第30話:フェバグ鉱山地下
「みんな諦めるんじゃないよ!きっと助けは来る!それまで頑張るんだ!」
坑道にテーナの声が木霊した。
「でも姉御、これじゃあ…」
閉じ込められた助手の一人が情けない声をあげる。
光の魔石で照らされたその先は崩落した土砂で完全に埋められていた。
テーナにも崩落がどこまで続いているのかまったくわからない。
「情けないこと言うんじゃないよ!とにかく手を動かすんだ」
テーナは怒鳴りながらも崩れた土砂を手持ちの道具で掘り続けた。
「姉御、何か聞こえやしませんか?」
しばらくした時、助手が掘っていた手を止めて耳をそばだてた。
「馬鹿言ってないで掘り続けな!」
「いや、でも確かに」
「そんなわけ……」
その時テーナの耳にも何かが聞こえてきた。
なにか、人の叫び声のようなものが近づいてくる。
それも頭上から?
「ぅゎぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」
叫び声と共に背後に何かが降ってきた。
テーナたちはギョッとして振り返りながら持っていたスコップやつるはしを身構えた。
「テーナ!」
真っ先に立ち上がったその影は……エルニックだった。
「父さん!?」
「テーナ!おおテーナ!生きていたかっ!!」
エルニックは涙声になりながらテーナを抱きしめた。
「ど、どうやってここに?」
テーナには救出が来たという喜びよりもどうやってこんなに早く辿り着いたのかという驚きの方が大きかった。
「ああ、それはそこにいるテツヤ、いやテツヤさんがここまで連れてきてくれたんだ!」
「ど、どうもこんにちは。テツヤと言います」
土埃の中からテツヤが立ち上がって手をあげた。
◆
「それじゃあ、あの人は土属性使いで私たちが閉じ込められた場所がわかったと?」
「ああ、俺もおったまげたよ。なんせこの人はいきなり見つけたと言って地面に穴を開けるや否やそのまま真っ直ぐテーナのところまで辿り着いちまったんだからな!」
エルニックが興奮冷めやらぬ様子でまくし立てた。
「テツヤさん、あなたは娘の命の恩人だ!この恩は決して忘れねえ!父なる大地の巨人に誓う!」
そう叫んで俺の手を握り締めてきた。
痛ええええええええ!!
大きさが五倍くらいあるから握りつぶされそうだ。
「あ、わ、
エルリックが謝りながら手を放した。
「でもさっき言ったのは本当だ。テツヤさん、今までの態度を許してくれ。この通りだ!」
エルリックがそう言いながら膝を折り、両手を地面につけた。
「いいよ、そんなの。謝る必要なんかないって。あんたたちの気持ちもわかるからさ」
俺は慌てて両手を振った。
「しかしそれじゃあ俺の気が収まらねえ。どうか何なりと言ってくれ。俺にできることがあれば何でもすると誓うぞ!」
「いや、俺たちは鉄が欲しくて来ただけなんだ。鉄を売ってくれるならそれでいいよ」
「それなんだが…」
俺の言葉に突然エルニックの言葉が煮え切らなくなった。
「あ、いや、売りたくないわけじゃねえんだ。テツヤさんにだったら喜んで幾らでも売るつもりだよ。なんならプレゼントしたっていいくれえだ」
だがそこまで言ってエルリックは肩を落とした。
「でも肝心の鉄がここ最近全く採れねえんだ」
「鉄が採れない?」
「ええ、そうなんです」
テーナが言葉を引き継いだ。
「ここ数年ここは鉄の産出量が減ってしまって最近では全く採れなくなってしまったうえに鉄の価格まで下がっちゃったからこのままだとここは操業できなくなってしまいます」
それはまずいぞ。
ここで鉄が手に入らないと俺たちも困る。
「でもこの鉱山は鉄鉱石がまだまだ豊富みたいだけど?」
試しに地面に手を当ててスキャンしてみたがこの鉱山はかなり良質の鉄鉱石が
豊富に埋蔵されている。
なんで鉄が採れないなんて?
「鉄鉱石はあります。でも鉄は採れないんです」
テーナが話を続けた。
「私たちは鉄を掘るのではなく
「この土地に昔から住む魔法生物で彼らは外皮が鉄でできているんです。私たちは
そういう鉄の採取方法があるのか、地球とは全然違うんだな。
「しかしここ数年は
「それならば人力で掘ればいいのではないか?」
「それはできません!」
アマーリアが不思議そうに尋ねるとテーナが強く拒絶した。
「私たちは
「そ、そんな大げさな…」
「いや、そうとも限らないぞ」
俺は壁に手を当てた。
「ここの地中はその
しかも掘った穴は
その結果地中が適度に中空構造となることで地下全体の強度が増してすらいる。
おそらくこの土地は他の場所に比べて地震や陥没に強いはずだ。
逆に言うとその蟲がいなくなってしまうとこの構造はやがて崩れてしまうだろう。
言い換えるなら
しかし本当にこんなことがその蟲に可能なのか?
「実際に見てもらうのが一番でしょうね。テツヤさん、申し訳ありませんが来た方法でこの落盤を取り除くことはできますか?」
「ああ、お安い御用だよ」
テーナの頼みで俺は落盤した土に通り道を開けた。
「す、凄い。本当にこんなことが可能なんですね…」
テーナが驚きの声をあげた。
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