12話 お姫様の戴冠式
マリーは元いたギルドに帰ってきた。アルストロメリアが居ると思われた席は空席であった。
「入れ違いになったのかな?」
アマリリスを少し知れたマリーの顔色はとても良かった。それは写し絵とも呼べるアマリリスを知れたことで自分の何かがほぐれた感じであった。
そこに一人の少年が話しかけてきた。
「ソロの方ですか?よければ僕達のパーティに入りませんか?」
パーティ勧誘であった。横に目をやると、女の子の魔法使い、女の子の剣士、そして幼女……て、その幼女はアルストロメリアであった。マリーはその幼女を引き抜く。
「て、お前かぁぁぁぁぁい!!!あんた、何やってんのよ!」
「オレの美貌に勘づいた奴がおってな。そのハーレムに加わろうと思っておったのだ。ククク」
およそ幼女がなし得ないであろう不気味な笑みを浮べるのであった。
「して、貴様の方は終わったようだな」
アルストロメリアは舐め回すようにマリーを見る。
「ええ、一応ね……」
アルストロメリアが言う。
「では、オレたちは帰るとしよう。達者でな、どこかの世界の主人公よ」
少年のパーティと別れるとアルストロメリアは《想いの力》を使う。
「《世界つむぎ》」
彼女の中で発せられた淡い綺麗な光が、水溜まりに落ちた水滴のように波紋をつくり拡がっていく、現実が波打つ。波打ったその現実が
「ここは?」
そこは荒廃した世界。文明が滅んだ世界であった。鬱蒼とした密林があり、人の手が加わってない豊かな自然で溢れていた。
「どういうこと!何かあったの!?」
「まあ、慌てなさんな」
そう言うとアルストロメリアは先へ進む。王宮であっただろう石の残骸が見え始める。そして、その先には玉座に座ったアマリリスがいたのだ。しかし、それは人と形容しがたい代物で、体は痩せ細り干からびていた。
「大丈夫!?アマリリス!」
マリーが駆け寄るとその目は曇っていて何も見えてないであろうと思えた。
「…あら?どこかで…あったかしら?…懐かしいような声……」
その掠れかすれに発せられる言葉からには、気高き麗しかった頃と到底くらべられなかった。
そこに、一匹のカエルが現れた。
「……ハルヴェイユ?」
そのカエルは三人を見ると全て理解したらしい。
「死に目だ。看取ってやれ」
アルストロメリアが言う。
「死ぬって?不死なんでしょ?」
「諦めたのだその女は。完全な世界を創ることを放棄した。ゆえに罰が与えられた。その身は朽ちてなおも生き続ける不死の呪いとなる」
「もっともオレは使命すら忘れていたがな」
アルストロメリアが使命を思い出したのはハルヴェイユと会ってからであった。
「覚えておいでですか?アマリリス様。ハルヴェイユです」
「…あら?…ハル…ヴェイ…ユ。来て…くれたの?私、だめ…だった…みた……い」
「ワタクシの力で転生させて差し上げましょう」
そう言うとハルヴェイユは黄金の球体を取り出した。マリーはその光を知っていた。《想いの力》だ。
「転…生…?」
「そうです。生まれ変わるのです。そして新しい体を手に入れるのです」
「あは……は、嬉し…いな。私、子供……産めなかったから…その子の教育……どうしよう…かな?……なんて…ふふ…可笑しい…でしょう?」
「では、その子にはワタクシが教育を施しましょう」
「それは……安心ね…」
マリーが言う。
「私が継ぐ。私があなたを継ぐわ!アマリリス!あなたの言う楽しくて喜んで、みんなが笑っているような世界は私が創ってみせる!これが私の想いよ!」
アマリリスにはもう聞こえていなかった。
そのとき、黄金の球体が光輝きはじめた。マリーの想いに引き寄せされた黄金の球体は新たは力となる。そして、光り輝く黄金の球体は変化し光り輝く黄金のティアラになったのである。
光り輝く黄金のティアラ――
マリーはその前に跪くと淡い光の塊がアマリリスの幻影をつくり、マリーにそれを冠せた。そして、光り輝く黄金のティアラを冠ったマリーは、全ての記憶を思い出した――。
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