第744話 四


 ギィ


 扉が開いて勇敢な戦士たちが帰ってきた。


『二人ともよく頑張ったな、とにかくお疲れ様。【慈愛之雨】』


『『ありがとうございます』、キシャ』

『なあ、側から見ている俺からすると、デトが敵の悪魔に当たった後、悪魔が倒れたように見えたんだがあれはなんだったんだ? デトが当たった衝撃だけではあそこまでならないだろう?』


『それについては私が説明しましょう、キシャ。まず最初に私が四方雲界をした際に、一撃でそれが破られてしまいました、キシャ。その時点で私は相手がかなりの手練れであることがわかりました、キシャ』


 へぇー、あれって四方雲界っていうんだ。雲と蜘蛛をかけてるのか? いや、子蜘蛛の細くて無数に広がる糸を雲と形容しているのかもしれない。まあ、どちらにせよ無茶苦茶かっこいいじゃねーか。


『そこで私はデト殿に一つお願いをしました。デト殿が作りうる最も強い毒を作ってくれ、と、キシャ。そこからは時間稼ぎに徹したのです、キシャ。そしてデト殿の合図に合わせてもう一度四方雲界を発動すれば相手は必ず先程と同じ対処をしてくると踏んだので、そのタイミングでデト殿を投げつけ、敵に当たった瞬間に毒を付与したのです、キシャ』


 アスカトルは早口で俺にそう説明した。まるで、自分の功績を褒めてもらいたい男の子のように。うん、可愛いな。


 これが手柄欲しいマンによる演説だったら嫌気がさすが、アスカトルの場合、完全なる純真無垢な気持ちでただただ褒めてもらいたいっていうのが伝わってくる。これはしっかり褒めて伸ばしてあげないとな。もちろん、デトにもちゃんと褒めてあげる。


『おぉ、そういうことだったのか。凄いな! よくやったぞアスカトル。瞬時に相手の力量を見極め作戦を立案し実行する、これはなかなかできることではないからな。これからもよろしく頼むぞ!』


『ありがとうございます、キシャ!』


『そしてデトも、よく頑張った。トドメを刺したのはお前の毒と思っていい。あれほど強い悪魔相手に行動を完全に奪うほどの毒を作れるんだから誇っていいぞ? これからも頼むぞ!』


『はっ、全てご主人様のおかげでございます。これからも精進致します』


 ふぅ、ひとまずはこんな感じだろうか? 従魔の今の実力なんかも見れてとても楽しいし面白いな。次は一体誰にしようか。


『あ、そういえば、アスカトルが敵に刺されたのに、次の瞬間から何事もなく動けていたのはどうしてなんだ? 何か仕掛けていたのか?』


『あれもスキルの一つで四散蜘蛛といいます、キシャ。攻撃を受けた際に、0.3秒以内にこのスキルを発動すると、あのように体が子蜘蛛になってワラワラと崩れ落ち、任意の地点にて復活できるのです、キシャ。受付時間が短いので成功率はまだ低いのですが、今回は上手く誘導して成功させられたのでよかったです、キシャ!』


『へ、へぇー』


 なんか、いいな。さっきの四方雲界もそうだしこの四散蜘蛛もまず名前がかっこいいし、それでいてちゃんと強い。四字熟語で揃っていて統一感もある。


 なんか俺もそういう感じでスキル欲しかったな。バラバラに適当に取ってきたからなー。これが種族の恩恵というものだろうか。


 ってか、大前提としてウチの従魔強くなりすぎでは? いつの間にこういう技を取得しているんだ?








——————————————————

従魔たちからすると、常に研鑽を怠っていない魔王様に憧れているので、もうずっと研鑽を積み重ねています。


でも主人公は別に研鑽してるつもりはないので……

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