第28話:スキルツリー
「そう言えばさっき店の人が凍結のスキルを持ってると言ってたよな。あれってどういう意味なんだ?」
「言葉通りの意味だよ。さきほどのコグランというパティシエは水属性使いで状態変化へスキルを振ったのだろう」
アマーリアが答えた。
「全ての属性には幾つかの傾向があり、自分のスキルツリーをどのように育てるかで使えるスキルも変わってくのだ」
「水属性の場合は大きく操作、変化、探知のスキルがあり、それぞれが更に細かく分かれてスキルツリーを形成している」
アマーリアが水の入ったグラスを手に持った。
やがてグラスの水が次第に形を変え、馬の形となってグラスの中を走りだした。
「凄い!」
キリが息を呑んだ。
俺も同じだ。
こんなに複雑なことができるなんて。
「私の場合は操作にスキルを振っている。変化や探知も使えるけど最も得意なのは操作だね」
「属性を使えると言ってもほとんどの者は一つのスキルしか使えないのだ。S級魔法戦士のアマーリア様だからこそできることだぞ」
何故かソラノが得意そうにしている。
「じゃあ風属性のスキルはなんなんだ?」
「風属性も大きくわけて操作、変化、探知だな。私も得意なのは操作だ。前に使った
そう言ってソラノは膝の上にかけていたナプキンを宙に投げた。
ナプキンは空中で鳥の形に姿を変え、俺たちの上空をひらひらと舞っている。
こっちも大したスキルだ。
「二人とも凄いもんだな。土属性のことは何か知らないか?どんなスキルがあるんだ?」
俺の言葉に二人は顔を見合わせ、やがてため息をついた。
「すまん、実は土属性は使える者が少なすぎてどういうスキルがあるのか分かってないんだ」
アマーリアが申し訳なさそうに頬をかいた。
「水や風と同じように操作、変化、探知はあると思うのだけど、なにせ謎の多い属性でね。一説によると他の属性よりもスキルツリーが大きいとは言われているね」
「逆に聞くが、テツヤはどんなことができるのだ?それによってある程度推測できると思うぞ」
ソラノの問いに俺は今までやってきた事を思いだしてみた。
「そうだなあ…まず土や鉱物を自由に扱うことができるな。鉄でもなんでも自分の好きな形に変えられる。それから土の中から特定の鉱物を取り出すなんてことも可能だ。それに地中にどういうものがあるのかもだいたいわかるな。あと生き物も基本は鉱物からできてるから傷を治す事もできる…」
そこまで言ってアマーリアとソラノが驚きの表情で俺を見ていることに気づいた。
「どうかしたのか?」
「どうって……貴様、本当にそれを全てできるのか?」
ソラノが驚いたように尋ねてきた。
「ああ、今までに全部使ったことがあるよ」
「流石だな…」
アマーリアが感心したように嘆息した。
「テツヤ、君は先ほど言った操作、変化、探知の全てを高度に使えると言ってるようなものだぞ。流石は
アマーリアがテーブルの上のグラスを持った。
「例えば水属性だと変化で一番基本的なのは状態変化だ」
見ている前でコップの水が俄かに沸騰したかと思うと瞬時に凍り付いた。
「他にもミスト状にしたり、その上で相手に幻覚を見せるなどといったスキルもある。しかし、例えばなんでもない水を何も手を加えずに毒に変えるといった変化は最高難易度のスキルだと言われている。テツヤができるのはそう言った類のことなのだよ」
そうなのか?水を毒に変える方が凄いと思うんだが。
「各属性は必ずしも等分に比較できるものではないけどね、それでも君が使えるスキルは相当なものだよ。ゲーレンの所で実際に見させてもらった限りでは間違いなくその位のスキルを持っていると言っていいだろうね」
「悔しいがそれは認める」
ソラノが相づちを打った。
「先ほどのグラスの形状変化だって
相変わらずソラノは意固地だな。
「しかし、だからこそ気を付けた方が良いだろうな」
アマーリアがすっと目を細めた。
「テツヤ、君のスキルはあまり公言したり公に見せたりしない方が良いと思う。その力を狙う者が出てこないとも限らないからね」
確かにそれはその通りだ。
今はまだいいけど俺のスキルが有名になり過ぎると悪用しようとする者や利用するために懐柔・脅迫してくる者が出てこないとも限らない。
今後はもう少し気を付けた方が良いかもしれないな。
「まあその筆頭が我々なのかもしれないがね」
そう言ってアマーリアがウインクした。
うーん、そういう意味では既に取り込まれてしまっているのかも。
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