第1230話 人間に必要なもの(別視点)


 僕の名前はディリゲント、NSOで鍛治を行なっている者だ。


 今まで僕はモンスターを倒すでもなく、冒険をするでもなく、ただ街に引きこもって鍛治、もといものづくりに打ち込んできた。


 僕は小さい頃からブロック遊びが大好きで、頭の中にあるイメージを実際に手に取れる形へと具現化するのがとても大好きなのだ。


 そんな僕にとってこの世界は最高すぎた。


 木工、金工、裁縫、建築、陶磁器など、様々なものづくりを体験できるのだ。現実世界ではコストや設備といった面で難しいものでもここならばちゃんと手順を踏めばどんなものでも作ることができるのだ。


 そして、現実世界でもっとも体験することが難しい鍛治に僕は今挑戦している。


 現実世界では殆ど需要のないものだが、このファンタジー世界ならば逆に最も需要のある産業と言っても良い。そしてその分競争も激しいのだが、僕は技術を磨き続け、遂に自分の工房を所有できるまでに至った。


 だけど、その時僕は少しスランプに陥ってしまった。


 非常に難しく、険しい道のりだった鍛治をある程度体験することができ、十分満足してしまったのだ。もちろん、この先もまだまだ極めようと思えば果てしない道のりが待っているが、そこまでのモチベーションが枯れてしまったのだ。


 そんな僕に転機が訪れた。


 なんとアップデートで銃火器の製作が追加されたのだ。


 銃火器、当然存在自体は知っているが、日本でそれをみかけることはまず殆どない。以前は警察官が携帯していたらしいけど、今はもうスタンガンとか麻酔銃とかの銃火器以外のものに置き換わってしまってる。


 未知への遭遇、僕にとってこれ以上ワクワクすることはない。


 そんな訳で早速、作業を開始した。幸い、今まで積み上げてきたもののおかげである程度勝手が分かったし、称号の効果のおかげでみるみる熟練度が上がり、直ぐにロケットランチャーなんていう大それた武器まで作れるようになってしまった。


 銃火器の製作は、構造がどうなっているのかや、その銃によって工夫されていることなどが武器手によって全然違うため、とても勉強になって飽きが来る気配がなく、連日連夜製作に明け暮れていた。


 あの人が来た時は、ちょうどライフルの作り方を習得しようとしていた時だった。


 ある一人の男が僕の工房に来て、


「一緒に、悪を滅ぼさないか」


 とそう告げた。


 だけど僕は、善とか悪に興味はなく、ただただものづくりがしたいだけなので当然断った。


 すると、その男は


「悪を野放しにしていると、大事な工房もみな壊され、奪われてしまうぞ」


 と食い下がってきた。それは不味い、と思ったし、何よりこの男が面倒くさそうだったので、僕は協力することにした。協力内容は武器の提供だったので、やることは今まで通りだ。それに、めちゃくちゃ報酬も弾んでもらった。


 その男は、僕との話の後、数日で大勢の人を集めて、僕が作った武器で魔王城を陥落させた。


「よし、この調子で悪を滅ぼそう。俺たちならきっとできる」


「うん」


 どうやらその男は、【救恤】というスキルをもっているらしかった。










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週末はなるべく投稿しようと思います(フラグにならないことを祈る

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