第14話 2050年7月某日 その2
餓鬼に『SHIRLD`s』の鉄網が被せられる。
(ここから…根競べだ)
人と比べ餓鬼は筋力が異常な程に跳ね上がっている。
個体差はあるが、野生の虎や熊でも狩って捕食できるだろう。
最も、コイツ達は人しか食わないようだが…。
子供の死体を振り回し、網を解こうと暴れる。
その度に『SHIRLD`s』の身体が引っ張られる。
鉄網は俺達の身体に、くっ付いている。
(俺達は…壁だ)
『BLADE`s』が来るまでの…。
餓鬼が渾身の力を込めて手足を振り上げる度に身体が引っ張られる。
周囲の被害を抑えつつ、餓鬼を捕縛するということは、こんなアナログな方法しかないということなのだろう。
餓鬼は人を襲うのだ、当然だが人のいない場所には現れない。
銃など使える訳がない。
盾で壁を作って、網で絡め獲り行動を制限させる、もしくは時間稼ぎに固着剤で動きを封じる。
『SHIRLD`s』に与えられた装備は、それだけだ…後は動きにくい強化プラスチックの装甲服、餓鬼にしてみれば、少し喰いにくいだけの服ってレベルだ。
餓鬼が少し弱ってきた…
そう、餓鬼は捕食し続けなければ動けなくなる。
ドブネズミみたいなものなのだそうだ。
燃費の悪い戦車といえばいいのだろうか、弱らせないと固着剤すら効き目が薄い。
「固着剤用意‼」
隊長が命令する。
つまり…じきに『BLADE`s』が来るということだ。
『BLADE`s』は現場が安定するまでは出動しない。
『SHIRLD`s』に比べ絶対数が少ないからだ。
彼らは近接戦闘の訓練を受けたエリート部隊だ、使い捨ての『SHIRLD`s』とは価値が違う。
当然、無駄に配置されはしない。
その分、『SHIRLD`s』より負傷率も高い…。
『BLADE`s』の価値は育成時間と費用、元を回収するには大切に無駄なく使う必要があるのだ。
到着した『BLADE`s』が餓鬼の表皮を切り裂き、ハンマーが装甲のような皮膚を砕く、しかし、それですら餓鬼に大きなダメージを与えるわけではない。
彼らですら足止めに過ぎない。
そう『VAMP』に比べれば、訓練を受けた程度の人間など頭数にもならない。
(俺達も、BLADE`sも民間人を巻き込まないための防波堤に過ぎない…)
VAMPの連中は所詮、人間なんて何とも思ってないだろう。
奴らは餓鬼を好んで食うだけで、別に人を食わないわけじゃない…。
姿が人のままなだけで、本質的には餓鬼もVAMPも変わりがない。
『BLADE`s』の到着から15分、ようやくVAMPが投入された。
ヘリから降下したVAMPは両手に短刀を携えている少女。
地面に唾を吐いて少女は弱った餓鬼に近づき脳天に短刀を突き刺した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます