第41話:本来の目的を果たそう
ドミウムとスマトーの一行が去り、俺たちとマスロバ氏族、パンシーラ氏族の面々が蛇頭窟の前に集まった。
「ここで何をなさるのですか?」
「それはもちろん最初の目的を果たすのさ。元々この騒動は水不足から起きたことだろ?」
俺はそう言って
今はもうウズナがいなくなってしまったからその名称も妥当ではないのかもしれない。
「ウズナがかなり飲んだとはいえこの山の上にある湖にはまだまだたくさん水が残っている。それをありがたく利用させてもらおうってわけ」
俺はそう言って山肌に手をかけた。
ウズナの代理者となったのなら多少自由にさせてもらっても構わないはずだ。
俺は目をつぶると山全体に意識を移した。
今までとは比べ物にならないくらい容易く
これもウズナに力を分けてもらった効果なのだろうか?
少なくとも今のままで山が崩れることはないみたいだ。
俺は山の地中に小さな水路を作り上げた。
水の浸透で山が崩れないように硬い岩盤の隙間を水が流れるようにする。
やがてパンシーラ川に至る水源から勢いよく水が迸り出てきた。
「「「「おお~」」」」
見ていたみんなから歓声が沸き上がる。
「まだまだ、驚くのはこれからだぞ」
俺は地面に手を当てて地形を操作した。
地面に亀裂が走り、大地を穿っていく。
その亀裂はエルフ族の集落へと向かっていった。
そしてその亀裂の中にパンシーラ川の水が流れ込んでいく。
「こっちの川はマスロバ氏族の町のすぐ横を通ったあとで元の川に合流するようにしてある。これでどっちの氏族も水に困らなくなるはずだよ」
「「「「「「うおおおおおおおっ」」」」」」
今度こそ地鳴りのような歓声が巻き起こった。
「これで、これで水不足も解消だ!」
「こんな日が来るなんて!」
「もう井戸を掘ったり一日かけて水を運ぶ必要もないんだ!」
エルフ族も獣人族もみんな部族の垣根を越えて抱き合い喜んでいる。
「ありがとうございます、なんとお礼を申してよいのやら」
「この感謝、どのような形にしても尽くしきれませぬ」
ルスドールとリオイが俺の前に跪いた。
「いいよ、元々こっちが言い出して始めた話なんだし。お礼を言われるようなことじゃないからさ」
「それはできねえ!」
ローベンが転がるように俺の前に飛び出した。
「あなたは俺たちパンシーラ氏族の救世主だ!この恩はどうあっても返させてくれ!いや、返させてください!」
「それは我らマスロバ氏族も同じ」
バルドも前に進み出て俺の前に膝をついた。
「水源の確保は我らが氏族の悲願でした。それを実現していただいたこと、どれだけ感謝してもしきれませぬ。そして今までの非礼を謝罪いたします。許していただけるとは思っていませぬ。ただどうか我ら氏族の感謝の意をあなたに示す機会を与えてはいただけぬでしょうか」
周囲を見合わすと両氏族のみんなが膝をついていた。
参ったな、今日だけで何回土下座を見てきたんだ?
「わかったよ。謝罪も感謝も受け入れる。だから顔をあげてくれ。ともかくこれはみんなのためというよりも俺たちの目的を果たすためだったんだ。だから本来の目的を果たさせてくれないか」
「目的…と言いますと非石のことですかな」
ルスドールが顔を上げた。
「そう、元々俺たちは亜晶、そっちだと非石と呼んでるけどそれを探すのが目的だったんだ。そっちの問題が片付いたから次はそれを探すのを手伝ってくれないか?」
「それはもちろん、我が氏族をあげて協力いたしましょう」
「俺たちもだ!」
バルドとローベンが勢いよく頷いた。
「しかしまずはその非石がどういうものであるかを知らぬことには探しようが…」
「ああ、それならこんな感じの石なんだ」
俺は河原から亜晶を拾い上げてみんなに見せた。
…
……
待て。
なんで河原に亜晶が落ちてるんだ?
俺は辺りを見渡して思わず目を疑った。
いや、これは目の錯覚なんかじゃない。
俺たちの足下には無数の亜晶が散らばっていた。
その数は数十、数百ではきかない、まるで星屑のように河原を埋め尽くして煌めいている。
「…こ、これは…本当のことなのか?」
リンネ姫もあまりのことに言葉を失っている。
信じられないと言いながら地面に散らばる亜晶を拾い上げると呪文を唱えた。
その手にもった亜晶が淡く虹色の光を放ち、驚愕するリンネ姫の顔を照らす。
「ほ、本当に亜晶だ…しかもこんな高純度なものは見たことがない!」
「…まさか!」
俺は改めて
やっぱり…思った通りだ。
「ウズナ、
「「「な、なんだって~っ!?」」」
俺の言葉に全員が驚きの声をあげた。
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