5.ハンティング・ナイト
真のハイウェイ戦士たるブルータル・ベルセルク・ゾクの集団最後尾……煽情的トレーラー助手席のサクラバは非常に重大なハッキング行為の最中であった。すなわちアルテミス・ハイウェイの走行車両コントロールシステムに繋がるオービスへのハッキングである。慎重に慎重を重ねて、オービスの対ハッキング障壁を一枚一枚、ブロック崩しめいて解除する作業を粛々とサクラバは進めていった。無論、企業連の社内データの不正アクセスは重罪である……だがハッキングしなければサクラバの身には凄惨な死が待ち受けるのだ。自らの生命の危機に比べれば企業連の社内データの不正アクセスなど些細なことに過ぎないのだ。故にサクラバは必死に端末画面とにらめっこしタイピングを続けた。やがて最後の対ハッキング障壁を解除し、アルテミス・ハイウェイの走行車両データを閲覧できる状態になった。
「BINGO! これで生命の危機からはひとまずは抜けられた!」
しかし、これでサクラバの仕事は終わりにはならない。アルテミス・サーキュラー・ウェイの走行車両データを注意深く確認し、不明車両データを見つけ出し、ファントム・キャリッジの出現に備える。ブルータル・ベルセルク・ゾクをハイウェイパトロールの介入を防ぎオペレートするためである。緊迫した空気がトレーラー内に流れる。時間は無慈悲に過ぎゆきサクラバが諦めかけた不明車両データの光の点が出現した。見る見るうちにブルータル・ベルセルク・ゾクに近づいていく!
サクラバは渡されたインカム越しに必死で叫んだ。
『ファントム・キャリッジが出現した! 奴を狩れ!』
……その時、ランプからフルスモークの黒ずくめのスーパーカー……ファントム・キャリッジがアルテミス・サーキュラー・ウェイの車を縫うように走行しブルータル・ベルセルク・ゾクに接近しようとしていた。遭遇戦である!
「クタバリやがれ! ファントム・キャリッジ!」
C4爆弾を設置爆破すべく3台のモーター・ゾクがファントム・キャリッジに接近! みるみるうちに設置可能距離に到達する! だがしかし突然ファントム・キャリッジが左側のモーター・ゾクに猛然とタックル! モーター・ゾクは慌てて距離を遠すぎるが相手の方が一手早い!
「ウワーッ!」
左側のモーター・ゾクはファントム・キャリッジに壁に向かって吹き飛ばされる! 弾みでC4爆弾のスイッチが押され、モーター・ゾクのバイクは爆発炎上! 一人リタイア!
C4爆弾から鉄パイプに持ち替えた後方と右側のモーター・ゾクはファントム・キャリッジに痛打を与えるためにニトロブーストで接近しようとするが、突如ファントム・キャリッジの後部トランクから何かが発射された!
「ウワーッ! ネット弾!」
モーター・ゾクの上空で展開されたネットがそのままモーター・ゾクを捕獲! モーター・ゾク2台はもみくちゃになりながらクラッシュした! リタイアだ!
「フザケやがって! スカムアーバンレジェンド!」とトビカワは唇を噛みしめる! ファントム・キャリッジは挑発するようにライト点滅!
「リタイアしたモーター・ゾクの魂に報いあらんことを! ウオーッ!」
仲間をやられた怒りに燃える長物モーター・ゾクが連続ニトロブースト突撃を仕掛ける! だが、ファントム・キャリッジはさっきのは挨拶代わりだと言わんばかりに長物モーター・ゾクをいなしていく! 全攻撃を回避した!
トビカワはピストルで長物モーター・ゾクの援護射撃を試みるが前方のモーター・ゾクに当たる可能性が高いので手を出せないでいた。だが、ここで片手でハンマーを持ったキギザキが叫ぶ!
「ここは俺がキメる! トビカワ、援護を頼む!」
「テメェらいったん下がれ! キギザキが突撃するぞ!」
前方モーター・ゾクはいったんスピードを緩めキギザキに車線を譲る! キギザキはすかさずニトロブースト! トビカワも追走してピストルを構える!
「食らいやがれ! スカムアーバンレジェンド!」
見る見るうちにキギザキはファントム・キャリッジに近づいていく! トビカワも援護射撃でファントム・キャリッジの進行方向を妨害していく!
ニトロブーストでスピードが乗ったハンマーの鈍い一撃がファントム・キャリッジを襲う! だがしかし! ファントム・キャリッジ車体下部にどういうカラクリなのか、鋭いスパイクがせりだしてきた! そのままキギザキのバイクにタックルを仕掛ける! ハンマーの一撃とスパイクタックルが交差する!
「ウワーッ!」
「キギザキーッ!」
ファントム・キャリッジの側面にダメージを与えることはできたが、キギザキのバイクはスパイクタックルをまともに受けてしまいそのままキギザキは壁に押し付けられる! トビカワは我を失い、ピストルを乱射! ファントム・キャリッジの背面ガラスにひび割れが走った! それでもファントム・キャリッジは停止することはなくキギザキを壁にこすりつける! 恐るべき非人間的な走行ぶりだ! キギザキのバイクはたまらず爆発! キギザキはここでリタイア!
「畜生! このマザーファッカー野郎!」
トビカワはハイウェイに慟哭する!
……一方その頃、ブルータル・ベルセルク・ゾク最後尾、煽情的トレーラーのサクラバも難しい局面に立たされていた……! オービスのハッキングがアルテミス・エンタープライズの当局に感づかれる兆候を感じ取ったのである。 ハッカーは引き際が肝心と古代ハッカーの警句がサクラバの脳裏によぎる! 引くか突っ走るかの瀬戸際にサクラバの思考回路は葛藤が生まれる!
それ故にサクラバはどこからともなくスポーンした正体不明飛行船ドローンが煽情的トレーラーが異常接近しつつあることに気が付かなかった!
トレーラードライバーのモーター・ゾクは正体不明飛行船ドローンを視認して慌ててハンドルを切る! だがもう遅い! 正体不明飛行船ドローンはトレーラーめがけてカミカゼアタックを仕掛け爆発! それをもろに食らったトレーラーは激しく横転した!
「嘘だろ?」
偶然にもその近辺に走行したウィルバーたち護送車チームはデビルレイ以外はトレーラーの横転する様子を呆然と見つめていた。
「フヒヒ……言ったとおりだろ?……アルテミス・サーキュラー・ウェイで凶事が起きるって……」
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