第603話 ドラケの執着(別視点)


「はっ!」


 どうやら俺はクラーケンにやられたようだ。


 だめだ。このままではダメだ。もっと強くならねーと追いつけない。俺は魔王も倒してあいつも倒さなきゃなんねーんだ。こんなタコ相手に止まってられねーんだよ!


 だが俺の渾身の一撃ですらかすり傷一つ蹴られなかったのも事実だからな。


 あ、そうだ。俺は臨界点を迎えなきゃならねんだ。俺は臨界点で強くなったんだろ? なら臨界点でさらに強くなるしかねー。


 あの時は必死に生きていたい、って心の中で思い続けていたからな。それでこの死ににくい体を手に入れた。


 だから今度は、「強くなりたい」という感情で臨界点を迎えよう。そうすれば強大な力を手に入れられるはずだ。


「じゃあ、やるか」


 強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい。


 んー、こんな所で一人突っ立って頭ん中で念じるのはそりゃ何回でもできるが、臨界点を迎えられそうにないよな。


 俺が初めて迎えた時も戦いの最中だったし、もっと極限にまで身を置かなきゃいけねーだろう。


「よし、もっかいクラーケンを倒しに行くか」


 丁度いい。あいつなら俺が簡単には倒せないからな。クラーケンを頑張って必死に倒す中で強さを求め続ければ、自ずと臨界点は超えることができるんじゃないだろうか。


 ❇︎


「くっ、クソ!!」


 やっぱ、全然倒せねー! 倒すどころか攻撃が上手く通らねんだよな。海の中ってのもあって、すぐ息は切れそうになるし、全然勝てるビジョンが見えねんだよな。


「もっと俺に強さをよこせっ! 【大地裂斬】! グハッ」


 うぅ、良いのをくらってしまった。目の前のクラーケンは俺にトドメの一撃を決めようとしていた。


「もう、ダメ、か……」


 グショッ


「…………死んで、ない!?」


 ここが最後のチャンスだ。なんかこいなんかこい、臨界点でもなんでもいいから俺に力をくれ! この目の前のデカたこぶつをぶった斬る力を!!



ーーー称号《力への執着》を獲得しました。


《力への執着》‥力が欲しい、という気持ちが臨界点を迎える。スキル【剛穿凱衝】を取得する。また、一定の確率で会心の一撃を放つことができる。


「来た! 【剛、ん? これってなんて読むんだ? あ、」


 グシャァッ!


 そうしてやっとのこと臨界点を迎えた俺だったが、不慮の事故で死ぬことになってしまった。


「だが、これで俺の勝ちだ。首を洗って待ってろ、クラーケン!」

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