第698話 鴉狼一夜


「鴉狼一夜……? こ、これってなんて読むんですか?」


「これは鴉狼一夜がろういちやと言うスキルで、効果は戦っている場所を強制的に夜にして味方となるからすと狼を大量に召喚するのじゃ。まあ、百聞は一見に如かずじゃ、使ってみると良い」


「あ、あぁ分かった、ありがとう」


 そういって最後はよくわからない感じで俺は店を出てしまった。あれ、結局俺五千万は払ったんだよな? それでHP高速再生と鴉狼一夜、どちらも魅力的で欲しいと素直に思ってしまったが、実際のところ爺さんに乗せられた気がする。


 だって、この二つでも五千万って感じしないんだもん。本当のところは使ってみなきゃわからないが、五千万はなー。


 まあ、俺が納得すればいいだけの話だ。あの爺さんにもお世話になっているのだし、冥土の土産感覚で五千万くらいくれてやるよ。三途の川の渡賃だっけ? まあどっちでもいいや。


 過ぎたことはぐちぐち言っても仕方がない、それよりもスキルの検証タイムだ! まずは鴉狼一夜からだな。


ーーースキル【鴉狼一夜】を獲得しました。


【鴉狼一夜】‥相手と自分のいる場所を夜で支配し、狼と鴉を召喚して攻撃する。対象となった敵が生き残っている場合は帰還する際、敵を依代として扉を開く。


 シンプルな説明だな、俺は一文目を読んでそう感じた。しかし二文目を読んで、は? と思った。


 これは本当に爺さんの言った通り一見して見る必要があるな。んー、誰かいないかな? 


 ピューん、バシャン、


 ア、コンナトコロニクラーケンガイルゾー


 よし、じゃあ使って見るか。


「【鴉狼一夜】」


 すると、ただでさえあまり日光が入ってきていなかった海の中が、完全に夜に覆われた。そして、どこからともなく狼と鴉が現れて……こなかった。


「え?」


 周りを見ると確かに召喚されてはいるらしいが、海の中ということで召喚した途端に溺れて帰還しているようだ。これはなんたる失敗。


 じゃあ次は陸に上がって、初めて会ったモンスターにしよう。


〈Lv.87 エターナルホースブリザード〉


 俺はこいつに出会ってしまった。見た目は綺麗な毛並みの馬だが、名前からして絶対に氷を使ってくるのだろう。少しレベルが低いのが気になるところだが、気にせずいきますか。


「【鴉狼一夜】」


 すると、再びその場は夜に支配され、今度はしっかり狼と鴉がやってきてくれた。相手のお馬さんはびっくりしながらもその鴉と狼に抵抗するが、次々と増えていく狼と鴉、そして鴉は空から、狼は陸からという角度の違い、最後にこの二人のホームとも言える夜という環境、この前にはお馬さんはなすすべがなかった。


 最終的には何体もの狼と鴉に噛まれ、啄まれ、目も当てらない悲惨な姿へと、エターナルホースブリザードさんは変化していた。


 うん、これ結構強いかも。

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