第550話 ペット


『なあ、海馬、あの技いつの間に習得してたんだ? 俺はそんな技知らなかったんだけど』


『多くの敵を目の前にした時、体が本能的にその技を撃ったのです。私も我が君のお役に立ちたいと無我夢中でしたので、よくわかりませんでした』


『そ、そうかー』


 海馬の発言に俺に対する悪意や嘘といった感情は含まれてない気がした。あくまで俺の直感だから信用もクソもないが、俺だけが納得する分には十分なものだ。


『分かった、じゃあ今からそれを俺に向けて撃てるか?』


『い、いえ、我が君。残念ながら、どうやら今は撃てないようです。何故でしょうか……』


 そうか、今は撃てないのか、クールタイムがあるのか、それとも周りに補給できるだけのリソースがなければいけないのか、あるいはその両方か……


『分かった、ではまた使えるようになったら教えてくれ』


『はっ』


 次の試合は一日後に行われるそうだ。一日に一試合というわけだな。準備時間があるだけマシだが、それにしても短いな。まあ、戦うのはそれぞれ別の国だからいいのかも知れないが、こちらからするともう少し休みがあってもいいとは思う。


 第三勢力特有の悩み、ってやつだな。まあ、たくさん戦えるのだ、精一杯楽しまなきゃな。


「全員集合!」


 俺は空中に移動し、従魔を全員集めた。そして、海馬を褒める。


『海馬、先ほどは良くやった。これからも精進するのだ』


 これを一番の新入りにすることで、先にいたものは奮起され、やる気を起こす。それに、新入りに負けてはいられないだろう? 先輩としての意地があればな。


『明日、また人間どもの合戦があるのだが、我こそは、というものはおらぬか?』


 あれ、今思ったんだけど、なんでこんな口調になってるんだ? 一対一で話すときはもっとフランクなのに、全員の前だけこんな感じなんだって思われるの少し恥ずかしいな。でも、もう止められない。


『いないのであれば、我が直々に、、』


 俺がそこまで口に出した所で皆の口が一斉に動き始めた。そして、その中でわずかばかり抜きん出たのが……


『ごちゅじんちゃま、あいしゅがいくー、にんげんたくしゃんたおしゅのー』


 まさかの選出となってしまった。正確に言えば、発言自体はもっと早かった者もいたのだが、アイスが俺に駆け寄ってきたのだ。これはもうやらせてあげるしかない。


 それにしてもお前ペット枠だぞ? 自分から名乗りを上げちゃだめだろー。


 ❇︎


 翌日、アイスがどんな惨状を巻き起こしたかについてはあえて触れないでおく。あの可愛らしい見た目と、そこから繰り出される凶悪な魔法。海馬よりも多くのプレイヤーを倒した、とだけいっておこう。


 え、アイス!? とも思ったが、帰ってきたアイスが他の従魔に可愛がられるのを見て、俺の心は和んだのだった。


 やっぱり可愛いウチのペットだよなー。うん。

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