モグラ〜世界最強の種族〜

神田 善太

誰が為の禁忌

熱く、眩しい。

人々の頭上で、光り輝く。

それは太陽。

否、太陽よりも眩しいもの。

見たものの水晶体は焼け、人々は瞳を覆う。

神々しいその光の熱さは、鉄をも焼く。


しかし、それは禁忌に触れていた。

人間の犯した禁忌。一度や二度ではない。

生身で戦い合えば、間違いなく負ける弱き人間。

他の生物に影響を与え、滅ぼしてきた。

その罪は重い。償いをすべきである。


愚かな彼らはある選択をした。


「後戻りはできない。更なる進化を遂げるのみ」


彼らが求める次なるものは、何か。

人知を超えた神にも等しい力。

魔法…魔術…異能…神通力…念力…呪術…妖術…幻術

人々は神に願った。

宗教。それは発達しきった文明において不必要とされてしまったもの。

再び勢いの着いた宗教。神官の権威は向上した。

崇められし神官は悪魔のようであった。

民を操る神官と信仰する民の姿は、それはそれは、酷く醜いものだった。


しかし、神は人間以上に自由だった。

人々の姿に心踊らされてしまったのだ。

神は対価を望んだ。


命。人々の心に灯る一本のロウソクの火。


人々は困惑した。どれほどの量が必要なのか。

少なくとも人の心は持ち合わせていた。

無意識下の破壊行為の上には、民のためという意識があった為だ。


しかし、彼らはもう壊れていた。

命と進化。それらを秤にかける。

自ずと結論は出た。

民に告げなかった。


やがてそれに浮かぶ禁忌の光。

逃げ惑う民。

そして気付いた。自分たちの身も危ないことに。

全人類総出の逃避行。目的地は様々であった。

海、山、森、空、宇宙、亜空間、そして地下。

逃げ延びた彼らは、場所に応じた力を手に入れた。

もう人間とは言えない。


しかし、彼らは誓った。

裏切りの神に必ず復讐することを。

その野望は強すぎたゆえに、自分たちでは叶わずとも、子孫にその呪いは引き継がれていった。

人々が記憶を失おうとも、それは呪いとして、永遠に引き継がれていくのだ。

野望が果たされるその日まで。

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