第930話 搦手


「【叡智啓蒙】、【己没同化】」


 俺はメガネくんから言われたダンジョンに入り、スキルを使った。すると、見覚えのある扉が出現した。


 改めて俺は覚悟を決めて、その扉を開けた。扉の向こうの景色は俺にとって見覚えのないものだった。


「え?」


 何でだ? 確か、前回来た時は扉を開けるとそこには大きな門があって、その奥には大きな悪魔城があった気がするんだが、今回はその門がなく、代わりに城壁が聳え立っていた。


 もしかして、来る度にランダムに配置されるのか? それともパーティやレイドで来るプレイヤーに対して分断させようとしているのか?


 兎に角、俺は見覚えのない場所に来てしまったのだが、やることは変わらない。それに、どうせ裏口みたいなものがあるはずだ。そこから攻略してやろう。


『ハーゲン!』


 取り敢えず、最初はハーゲンを主力にして攻略していこうと思う。やっぱりリベンジは自分の手でしたいだろうし、単純な強さで言ってもハーゲンが今は一番弱い状態だ。


『久しぶりだな、ハーゲン。今日は悪魔を全滅させるくらい頑張るぞ?』


『もちろんっす、ご主人様!』


 ハーゲンが悪魔に対してどう思っているのか。死んだことについて何を考えているのか、まだその答えを知るのが怖くて聞いていなかったのだが、今の反応的にそこまで恨みを抱いているって感じでもなかったな。


 かかり過ぎていたり、逆にトラウマになっていたりしてないか心配だったが余計な心配だったようだ。


 にしても裏口が見当たらないんだが……あ、あった。


『ハーゲン、裏口を見つけた。ここから敵がいるはずだ。気を引き締めていくぞ』


『了解っす!』


 城壁の裏口を通ると、そこには悪魔がいた。コイツは一応門番なのだろうか? 裏口にも門番って配置するもんなのか?


「ん、誰だお前」


 ん、喋った? ってことは結構位が高いってことか? 確か前きた時はウギャウギャと五月蝿い悪魔が大量にいたからな。これは初っ端から気が抜けない相手かもな。


「なんでここに人間がいるんだ? それにモンスターも。お前らここがどこだが分かってんのか?」


 やけに冷静だな、この悪魔。俺らは完全なイレギュラーで、実際そうだと自分でも言っているのにも関わらず全然動揺していない。


 ってことは思ってるよりも更に強いのか?


「ふっ、じゃあ肩慣らしといきますか!」


「あぁん、何言ってんだ? お前はここで死ぬんだぞ? 俺様が直々に手を下してやるからよ、感謝し


 ボゴッ


「ここで死ぬのはお前だぞ? ハーゲン!」


『任せるっす! ウィンドブレード!』


 俺が悪魔を殴りつけ、ハーゲンに魔法を撃たせた。打撃と斬撃のコンボ、これでどれくらい食らうかだが……


「おいおい、コレで俺が死ぬって冗談は死んでから言えよな!」


 やっぱり全然食らってねーか。俺はただ殴っただけだし、弱くなったハーゲンの魔法では全然火力が足りてないみたいだ。


「お前らは殺す、ズタズタに切り裂いて、死を望見たくなるほど殺してやるっ!」


『じゃあハーゲン、一つになろうか。【人魔一体】』


 火力が足りないなら上げればいい。それに俺はまだ本気を出していないからな。というわけでここから第一ラウンド始めますか!

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