誰がヤンデレなのかわからない件について
@Okuse
第1話 日常
「ピヨ、ピヨ、ピ」
可愛いさえずりのアラームが三回鳴り終わる前に止める。
そして、すでにそれなりに覚醒した状態で枕元のスマートフォンを確認する。
次にメール着信の通知が999とカンストしていることを認識する。それらをそのままゴミ箱に転送し、削除する。
これが俺の起床時のルーティーンだった。このすでに洗練されつつある習慣が始まったのは一週間ほど前だ。
「なんだこのメール、、、」
朝起きると知らないメールアドレスから、大量のメールが届いていた。
変な業者からの支離滅裂で奇妙な日本語のメールであればよかった。しかしそれは叶わなかった。
「今、私もベットだよ」とか「今日は早く寝るんだね」とか明らかに俺という個人の私的なふるまいに関する内容であった。
隠しカメラで俺の生活を把握しているようなメールに対して、素直に激しく恐怖した。
慌てて自室のものをひっくり返して、カメラや盗聴器を探したが、全くらしいものは見つからなかった。
家族のプライベートまでもが侵されているのではないかと不安になった。特に中学二年生の妹のプライベートが他人の目に晒されていることは許せなかった。しかし百件ほど奇妙なメールに目を通すとその心配はなくなった。
どうやらプライベートが侵されているのは俺一人だけのようだった。なぜならメールの内容の傾向は”メチャクチャ重い女の子がとても大切な恋人に送るようなメール”だったからだ。差出人の焦点は完全に俺に向けられていた。
そしてその日登校すると下駄箱に弁当箱と手紙が降臨なさっていた。今朝のこともあったのでとても警戒しつつ手紙を開封した。
すると、犯行声明文のような新聞の文字が切り貼りされた歪なものが目に飛び込んできた。
「うぉ」
声に出してドン引きした。そしてその内容は、
「すきです たべてください」
というシンプルで上質な恐怖を与えるものだった。これら愛のある物品を捨てたりして変に相手の気を逆立てるのも怖いので、俺はスルーという最強のテクニックを使用していくことにした。
鈍感主人公はそのハーレムの形成という崇高な目標に際して問題になる女性の独占欲から派生する様々な面倒事を認識しないことによって乗り越える。認識しなければ、それは存在しないのだ。
今俺がされているようなレベルのストーカー行為では警察に言っても意味がないし、もちろん家族や友人に言っても心配されるだけで、実際の問題解決には繋がらない。
だからこそ、圧倒的なスルーによって問題を認識しない事でこのストーカー行為を最初から無かったことにするのだ。
それが一番だ。だからメールをブロックしたりもしないし、下駄箱に何が入っていても見てないし触らない。
もうそんな生活をしていて一週間経つ。
「お兄ちゃん、朝ごはんできたよー」
「おう!」
いつも通り妹に呼ばれ部屋を出た。
何も変わらない1日が始まりそうだ。
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