第621話 気づき始めた


「な、なんだそれは貴様っ!」


 なんだそれはと聞かれて、ちゃんと丁寧に教えてあげるのはアニメや漫画の世界だけだろう。俺に教えてあげる道理はない。


 ただ、新たに誕生した俺によって俺は格段に敵の武器の攻撃が楽になった。


 分け身、分体との意識の繋がりは正直な所微妙だ。完全にリンクはしてないが、ある程度意のままに操れる、って感じだな。


 でも今は迎撃しろ、という簡単な命令を与えてオートモードで運用している。俺は俺の行動に集中したいからな。


 もしかしたら分割思考でかなり精度の高い操作ができるかもしれないが、それはまたあとで試そう。


 今は目の前の敵が先決だ。どうやらコレだけでは死んでくれそうにないらしい。


「ククク、まさか人間風情がここまでやるとはな、私も正直見くびっていた。だが、よかろう、今から貴様を私の敵として見てやろう。私に喧嘩を売ったこと冥府で悔やむのだな。ハァアッ!」


 男がそういって力を解放したような動きを見せると、男の周りになんと、更に武器が出現した。それもザッと見ただけでも十個以上は出てきている。


 五つが限界とは思っていなかったがまさかこんなにあるとは、俺も俺で見くびってたようだな。


 しかも、更にヤバいのがその中に銃が混ざっていることだ。


 色んな銃、それこそハンドガンから始まりショットガン、スナイパーまで結構ある。そいつらが一気に火を吹くとかなりヤバいんじゃないか?


 ズダダダダダダダダダン!


 嫌な予感はやはり当たってしまう。これがフラグ回収というものか。危惧したそばから一斉射撃をされ、俺の分体は皆やられてしまった。


 どうやら、分体には俺のスキルは発動しないらしい。


 くそ、どこまでも逆風だな。ここまで追い詰められるとは、今までの悪魔と全然違うじゃねーかよ。今までは遊びでこっからが本番ってか?


 もし、加速度的に強さが上昇するならまだまだ鍛えないと追いつかないぞ? コイツが頂点じゃないんだからな。


 そう、コイツがトップじゃないのだ。だが、俺は魔王、負けるわけにもいかない。死ぬわけにもいかない。俺は魔を統べる者、必ず勝つ。


「ククク、今更恐怖に怯えた所で後の祭りだ。己の愚行と、弱さを悔やむのだな。死ね」


 その言葉を合図に全ての銃が発砲され、遅れて武器が俺の元に飛来してきた。


 もう、避けるスペースなどどこにもない。圧倒的な面攻撃に加えて、弾丸と武器各種による時間差攻撃、俺はただただ立つことしかすることがなく、その全ての攻撃を一身に受けてしまった。


「フ、フハハハハ! 脆い、脆いなぁ! 人間は! 蝿同様叩き潰すのが似合っておるわ!」


「ん? じゃあ、俺って叩き潰されてないから、人間じゃないのか?」

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