を少し上げて答えた


「気にするな、未来の夫の母君が病気なら私の母親でもあって、助けたくなるのは自然な事だ、良くなって良かったな、リヒティ」


僕はその言葉を聞き凍った、公開プロポーズは触れずにスルーをしていた。

そしてスルーする事で危機を脱したと思っていた、いや思いこんでいた。

結果として、僕は危機を脱してなかった、リオニーさんは、わざと触れなかったのだ、あの公開プロポーズは別の目的が有ったのだと…

まずは冒険者に告知し認知させる、次に僕の家族を攻め、周囲は僕が彼女の結婚相手と言う意識を作ったのだ。

恋愛小説にある、「外堀埋める」と言う策だ。


僕はスルーをした、これは触れたら負けだと…

まだだ、まだ終わっていない!母さんは落ちていない、きっと母さんが激しく反抗してくれると僕は淡い期待を抱いた、しかし…母は既に落とされていた


「リヒティも男になったのね…母さんは嬉しいわ、いつも読書、家事、森に探索だけで、女っ気が無くて、いつも心配してたの、でも杞憂だったみたいね」


母さん、待って、待って、息子はまだ何も言ってないよ?


「こんな素敵な女性が貴方の事を思ってくれるなんて幸せな事よ?」


「ふふふ、母君、ありがとうございます」


そうニヤつくリオニーさん、凄くムカつく…でも、絶対に勝てない…この人は…恐ろしい人だ…歯向かったらどうなるか…想像したくない…


「して、母君、私は彼と結婚をして王都を拠点としていて、母君も一緒に来てはどうでしょう?一人では何かと不便と思いますが」


母さんはニッコリ笑う


「何を言ってるのー!新婚の邪魔なんてしたくないわ~、それにリオニーさんなら息子を任せても大丈夫だし、何も心配してないわ~!」

「誰かが家に置いてくれたお金だけで1年は遊んで暮らせるし、リハビリしながら働いて楽しむわ~」


ああ…もうダメだ…母さんは篭絡した…

しかも何ですか、その怪しい金は…どう考えてもリオニーさんからでしょうが…

僕には残された逃げ道はもうない…


「と言う事だ、リヒティ、私と王都の家で幸せに暮らそう」


「あの…僕まだ何も言ってないのですが…」


二人は僕の言葉を無視し、何やら二人だけで盛り上がっている。


この瞬間、僕の結婚相手が決まり、王都へ移住、彼女と共に生活する事が、確定となった。

僕は思った、主夫ってもしかして不幸なんじゃ…と

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