第83話 昭和40年代後半の地方の幼稚園。

 記憶の掘り起こしです。


 ワタシは今53歳である訳なので、……あーもう、50年近く前ではないですか。幼稚園は。無論公立です。保育園という選択肢はうちの町にはありませんでした。

 町内がまだ活気がそれなりにあった頃です。無論最盛期の昭和30年代後半よりは落ちていたのでしょうが。


 建物は木造。ただし張り出した日よけとかに金属が使われていたと思います。縁側的に廊下があって、年少年長それぞれ2クラス。さくら・うめ/たけ・まつというクラス名でした。

 作りは子供達の棟がまっすぐ。向かって右端にトイレ。左奥もトイレ。

 何故端と端か、というのは簡単です。当時はくみ取り式だったのです。……というか、「まつ」組はその辺り割を食ったと思います。ワタシは「たけ」組だったので、その心配は無かったのですが。

 左奥のトイレは何か子供用に実に小さい便器だった記憶があります。その右に視聴覚室? か何か当時よく判らないんですが、紙芝居とか見る時に集まる部屋がありました。確か冬に弁当を温めておくのもそこだった記憶。

 そう、だいたい弁当持ちでした。「食べて帰る」という感じだったと思います。冷房は無論無い時代、暖房は…… ストーブがあった時があったかも? しれないですが、そこは記憶から飛んでます。

 真ん中に水場。石けんはあのみかんのネットに入ってました。

 子供の棟からお遊戯場/幼稚園における体育館的場所? までの通路に職員室と園長室と職員用トイレがあり、カーブした廊下の途中に何故か植物がおいてあったような。

 で、お遊戯室ですが。

 無論これも木造です。コンクリと違い足に優しい、跳ね回るとどんどんうるさいアレです(笑)。

 そこに淡い色の…… 今だったら「恩物」だったんだな、と判るんですが、丸三角四角の角の丸いものがあったり、本当に一つ持つのが精一杯のでかい積み木があったり。雨の日の「遊び時間」にはそこで皆遊んでました。

 舞台もあって、「せいかつはっぴょうかい」の時にはそこでお遊戯を披露もした訳です。

 記憶にあるのが年少組の時の「あひるのミニスカート」で踊ったことと、年長組の時に「みんなげんきで」という謎の曲を皆で演奏したことでしょうか。前者は「タイツが気持ち悪い」という触感と、何か笑われてるなー、という……

 外には子供からしたらなかなか広い園庭がありました。真ん中にぶらんこと低い鉄棒。確かでかい木もあった記憶。栴檀か銀杏の木があちこちにもあったような。

 ――ここから「外」に近い方が幼稚園的には「トラック」だったと思います。運動会があった時にはそこで走ったような。

 でもその一方で、小さな自転車もそこで皆練習していたんですよね。乗れる子はこの時点でもう乗れてました。ワタシは「偶然乗れる時もあればそうでもない時も」レベル。

 その外側の端の遊具に、当時はまだ危険とも言われていなかった「大ぶらんこ」や、もう少し高い鉄棒とかタイヤ跳びとかありましたね。

 遊具と言えば、内側には「フラワージャングル」と呼ばれていた回旋遊具がありましたね。この時期新しかったんですが、鳥籠型で、中に入って座るプラスチックの派手なピンク系の場所と、その外回りで出来てました。ジャングルジムはあったのかどうか記憶に無いです。あっても無理……

 これと先の大ぶらんこ、後に「下に入ってしまう」という事故があったりはしましたが、まあその程度では撤去はされない時代でした。と言うか、それらの遊具に上る当時の子供の恐怖感の無さは凄かったです。ワタシはその頃既に高所恐怖症だったので、外側の数段高いところに乗ってなおかつぐるぐる回るなんてどーしよーもなく無理! でした。

 そんで。

 当時から運動神経は他より悪かったんですね。

 ドッヂボールなんかでもやっぱり明らかに能力差出るんで、AチームBチームと分けられてましたし。意味からいうとリーグですが。走ってもおいつけないし、高いところは怖いし、まあ何というかその時点で既に何とやらです。


 ところでこの幼稚園は「スモック」が制服だったのかな。どうもこれがあまり記憶に無いです。登園時の格好の中では自分の中でバッグの記憶が比重を占めすぎていて、格好の方は抜けてます。ただ臙脂色の短パンだったのは覚えてます。

 このバッグが。まあ仕方ないと言えば仕方ないんですが、我が家の「他人の目はどうでもいい」「二年しか使わないのに」が出たのでしょうか、それとも何か他の理由があったのでしょうか。ともかく当時男子は青、女子は赤の、何かしらの絵がついたピカピカつるんの加工がされたものだったんですね。

 さてワタシはというと。と言うか兄もでしたが。同じ大きさの斜めがけバッグではあったんですが、紺色の…… 大人用の使い回し……

 まあ兄もその辺りはどう考えていたのか。彼の場合は青に対して紺だったからまだましだったかも。ただ彼は彼で名前でからかわれる傾向がありましたので…… いやワタシも本名はからかう原因が当時ありましたので、……お互い名前にはなかなかしんどいものがありました……

 いや話が飛んだな。その彼が使った紺色のやつをお下がりでさらに使っていたのですが、ウチの母親が女の子にはせめてと思ったのかもしれないんですが、刺繍するんですね。合皮に刺繍ってのもまた豪快ですが、……判らないのは、そこで何で「リアルチューリップ」のフランス刺繍をするかなんですよね…… 子供の使うバッグなんですよ…… チューリップだったらあのデフォルメされたアレの方がよほど可愛げというか、年相応ですがな。彼女はもう亡くなったし、まあ生きていてもきっと覚えていないと思うので何ですが。

 まあこういうバッグ持たされたら、否が応でも「人とは違うんだな……」感に取り憑かれてしまっても…… ですわな。


 もう一個彼女がまずったなと思うのは、当時箸が上手く使えないワタシの弁当は、ご飯が小さなにぎり寿司型の海苔巻きで、あとはフォークだったか…… それとも箸だったのか。

 ちなみに箸は高校出て大学の寮に入るまでマトモに持てなかったです。ただし途中からは自分で「持てないこと」にしてました。隠れて練習して、寮に入った途端使える様になった辺り、屈折にも程が。

 箸のしつけとか、いただきますを言うとか、おかわりをする時には黙って出すのではなくちゃんと「お代わりください」と言わなくちゃならない、というのは小学校に入ってから母親の実家で従姉妹達とテーブル囲むまで知らなかったんですよね。

 今になって思うと、まあ「面倒だった」んでしょう。意地でも聞かない子にガミガミ言うのが。親戚の家に泊まることが無かったら、一体どんな大人になっていたやら。


 違う、と言えばウチはその当時から壁一面の本棚があるというご町内では変わった家でしたので、ともかく読める本は読んでました。

 とりあえずこの時点で「いやいやえん」は読めてたかな。「おさるのじょーじ」もあったけど。

 絵本には絵本の役割があったんでしょうけど、ワタシはどうもその絵本の読み方というのができないひとで、ただもう字を追ってたようなんですね。だから「だから何なの?」という感じで。例外は「ぐりとぐら」くらいですかね。でもあれも最後のケーキが美味しそうでなかったら「だから何?」となりそうなガキでしたな。「ももいろのきりん」とかもありましたが、何だかよくわからなかったです。「どろんこハリー」とかも、「そっかー」くらいの感じでしたか。

 「いやいやえん」はその点、既に小学生低学年対象でもあったんで読みやすかったんだと思います。ちゃんと字を追えば何となくちゃんとした話がありましたから。表題作は怖いと思いました。最初の辺りは覚えてなくて、何か遠足に行く話ばかり読んでた様な。考えてみればあれ、先生ついていかなくていいんか? なんですが。まあその辺りは。


 あとはお絵かきですねー。皆お絵かき帳もらって何かと描くんですが、まあワタシ「お人形」ばかりよく描いてたこと。年長になると水性マーカーがもらえたんですが、あっという間に使い尽くし。その後は何で描いてたんだっけ。クレパスかな? 冊数重ねたような。


 ちなみにこの時期、年少の頃はちょうど幼稚園の前には旧中学校がありました。木造校舎です。

 旧、という辺りで人口が減ってしまったことが察せられます。かつてはうちの町だけで中学校はありました。ウチの父はそこに通ってましたから。

 それが年長の時に壊されて、町民だか何だかの保養施設「****荘」というホテルの様なものになりました。いやもうこの時のくい打ちの音が本当にうるさかったことは記憶にあります。当時は確か布で囲ったりもしなかったんじゃなかったかな。

 

 三つ子の魂~じゃないけど、いやもうこの時期で、指針が決まっていたようなもんですね。

・異様に本好き

・足が遅い

・お絵かきも好き


 ちなみに家では既にマンガ本読んでおりました。そういう幼稚園児でした。はい。


 

 

 

 

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