白薔薇のオートマトン
猫町大五
第0話
男は、目の前の状況に戸惑っていた。
「・・・・・・」
少女。長い黒髪を揺らし、こちらに拳銃を向けている。
「手数だが、死んでくれないか」
ここは自分の家だった筈だ、と男は自分に問うた。肯定の返事。――なら、何故だ。
「何故だ」
「それが、世界の為になるからさ」
少女が、右手親指を動かした。僅かな音と共に撃鉄が起き、弾倉が回る。
「貴方は、この世界から消える必要がある。でも自殺を強いるのも酷だから、僕が代理として、その務めを代行しようとしている」
「俺が、世界に悪影響を?」
「当然。そして、今も水面下で与え続けているんだ」
「まさかそんな」
――銃声。男はその場に倒れ伏した。
「・・・これで済めば良いんだけど」
少女は心配そうに、男の死体を見下ろした。
近未来。大戦の後のディストピア。富豪と貧民は文字通りに上下に分かれ、それぞれ生存している。
アンドロイド。大戦前後に製造され、人類にとってあるときは味方、あるときは敵となった。富豪達には未だ重宝される一方、貧民達には蛇蝎の如く嫌われ、“メタル・ハンター”なる職業まで存在する。
航海者。“ボイジャー”と呼ばれる彼らは、いわゆる“転生者”である。言うまでも無く希少な存在であるが、その扱いや生き方はそれぞれである。
「――ああ、了承した。何、仕事が少し増えるだけさ。気にしなくて良いよ。・・・・・・え?何で?何でって言われてもなあ・・・・・・うん、興味があるだけさ。そういうことにしておこうか」
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