第932話 亜熊
大広間にいる悪魔を全て倒すと、俺たちは小休憩を挟んだ。
恐らく全然疲れてはいないが、連戦を続けるといつかは疲労が溜まってしまうからな。疲れてしまう前に休む、コレを徹底していきたい。
あと、これは俺の直感でしかないのだが、次からは強い敵が現れそうなのだ。悪魔の城、しかも裏口がこれだけの大乱闘で終わるとは到底思えない。それこそ、対多数の後は逆に、超強力な敵、一体だけ、なんてこともありそうだ。
そんなことを考えながら休憩し、準備が完了した。そして大広間の奥にあった扉を開けるとまたしもそこには広い空間があった。
そこは先程の大広間に比べると、どこか殺伐とした印象を受けるというか、まるでコロシアムのような雰囲気だ。観客が見ている中、戦いを見せ物にされているような、そんな感覚だ。
にしても、広いな。裏口から入ってきたのにこうも大きな空間が連続しているっていうことは、悪魔の城、相当大きいんじゃないか? 城だけでどこかのテーマパークは余裕で凌ぎそうな大きさだ。
ガシンッ
そんなことを考えていると突如大きな音が空間から鳴り響いた。何かが何かにぶつかるようなそんな音だ。しかも、相当な重量感を感じる音だったぞ。でも、そんな音がなりそうなものなんてあるか? ここには何も無いように見え……
「お、檻?」
そう、そこには檻があった。俺が入ってきた時には確実に存在しなかったであろう檻がそこに存在した。そして、その檻の扉が、というかこちら側の面が開け放たれていた。
その中にいたのは、熊だった。
「グルるるるるる」
熊!? え、ここって悪魔の城なんだよな? なのになんで熊がいるんだよ、もしかして悪魔のペットか? それにしてはデカ過ぎじゃないか?
その熊はぱっと見では戦車と見紛うほどの大きさだった。もしも両足で立ち上がったりしたらかなりの高さになるだろう。
「……」
ん、でも、意外と見た目は悪魔悪魔してるな。もしかして熊型の悪魔ってことか?
まあ、今まで俺が戦ってきた敵がたまたま人間型ばかりで、本当は色んな型が存在するのだとしたら目の前の熊にも説明がつく。
「ウガッ、ガルッ!」
うぉ、っと意外と素早いな。攻撃力に関してはどう考えても食らったらヤバそうだが、それに加えて俊敏性もあるとなると、コレは意外と侮れないのかもしれない。そうだ、
『アシュラ!』
目には目を、歯には歯を、デカい奴にはデカい奴を、だな。
『アシュラ、無理しなくて良い、徹底的に防御を頼む! もし手が空いたら行ける時に反撃してくれ!』
『承知しました』
ガンッ!!
熊のぶっとい腕の振り下ろしに対して、アシュラの腕四本が当てられた。両者共に圧倒的なパワーで、殆ど互角に見える。
しかし、アシュラにはあと二本腕がある。
「グギャァアアア!」
アシュラの武器が熊の腹部に突き刺さった。これはかなりのダメージだろう。熊も苦しそうだ。
しかし、熊は熊でも悪魔の熊。そこで易々とやられる訳では無かった。なんと、いきなり口を大きく開きエネルギーを溜め始めたのだった。
不味い、これはブレスか!?
『アシュラ避け
俺の声が届く前にそのエネルギーは放出され、アシュラの顔面に直撃した。
「あ、アシュラっ!?」
お、俺は一体何をしてるんだ? 今度こそは誰も死なせずに安全にクリアするって誓ったというのに、クソ、クソッ!
「アシュラぁあああ!!」
『いかがなさいましたか、ご主人様』
熊のブレスが撃ち終わるとそこには無傷のアシュラがいた。
「あ、アシュラ……??」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます