第619話 誤算
俺のスキル、雨叢雲剣、不動之刀、斬法十四手が尽く防がれてしまった。流石は悪魔といった所だろうか。しかも、不意打ちなのにも関わらず、だ。
俺はいつもアニメや漫画を見ている時に、悪役、敵が解説や本気を出そうとしている時に攻撃してしまえばいいじゃんか、そう思っていた。
そして、今回それを実践してみたのだが、思いの外上手くいかなかった。
「貴様、小癪な手ばかり使って! もう、その手には乗らんぞ、私も全力で行かせてもらおう。ハァアア!」
不味い、どうやら相手を怒らせてしまったみたいだ。それに、結構、オーラというか圧が凄い。もしかしなくてもコイツってかなり強いのかもしれない。
ちょっと心のどこかに慢心があったかもな。気合を入れ直すか。
「あぶなっ!」
俺がどうやって攻めてやろうかと考えていると、突如、俺の元に一つの剣が降ってきた。いや、飛んできた、という方が正しいだろう。
一瞬、目の前の敵が投げたのかとも思ったが、それにしては、角度が急すぎる。俺の1.5倍は身長がなけゃこの角度は無理だろう。
不可解に思った俺は、敵の姿を見て、驚愕した。
「クックック、私に勝負を売ったことを後悔したか? だがもう時すでに遅い。貴様は私の武装演舞の前になす術なく、死ぬことになるのだからな!」
「武装、演舞……」
まさにその言葉がぴったりだった。その悪魔の周囲にはなんと、さまざまな武器、それこそ剣から始まり、槍、斧、盾、そしてもう一つの剣が宙に浮いていたのだ。
今現在、武器は以上の五つだけだが、これから増えないとも限らないし、武器種がこれだけとも限らない。これは、警戒度レベルマックスだ。
「死ねぇえええ!」
そして、その攻撃には更に驚くこととなった。悪魔は一歩も動かず、ただただ、武器を俺の元に飛ばしてくるのだ。それも、かなりの速度、かなりの威力でだ。
飛ばした後も操作できるのか、不規則で予測しづらい攻撃をしてくる。何より、リーチが違う武器で同時に攻撃されるのがキツい。対応もままならないのだ。
今はなんとか対応できているが、相手のリソースが尽きる前に俺の集中力が先に限界を迎えるだろう。ああ、人手が欲しい。アシュラでも呼べば一気に楽になるだろう。
だが、これは俺の修行、俺の強化だ。従魔に頼っていられない。それに、アシュラにもアシュラのトレーニングがあるだろう。それを邪魔するわけにもいかない。
「クックック、苦しそうだな。この力の前に人間ごときで対応できると思うなよ! 死ねぇえええ!」
更に攻撃の手が鋭くなった。これはいよいよ攻撃を受けてしまいそうだ。これじゃ本当に一人じゃ厳しそうだ。攻めて後一人、後一人いれば……
ん? 後一人? 人手?
「あっ、そうだ! 【分け身】!」
俺は、俺を生成した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます