第1051話 鞭と詰み


「ふぃー、災難だったな」


 俺たちはあの後、無事に領地から抜けることに成功した。初めて使う爆発を試してみたんだが、超能力も併用していたことで俺たちに爆風が届くことはなんとか防ぐことができた。


「ですね、まさかあんな大勢に囲まれるとは思ってもいませんでした……それにしてもなんであのようなことになったのでしょう? 私たちに何か狙われる理由でもあるのでしょうか?」


「んー、俺たち何かしたか? ってかそもそもこの世界に来てまともな活動をしていないから目をつけられるとも思えないんだが」


「(コイツらは自分達の力に気づいておらんのか? 彼奴は言うまでもないが、四つ目ですらかなりの妖力を感じる。本当に、何者なんだ? 知れば知るほどあの時滅せられずに済んで良かったと思えるな)……」


「おい、どうした土蜘蛛。そんなに超能力で吹っ飛ばされたのが怖かったか?」


「ち、違う! ただ、考え事をしていただけだ」


「へー、妖でも考え事するんだな。まあ、一応元人間ではあるって話か」


「あ、そう言えばへい……」


「周りに人がいなかったら最悪陛下でもいいぞ? ま、妖のいる世界で人目とか言ってられないかもしれないが」


「す、すみません。そ、それで先ほどの戦闘で私にかなりの妖力が振り込まれたのですが、陛下も同様ですか?」


「振り込まれたって、なんだか金みたいだな。そりゃ俺が倒したんだから……は? 全然振り込まれてないぞ?」


「や、やはりそうですか。ダンジョンにいる時から思っていたのですが、この世界においてはどうも妖力が不自然に分配されている気がします」


 不自然な分配か、確かにそんなこともあったな。俺は妖を従えないから極論どうでもいいと思っていたのだが、、、


「これは解明しておいた方がいいだろうな。別に俺は妖力なんていらないが、知らないというのは気がかりだ。もしかして損をしているかも知れないし、無知は罪だ。おい、土蜘蛛、お前は妖力について何か知らないか?」


「妖力か……って、貴様らは知らないのか? そもそも妖は強いものに集まる習性がある。四つ目は軟弱とは言えその座敷童を従えておろう? それに比べて妖力も妖も持っていない貴様には寄って来ぬのだろう」


「へぇー、そういうもんなのか。だから俺が倒した分もメガネくんに振り込まれてたってことか」


「え、え、えーっ!!?? そ、そ、そうなんですか? こ、これはどうしましょう。陛下がお稼ぎになられた妖力ですのに……」


「気にするな俺からのボーナスと思ってくれ。俺は強がりでもなんでもなく妖力は別に必要としていない。俺の分まで妖力を貯めてくれ」


「は、はい……」


「なあ、土蜘蛛、俺の妖力をメガネくんに譲渡することは可能か?」


「(ほ、本当に何も知らないのだが此奴らは。その癖して我を屈服させるほどの力を有しているとは、一体、一体何者なんだ?)ん、できるに決まっておろう。それを使って上に立つものは下の者に稼がせ、自らの糧とするのだから」


「へー、じゃあさっきの奴もそうしてたのか? だからあんなに人が多かったのか。じゃあ、俺の分もやるよ。メガネくんは妖力貯めまくって超強い妖を従えろよ?」


「はいっ!! (あぁ、陛下がフランクに話してくださるなんて……なんたる光栄の極みっ!)」

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