第9話 2050年4月某日
「VAMPの記事…か…相良メモはネタに出来んしな~」
古びた喫茶店を出た横関は、何処へ向かうともなく気の向くままフラフラと歩いている。
不思議なもので、習慣ってヤツなのだろうかコンビニに寄って、駅に着いた。
「そういやゾンビも習慣で動くって、そんな映画あったな~、だからデパートに集まるんだったっけ」
自分も死人と大差ないと思うと情けないような気分になる。
(SMP…はゾンビとは違うんだよな…)
電車に乗って新宿へ移動した横関、交差点の真ん中でピタッと足を止めて空を見た。
(東京の空を見上げても…地球が丸いなんて考えられたかな?)
昔の空を眺めていたから地球が丸いって気づいたんじゃないか、そう思えるほど空は狭く…低い…。
「ラプラス…10年先を予測しているシミュレーションの世界…VAMPの魂を補完する場所…」
仮想空間と現実を繋ぐ鍵は『ARK』
相良は、確信していたようだ。
『ARK』と『NOA』遺跡の保護と称してオーバーテクノロジーを私的に運用している…か…。
『SMP』だって奴らが…相良さんは、その可能性は考えていたようだけど…確信はしていない。
「そういうところが…刑事なんだろうな…」
記者と違うのだ、憶測では行動に移さない警察
「俺は記者だ」
横関は駅に戻って電車に乗った。
行き先は『ARK』本社がある京都。
『SMP』は『NOA』から中国へ提供された作為型選別ウィルス『Covid-19』から産まれたのなら、『NOA』はどうするつもりだったんだ?
人を捕食するための存在など産みだして…死を促進させるウィルスとは別物なんじゃ?
『SMP』と『NOA』は直接の関係はないのかもしれない。
『VAMP』は『ARK』が関与していると…
『SMP』…『NOA』の計画外だったんじゃないか。
(偶発的に産まれた?)
まさかな…そんな急激な変異、いや進化など起こり得ない。
自然発生では起こり得ない…突然変異など奇跡の賜物なのだ。
だが…人為的…だったなら?
「Covid-19の感染者を襲うように造られた…としたら?」
横関は手帳を飛ばし読みするようにペラペラとめくりピタッと指を止めた。
「死の衝動…」
相良がクルッと赤いペンで丸を付けて囲っていた文字…『タナトス』
横関がスマホで検索する。
『死そのものを神格化した…神』
「Covid-19から線で繋げている…」
もし…Covid-19から、この『タナトス』が産まれるとしたら?
いや…そんな単純なものではないか…
人の身体に侵入したCovid-19が何らかのトリガーで…それが『SMP』を?
「タナトス…死の衝動…引っかかるな」
横関は煙草を咥えて頭をガリガリと掻いた。
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