第1228話 魔王軍参謀、眼鏡


 複眼、というメガネくんの奇跡の詳細を聞くと、更に驚かずにはいられなかった。


 まず、一番の驚きは作れる分身の数に上限がないこと、だった。自分が操作できる範囲を超えて作り続けると、動かなくなったり機能停止したりするらしいが、それも気をつけていれば問題ないからかなり強い。


 ただ、この自分が操作できる範囲、というのが肝のようで、分身というのは独立型ではなく操作型のようだ。あくまでメガネくん自身が本体で、分身が何かするには彼自身が操作しなければならない。ここに、作れる分身の数の上限が設定されているようだ。


 ただ、それでも慣れていけば自然と数が増えるだろうし、分割思考とかのスキルを手に入れれば格段に扱える数が増えるだろう。


「ん、そういえば分割思考は持ってるのか?」


「はい、以前獲得しました。それに、今回神になったことによりその分割数も少し増えたようです」


 分割数が増えるって……この子、しっかり着実にチートへと歩みを進めてない??


「なるほど、それじゃあ今扱える分身の数はいくつなんだ?」


「それが、分身を扱うにはかなりのリソースが必要らしく、分割した思考にひとつというわけではなく、現時点では合計で三体になります。早急に数を増やせるよう鍛錬いたします」


「お、おう分かった」


 ま、三体でも十分に凄いんだけどね。メガネくんの向上心にはいつも感心させられる。俺ももっと頑張らないと、ってそう思わせてくれる。ま、俺の場合はそう思って終りなんだが。


「さて、これからの話をしよう。俺たちが繋がったから、またユグドラシルに戻っても良いのだが……」


「プレイヤーたちの処理、ですね?」


「あぁ、そうだ。流石にやられっぱなしのままは良くないだろう? それに、放置していると更に力を蓄えてしまうかもしれない。流石にそうなってから対処するのは些か面倒だろう。ならば今叩くのが良いはずだ」


「おっしゃる通りです。ですが、敵の本拠地がどこなのか……今回の魔王城襲撃も恐らく敵の首謀者は参戦していないでしょう」


「うん、だからこそのメガネくんだろ?」


「あっ、これは私としたことが! 早速分身を生成し、各地の情報収集を行います!」


 そう言ってメガネくんは複眼を発動し、三体の分身を放った。


 これは余談だが、その分身の方法がとても面白かった。まず、メガネくんの掛けているメガネのレンズが本物の虫の複眼のように幾つにも分かれ、その内の三つが宙に浮かび上がった。


 そして、それを中心にメガネの複製が作られて、そしてメガネくんが誕生したのだ。こうなってくると、神になったのはメガネくんじゃなくて眼鏡そのもののような気さえしてくるな。


「あ、これって同時に存在しているのがバレても大丈夫なのか?」


 まあ、そんな狭い範囲で活動するわけじゃないだろうから中々バレないとは思うが、情報収集って信用とか大事だったりしないのだろうか?


「いえ、そこは大丈夫です。以前陛下が私に下さった、カメレオンの力でほぼ透明になることができますから」


「えぇ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る