そうだ、ダンジョンに行こう!

破滅の女神

プロローグ

~プロローグ~

 西暦2020年4月1日…その日、世界は冗談みたいな事態に見舞われた。

 後に『エイプリールフール大改変』と呼ばれる事件である。


 事の発端は、度重なる世界の疲弊により、この『世界を司る神』が、人族を見限ったからである。


 一部の国は、自分達の事を棚に上げ戦争の原因は、お前の所にあるのだから、賠償しろと言う。

 もちろん、その相手国は、それなりの賠償を支払っているのに、調子に乗って何度も請求を繰り返す。


 また、ある国では、国の民達は飢餓に襲われているのにも関わらず絶対王制を取っている為、トップの連中は、食事を一口食べては捨てる…等の愚行を繰り返す。

 しかも、碌に勉強をさせない様にしている為、下の連中は、反発する術すら持たず言いなりになるしかない。


 また、別の国では核兵器を所持を廃棄する代わりに、食料や金銭を寄越せと言いながら、その手に入れ物を使い、更に戦争の為の兵器を開発し、核兵器は手放さない…。

 もっとも…破棄している核施設を、あたかも核兵器を減らしていると言うパフォーマンスをしてはいるが、新たな核施設を建設している情報が流れているので、余計に質が悪い。


 そして…ある国では、政治を動かす人と国の象徴となる者が別であり、その無駄な存在の為に、多額の金が意味もなく消費され国家予算を減らしていく。

 そんな国を良くしようとする人を、政治家…と言うのだが、その国では、自分達が儲かる政策ばかり立て、その負担は国民に支払わせて毎年、国の借金がどんどん増えていくのを当たり前としていた。

 悲しい事に、本当の意味で政治家と呼べる者は皆無で、皮肉を込めてと呼ばれる事があるほどだ。


 まぁ、政治家の家は家族の家…国民を家族の様に愛し、家族の様に守るのが本当の政治家と言う者で、政治を商売の様に使い政治屋と呼ばれる様なヤツは、全員、死ねばいいのだ。


 そんな…同じ人族なのに互いを敬うのではなく陥れようとする状況だけではなく、愚かにも自分達が、この星の主であると言わんばかりに、私利私欲で自然を壊しまくり、他の生き物の命を奪ってたりするのだから、いくら慈悲深い私でも堪忍袋の緒もキレると言うか、人族の未来に絶望する事になっても可笑しくないと思う。


 だが、それでも一部の人族は、私の意志を継ぎ、他の者を愛し守ろうとする。

 それが唯一の希望となり、私は諦めきれなかったが故に、恥を忍んで異世界の神に相談する事にした。


 その結果…自分の世界に足りなかった物を理解し、自分の司る世界へと反映する事にした。


 それが、『エイプリール大改変』と呼ばれる事件の始まりだったのだ。


 ○●○●○


「ここは、俺達が食い止める!お前達は安全な所に逃げるんだッ!」

「ダ、ダメよ!ジョーダンあなたも一緒にッ!!」

「パパ~!」

「必ず後で追いつく、だからバネッサを連れて逃げるんだ!」

「…分かったわ、だから必ず迎えに来てね?」

「あぁ、もちろんだ!俺が一度でも約束を破った事がないのを知ってるだろ?」

「そ、そうね…バネッサ、パパは必ず後から来るから先に行って待ってましょうね?」

「パパ、すぐに来てね?」

「あぁ、任せておけ!メリッサ、バネッサの事頼んだぞ。」

「えぇ…あなた、愛してるわ。」

「俺も愛してる、もちろんバネッサも愛してるぞ。」

「バネッサもパパ大好き♪」

「じゃぁ、また後で…。」


 ジョーダンはそう言うと、妻と娘を乗せるた車に合図を送り、他の男達の元へ向かう。

 その背後では彼の家族を乗せた車が、国の指定した避難場所へ向けて移動を開始する。

 そして、ジョーダンの手には、この世界では非常に殺傷能力の高い『銃』が握られていた。


『パンッ!パンッ!』


 乾いた拳銃の音…。


『ババババババババババッ!』


 直後、機関銃なのか小銃なのか、連射性の高い銃が使われているのが分かる銃撃音も鳴り響く…そして…。


「銃が効かない!?み、みんな!逃げろッ!逃げるんだ~ッ!!」

「スマン、メリッサ…どうやら、追い掛ける事は出来ないみたいだ…。

 どうか、君達だけでも無事に生き残って欲しい…。」


 こうして生き残りはいる物の…とある国は滅んでしまった。


 ○●○●○


「閣下、アレには銃が効きません…こうなっては、もうミサイルでの殲滅しかありません。

 ミサイルの使用許可を!」

「ダメだ!まだ逃げ遅れた者達が、彼処あそこには大量に居るんだぞ?」


 軍の最高司令官が、逃げ遅れた住人の事を守る事を優先しようとする…だが…。


「そんな事を言ってる場合ですかッ!?

 今、手を打たないと国が滅びるかも知れないんですよ!」

「クッ…分かった…ミサイルの許可を出す。

 その代わり、必ずや殲滅しろ!彼等の犠牲を無駄にするんじゃないぞ!」


 苦渋の決断である…大を守る為に、小を見捨てる。

 仮にアレを倒す事が出来ても、彼は一生、その罪を背負って生きていかねばならない。

 その重みに耐えきれず、狂うかもしれない…そんな重大な選択を彼はしたのだ。


「ハッ!了解でありますッ!!」

「閣下からミサイルの使用を許可された、直ぐに準備に取り掛かれ!」

「サー!イエッサー!」


 彼の一言で、ミサイル発射が即座に実行される事になった。


「カウントダウン開始します…10…9…8……2…1…ファイアッ!!」


『バシューーーーーーーー!』


 撃ち出されたミサイルを見守る軍人達…その到達点には未だ取り残された住人も多数いるにも関わらず、全滅するよりはマシと言うだけで撃ち出されたミサイルが彼等の元へと飛んでいく…そして…。


『チュドーーーーーーンッ!!』


 着弾と同時に大量の炎と衝撃を周囲に撒き散らす。

 そこには地獄の釜が蓋を開けた様な光景が広がっていた。


「や、やったか!?」


 だが、人は、それをフラグと言う…。


「ダ、ダメです!効いていません!ヤツらの侵攻衰えず…なおも北上中!

 このままでは、国が滅んでしまいます!」

「クッ…総員、退却ッ!!最終防衛ラインまで退却するんだッ!!」

「「「「サー!イエッサー!」」」」


 しかし、その後、彼等を見た物はいなかった…。


 ○●○●○


「国家主席、如何致しましょう?」

「ん~…面倒だし核ミサイルでも撃ったら良いんじゃね?

 どうせ、腐るほどあるんだしさ?」

「ハァ…ですが、そうしますと我が国が核に汚染されますがよろしいので?」

「何、どうせ世界中同じ様になっているんだし、アレを処理したら他の国の領土を奪えば良いんじゃね?」

「し、しかし!そんな簡単な話じゃないはずです!

 国家主席も本当は分かってるはずです!!」

「あ~、ワシにそんな事言っちゃうんだ~つまり、ワシに逆らう訳ね?

 なら…望み通り、君、死刑ね?」


 その瞬間、国家主席の横に居た兵士が彼を取り押さえ、その場から引き摺り出そうとする。


「えッ!?そんな!私はそんな事は一言も…なッ!?お前達、何をする…離せ!離してくれーーー!」


 そして、国家主席から目の届かなくなって数秒の後…。


『パーンッ!』


 実は処刑された彼は、この腐った国では珍しくまともな人であった。

 更に言うなら、こんな事態にならなければ、未来においてはクーデターを起こし、この腐った国を建て直した英雄の一人になるはずだったりする。


「ってな訳で、核ミサイル、どんどん撃っちゃって~!」

「ハ、ハッ!!」


『チュドーーーーーーーンッ!!』


「相変わらず汚いキノコ雲だね…でもまぁ、アレで処理は済んだでしょ?」

「大変です、国家主席ッ!!アレの生存が確認されました!」

「な、な、なんだってーーーッ!?

 だ、だったら、もう1発…いや、もう4~5発撃ち込んで、完全に息の根を止めるんだ!」

「そ、それは流石にやりすぎでは…。」

「んん?もしかして、君もワシに逆らう気かな?」

「い、いえ…その様な事は決して…。

 ちなみに、それでも倒せない場合は如何致しましょう…。」

「何言ってんの君?そんなの決まってるじゃん?

 倒せるまで撃ちまくるれば良いってだけの話じゃん?」

「で、ですよね~!」


 そう苦笑いした青年…彼は急いで国家主席の指示を軍部に伝えると、家族を連れ、この国から脱出を試みる。

 果たして、彼は無事、生き残れるのだろうか…。


 そして、国家主席は…。


「はははは!ワシに逆らう物は全て死刑じゃーーー!」


『チュドーーーーーン!』


 彼の言い放った『倒せるまで撃ちまくれば良い』の発言通り、国家主席なんて死ねば良いと思った軍部は、アレの侵攻似合わせて核ミサイルを撃ちまくった。

 そして、それは閣下主席の居る所まで到達する事になる。


 ちなみに、その情報を聞いた軍部の副司令官は…軍部の司令官の『国家主席ごと死に晒せ!』と言う言葉と共にスイッチを押事となる。

 その結果…当然ながら、この国の国家主席は、この世界から永遠に消滅えたのだった…。


 ○●○●○


「総理、ご決断を…。」

「いや、決断を…と言われても、私にはどうする事も出来ませんよ?

 と、言うか…こう言う時こそ、天皇の出番だと思うんだよね。

 だって、国の一大事じゃん?

 昔から、天皇を守る為に戦争までしてんだから、天皇に判断を仰ぐのが筋ってもんでしょ?」

「そ、そうだ…この国我々には天皇がいたんだった!」

「そうだそうだ!その日の為に、国民が汗水垂らして稼いだ税金で、アイツ等を養ってんのもこう言う日の為だ!

 こう言う時こそ、役に立って貰わないとッ!!」


 しかし、その天皇は…。


「エッ!?何言ってんの?私達は偉いんだよ?

 何で、そんなワシ等、高貴な者が下々と関わらなければいけないの?

 お前達は、ワシ達に貢ぎ物をするだけの下等な生き物なんだから、いつもみたいに自分達でなんとかしなさい?

 それよりさ~、そろそろお昼だよね?ご飯、まだかな~?

 いい加減、お腹空いたんだけど、もしかして…ワシ達、餓死させる気なの?

 何度も言うけど、ワシ達はお前達と違い、偉いの!分かる?

 分かったら、さっさと飯持って来なよ!」

「…ダメだ、コイツ等…死ねばいいのに…。」


 そう呟いた管理官は、家族や親戚に電話すると、騒ぎが収まるまで無人島へと逃げる事を決意したのだった。


 こうして世界各国は、全て等しく、滅びる寸前まで追い込まれる事になる。

 もっとも、基本的に全ての人が滅びない様に、神である私に調整されているのだが…。


 ○●○●○


 『エイプリールフール大改変』から、はや20年の月日が流れ様としている現在…世界の殆どの人口は激変してしまっていた。

 だが、幸いにも世界は私の望んだ様に世界を変えている。


 否、今では少しずつではあるが、『エイプリルフール大改変』に対応出来た人類による復興が始まり人口も増加し始めていた。


 そして、それは…新たな物語の始まりを意味していたのだった…。

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